ガエル記

散策

『百億の昼と千億の夜』萩尾望都/原作:光瀬龍 第14・15章

読めば読むほど不思議な作品です。

 

ネタバレします。

 

 

第14章「☆トバツ市で待つもの」

「おまえはなぜゼン・ゼンにいたのだ」というシッタータの問いにイスカリオテのユダは答えた。

 

かつて闇に包まれたゴルゴダの丘で巨大な手がイエス・キリストをつかんだ時、私は一つの信号を聞いた。

すべては〝シ”の計画 すべては惑星委員会の行動の結果であると

私は委員会の連中に支配されてしまい四千年の間、ゼン・ゼン・シティーでひとり待つはめになったのだ。

そして「ナザレのイエス」というキーワードで目が覚めた。支配が解かれたのだ。

私はこの長い年月委員会が計画的におびき寄せてくる星々の多くの戦士たちを一人ずつあのスイミンソウの犠牲にしていた。

銀河系において

高度な文明を築き上げた星には必ず滅びの伝説と救いの神の伝説が付きまとう。

それに対して土着の神や悪の神の存在があった。

それらは神に疑問を持ち行動を起こした多くの目覚めた戦士たちだったのだ。

 

シッタータは「ではまだどこかの星に目覚めた戦士はいるのか」と問う。

「おそらくはいない」

銀河系は最後のヘリオ・セス・ベータ型の開発地区でありまたアトランティスは銀河系で最初の実験地だった。

地球は最初に開発されそして最後まで文明の痕跡を残していた星なのだ。他の星々の文明はもっと短い時間で生まれそして滅んだ。

「すべて滅んだ」とオリオナエはつぶやく。

「ではアトランティスがもしも成功していたらあの時市民が反乱と火事を起こさなければ開発は成功しこの銀河この宇宙全体の荒廃はこなかったかもしれぬのか。何が行けなかったのだ、いったいどうすればよかったのだ」と涙するオリオナエを阿修羅は抑えた。

「違う!オリオナエ。アトランティスが最初の失敗であったとしても弥勒達の力をもってすればいくらでも修正がきいたはずだ。一つの失敗が宇宙すべてに影響を与えたはずがない、これほどまでに」

(阿修羅、なんだかんだいってやさしいな)

 

そして彼らはトバツティーへと向かう。

重なり合う天上界の生命発生の原点、時数発生の原点へ。

あの科学力がなんとかまだこの破滅から都市を守っているはずだ。

 

バツ市では帝釈天が彼らの動向をモニターによって観察していた。

ナザレのイエスを呼びこの状況を問いただす。

エスは驚くが「やつらの目的はおれさまよ」とうそぶいて摩尼宝殿で待ち伏せすると帝釈天に言う。

 

阿修羅たち四人は兜率天に近づく。

目の前に現れたのは四天王だった。

しかしそれは映像だけのこけおどしにすぎなかった。

兜率天に戦力がなくなっているのだ。

だがこの時、帝釈天が力を加え四人の戦士を引き離してしまう。

自分で決着をつけたかったイエスは不平を言うが帝釈天は「わたしが処理する」とにべもなく言う。

 

帝釈天は阿修羅の前に現れる。

阿修羅は帝釈天に対して言う「もちろんこの世の破滅を引き起こすにお前達はじゅうぶんな手助けをしているわけだ」

帝釈天は答える「破滅はそれ自体の運命だ」

「・・・帝釈天。多くの宇宙が滅びた。多くの生命が無に帰した。この都市も闇に包まれている。開発を起こした者の目的はなんなのだ。すべてに目をつぶり運命だと甘んじて受けるのか」

「そうだ」

「すべて来世浄土のために?」

「そうだ」

「それを信じてはいまい」

「信じなくてどうして生きてゆけるか。願いを捨ててどうしてゆけるか」

「戦うことができる」

弥勒とか?造物主とか?絶対者とか?」

「この世は神のものではない。我々のものだ」

「鬼よ、阿修羅よ。お前はこの宇宙を支配する超越者の手の内で戦って勝てるのか天上界の科学力もこの宇宙の荒廃の前には術がない。すべてが終わる無駄なことだ」

これに阿修羅は「あなたは老いた。帝釈天

これに帝釈天はさらに「勝てるのか?神と戦って。〝シ”と戦って!あなたは己の死と戦って勝てるのか?」

帝釈天は言う「それではいよいよおまえと最後に戦う時が来たようだ」

「そこをどけ、私の敵はおまえではない」

「おまえをナザレの男にはわたさない・この部屋から出る時はおまえが死ぬ時だ。だが今一度言おう。私はおまえを殺すに忍びぬ。もう戦うことをやめぬか阿修羅。おまえは勝てない。勝つことはできないのだ」

