1972年「別冊少女コミック」6月号
萩尾望都SFの醍醐味が味わえます。
ネタバレします。
萩尾望都SFの第二弾というところでしょうか。
第一弾は『あそび玉』であるとして。
この第二弾では萩尾望都SFの重要なテーマであると思える男女の物語が絡んでくる。
(『あそび玉』は基本主人公少年個人の問題だった)
特に今の私は手塚治虫『シュマリ』を読んだ直後なので古い世界を捨て未知の世界へ行く希望と恐怖を重ねてしまう。
江戸時代の終りそして明治時代の始まりの時期に江戸に住んでいたシュマリの元妻はシュマリを捨てて蝦夷地へと行く。
長い泰平の世の終り華やかで安定した江戸を離れて未開地のエゾに行った妙は何を期待していったのか。
『シュマリ』は男主体の物語である。この短編も男の子の目を通して描いたものではあるが宇宙へ飛び立つのは男の子のほうではなく美しく若い女性であるエディリーヌであり主人公の少年はそのあまりの勿体なさに(宇宙なんぞに行って死ぬのは年取ったおっさんだけでいいのにという)涙を流してしまうのだ。
初めてこの物語を読んだ時はもっとロマンチックに思えた気がするけど今読むとかなり恐ろしい。
萩尾氏はこの物語を希望に満ちて描いたのか。それにしては少年ルセルの涙で終わるとは・・・なんとなく悲劇を想像させる。
なにしろ物凄い意気込みをもっての移民団二万人なのだ。
二万人という数字がとてつもなくリアルに思える。もう少し別のメンバーたちの事も知りたい。
と言いつつエディリーヌきっと新しい星で牧場始めたんじゃないか、とシュマリ的に思う。
一番最初のセリフ「エディリーヌが外庭の芝刈り機を押すつもりだ!」がかっこいいんだよ。SFの醍醐味だわね。