幕末から明治維新にかけての読書を希望しているのですが手塚治虫作品ではこれを外すわけにはいかないだろうと思い再読&感想を書いてみます。
何度も読んだ作品ですがこの思いで読めばまた一味違うかもしれません。
もともと手持ちの本なのでこのための散財もなし。嬉しき事なり。
ネタバレします。
手塚治虫作品はとにかくわかりやすくて嬉しい。キャラクターの違いが明確でストーリーがびしびし入ってくる。
本作はダブル主人公というのだろうか。
貧乏武士のせがれである伊武谷万二郎と外科医の手塚良庵のふたりの男の生き様を描いていく。
伊武谷万二郎は架空の人物だが手塚良庵は手塚治虫氏の実在の曽祖父である。
直情型真面目一本の伊武谷と対照的に手塚良庵は女たらしの不真面目人間として描かれていく。
この一巻だけでかなりの分量になるエピソードが描かれていて書き出していたら大変なことになる。
とりあえず。
伊武谷万二郎は二十六歳。隠居した父の六を継いで出仕してまだ四か月。禄高は十五俵二人扶持、家臣として最低である。
弁当に青虫を入れられるようないじめを受けるが黙っている気質ではなくきっちり仕返しをする。かなりの腕前を持っているがそれ以上に捨て身の覚悟を持つ。
筋が通らぬと感じると戦わずにはおられない。
そして貧乏寺の娘「おせき殿」に一途な恋をしている。
手塚良庵は二十九歳。こちらは腕の立つ医師良仙の跡取り息子だが色好みも父親譲りらしい。伊武谷家に比べれば裕福そうではあるが金満家というわけではなさそうなのに(母親も薬づくりを手伝うなど)どうしても色町通いをやめられない。
大坂にある適塾への入門を許可され大喜びである。
良庵もはじめは「おせき殿」に恋して求婚していたが意外にあっさり諦めたようだ。
ふたりの共通点はどちらも母親大好き、親父はうるさい、という点である。
さて良庵は大坂の適塾へ向かうが色好みが作動し適塾の前に早速色町へ行ってしまう。
ここで好みの遊女十三奴を見初めるが突如女は腹痛を起こす。
良庵の見立ては盲腸だったがやってきた主治医は「腸内の虫」と言い張って虫下しの薬を与えて帰ってしまう。
良庵は意地で外科手術を行おうとするがいざ腹部を切開する段になり今まで一度も腹部切開などしたこともなく本を読んだだけの知識であるため怖じ気づく。
十三奴はついに死んでしまう。
適塾の塾生と共に腑分けをしたところ十三奴はやはり盲腸から膿汁が溢れ出した。
虫がいないことは確認したが良庵は人間の体内の複雑さに驚き、あの時手術などしていたら確実に殺していたと打ちのめされた。
ようやく適塾に入門した良庵だったが勉学は遅々として進まずまたもや遊郭へ行ってしまうのであった。
緒方洪庵先生は人格者のようだ。
そしてここで大鳥圭介(こないだ読んだ)そして福沢諭吉に出会う。福沢諭吉良い人だった。
良庵は遊郭の支払いにと母親から五両を送ってもらい喜ぶがしみじみとした手紙を読んで反省するのだった。
読み始めると面白いんだよなあこれが。