さて続けて手塚治虫先生の明治時代もの。
こちらはまったくの初読みです。
知らなかったのですが本作はあの(私も大好きな)『ゴールデンカムイ』の元ネタであると書かれていて「なにィ」となってしまいました。
まだやっと読みだしたばかりですが最初からなるほどなるほどです。
この表紙からして(この男の風貌からして)読みにくいのではと思っていたのですがやはり手塚治虫、読みだすとどんどん読めてしまうというなんというマンガ作者でしょうか。
初読み『シュマリ』楽しんで読んでいきます。
ネタバレします。
一巻、読み終わる。
幕末歴史をかなり勉強して&『ゴールデンカムイ』を先に読んでいるのもあって大体理解しているのではないかと思う。
「第一章」
主人公がめちゃくちゃ強い大男なのはやはりこのくらいの身体を持っていないと北海道の厳寒の大自然の中では生きていけないと西日本地域の人間(手塚氏と私自身)には思えてしまう。
しかし妙さん、大丈夫かな。
やはりどうしても野田サトル『ゴールデンカムイ』を思い浮かべながら読んでしまうのは仕方ない。
野田氏が「かわいそうなアイヌは描きたくない」と述べられていたと思うが手塚氏であっても「かわいそうなアイヌ」特に女性アイヌはかわいそうな描写になってしまうのだなと思ってしまう。
『ゴールデンカムイ』のアシㇼパさんの存在が輝かしい。尊敬してますアシㇼパさん。
たとえば本作で和人のシュマリがアイヌの若い女性イメカノをさらってきた日本人から助け出し彼女の村まで送り届けるというシチュになる。
その途中イメカノはシュマリの生活の知恵に感心する、という描写があるがここはやはり野田氏の描いた「杉元が賢いアイヌの知恵を持つアシㇼパさんに感心する」という方がすんなり納得できると思う。
何故突然やってきたシュマリの方が知恵を持っていたのかよくわからない。
そしてイメカノは狼に襲われ絶命する・・・手塚先生、あんまりすぎる。
しかしここはこうして野田氏に『ゴールデンカムイ』を描かせてくれたのだと感謝しよう。
本当にありがたい。
シュマリという男は謎だらけだ。
シュマリとはアイヌに名づけられた名前で本人は和人であるが本名は明かされない。どうやら江戸=東京から来た男ではあるらしい。
さらに不思議なのは右手を常に包帯で包み上衣の中に入れて隠している、ということだろう。
が、右手がないわけでも動かないわけでもなく「おれに右手を使わせるな」と意味深な言葉を吐くのである。
はったりなのか、深い謎が秘められているのか。
そして「大月祥馬」という男を探しているという。
物語は連続読み切り短編的な仕立てが続くことで大きな流れになっていく。アイヌの少女の次は江戸=東京から単身赴任している小男とのエピソードで北海道の自然の脅威を示していく。狼からのイナゴの大軍に襲われ芋を腹に入れていたその男はイナゴから芋もろとも腹を食い破られて死ぬ。
「第二章」
ここであっさり「大月祥馬」が登場する。
なんのことはない。
シュマリはかつて「妙」という女性と夫婦だったがその妙はシュマリに嫌気がさし大月祥馬という元旗本で東京から逃げ出した男とこの北海道まで流れてきていたのだ。
そしてシュマリは妙をあきらめきれず「知の果てまでもお前を追って奪い返してやる」という信念で追いかけてきたのだ。
意外にもかなり早い段階でシュマリが北海道に来た目的がわかりしかも出会ってしまう。逆に面白い。
だがそれほど妙を思いつめているのと真逆に妙の気持ちは大月に完全に傾いていた。
妙がシュマリを嫌った理由は「あなたは旗本でありながら急にお上を裏切って官軍方についてしまった。そんな豹変ぶりを情けなく思った」ということだったがシュマリは納得しない。
が、妙と大月が大事に育てた畑が大雨で流され大月もその畑を守ろうとして溺死してしまう。
妙は大月にすがって泣く。
そして妙はそこに残るとシュマリに告げる。
「第三章」
明治2年(1869年)12月、札幌
今日はここまで。
続く。