1977年「ビッグコミックオリジナル」2月5日号
これもある意味「奔放な美少女に翻弄される男」の話ではある。
ネタバレします。
そして前作の『花と光の中』とほぼ同じ心理が描かれている。
「ひとりの女性をずっと追い続ける一途さ」の男はその相手の女性にとって幸福なことなのか。
誰よりも愛されている、ずっと愛されている、というのは女性にとって幸せなことと描かれ続けてきたし萩尾氏自身もそう描いてきたと思う。
それが1976年の『花と光の中』から不気味な心理に変わっている。
『花と光の中』評で書いたとおり、それが手塚治虫著『シュマリ』からの影響であればとても面白い。
『シュマリ』での主人公シュマリの一途な愛はおぞましいとも思えた。嫌悪と怒りを引き出す愛情だった。
『花と光の中』という明るくきらめくタイトルは『影のない森』という恐ろし気なタイトルになっている。
一途な愛情は花や光ではなく影すら作らない暗い森なのかもしれない。