一瞬の沈黙の後、阿修羅の目から涙がこぼれ落ちた。

 

その頃、オリオナエはナザレのイエスに捕まっていた。

 

第15章「摩尼宝殿入り口」

シッタータもまた別の場所へ飛ばされていた。

かつて阿修羅がシッタータの目を通して見たようにじぶんもまた阿修羅の目を通せないかと試してみる。

するとシッタータは帝釈天と阿修羅が差し向う場所へ飛んだ。

突如現れたシッタータに帝釈天は驚く。

「その悪鬼をかばうのか?四千年の昔トバツ市を訪れたあなたは神を信じ悟りを開かんとしていたのに、いつ心を変えた?」

「変えてはいない」とシッタータは答える「神はこの宇宙を作りこの生命を生んだ。それを愛しそれをはぐくんだ。それは信じる。だがこの結末はどうだ?我々が欲するのはユートピアではなく今の生命ある世界なのだ」「今の余にあるのは苦しみ馬仮ではないか?シッタータ。病気や天災、死や争い、人間のそばにあるのはいつもそんなものだったのではないか?だからこそそこに来世があり、あわれな人間はそこで初めて救われる」

「それは終末、無だ。帝釈天

この時、阿修羅がシッタータに声をかける。

「オリオナエはナザレのイエスに捕まっている。地下、摩尼宝殿の弥勒菩薩の掌の上だ」

これを聞いた帝釈天は「摩尼宝殿となると私にはもう手が出せぬ」というや姿を消した。

 

阿修羅とシッタータは摩尼宝殿と向かう。

以前とは違うリフトに乗る。

「今度は閉所恐怖のめまいはおこらぬか」と阿修羅はシッタータをからかった。

シッタータは赤面しながら問う「帝釈天はおまえに何の用があったのだ」

「私を殺すにしのびぬといった。だから戦いをやめぬかと。たとえ私が死んでもおまえが死んでもこの宇宙が再び蘇るのならばそれでいい。そのためにわれわれがいる。そのための戦いだ。すべての変化、変転。取り戻すべき唯一のもの」

 

帝釈天梵天王のもとへ架けた。

「伝えによれば弥勒の掌が動く時それが起こると」

梵天支配するところの天上界すべてより撤退し兜率天四十九の内院衛星都市も既に無く全力を結集して維持していたこの都市もついに最後の時か」

 

摩尼宝殿へ向かう途中にユダが待っていた。

「トバツ市の地下深くにアスタータ50への入り口があるはずなのだ。惑星委員会への入り口というのなら弥勒のおわす摩尼宝殿ほどふさわしい場所はない」

 

摩尼宝殿の弥勒像の掌にはイエスと捕らわれたオリオナエがいた。

ナザレのイエスはオリオナエを解き放ち突き落とす。

エス弥勒のさらに上部へと駆けのぼり告げた。

「トバツ市を残しておいたのは指先一つでいつでもこの星ごと消せるからよ」

そしてイエスの姿が消えそして弥勒の閉じられていた目がゆっくりと開かれたのである。口元は緩く開かれ笑っている。

弥勒の目は四人を見下ろし、そして静かに立ち上がった。

ユダが駆け寄った。

「その開いた口が入り口だ。アスタータ50への」

ユダは弥勒の両の掌の間をこじ開けるように間に立ち叫んだ。

「早く!送路が閉じてしまう。

阿修羅が入り、シッタータはオリオナエの巨体を抱えてその口のに押し込んだ。

「ユダ!」

しかしユダは掌の間から動こうとしなかった。「この掌が合わさった時この像が爆発する。そうなればアスタータ50への道も消滅する。行け!神に会え!そして神に訊いてくれ!なぜこの世は滅びへの道への・・・」

シッタータは阿修羅に呼ばれ弥勒の口へと飛び込んだ。

 

 

遠く宇宙で帝釈天がつぶやく。

「なにもかもが終わった」

 

終わったーいや終わらないから。