ガエル記

散策

『ポーの一族』「青のパンドラ」(2016年)萩尾望都

「フラワーズ」2022年7月号- 8月号、10月号、2023年1月号 - 2月号、6月号 - 7月号、9月号、11月号、2024年1月号、8月号、10月号

と、前回悲劇的な感じに襲われましたが今回本作そんなことは忘れたかのように面白いのでありました。

 

 

ネタバレします。

 

どういうわけか本作は『ポーの一族』始まって以来最高の活劇ものになっている。

神のように美しく千年間眠り続けている兄を持つ悪魔的なバリー。明るくハンサムなファルカと美しいブランカ夫妻。

そして御大と呼ぶにふさわしい大老ポーの登場。

エドガーは燃え尽きて炭と化したアランをアタッシェケースに入れて持ち歩いている。

萩尾氏は少女マンガの中でもアクションが多いが本作に至ると「本格的伝奇ロマン」というべきなのではないだろうか。

と、そもそも『ポーの一族』はその中に入っていないのだろうか。

と検索してみると「『ポーの一族』はファンタジー」と記されている。

『吸血鬼ドラキュラ』はゴシックホラーであり伝奇ロマンの要素を含んでいるとされるが『ポーの一族』の紹介で「伝奇ロマン」と称されてきたことはないように思える。

なぜなのか。

思うに「伝奇ロマン」と称されるにはあり得ない不思議な魔法を駆使して暴れまわる、というようなある意味胡散臭い二流的な意味合いが含まれていなければならないのだろう。

この「伝奇ロマン」という呼称は日本独自のジャンル分けらしいのだけど日本ではこのジャンルが特別に好きらしい。例えば『八犬伝』を代表とするのだろう。

といっても西洋と比較しての論拠だと思う。

中国には『封神演義』というとんでもない伝奇ロマンがあるわけで。

 

ではなぜ萩尾望都の『ポーの一族』は伝奇ロマンとは呼ばれなかったのかといえばやはりあまりにも上品すぎるだけでなく現実的な設定で描き続けられたからなのだろう。

それがここにきてかなり自由な発想で描かれている。

 

伝奇ロマンの頁にも『ポーの一族』のタイトルが加わるのかもしれない。