ガエル記

散策

『スター・レッド』萩尾望都 その6

途方にくれるお医者様。病まないで。


ネタバレします。

 

セイは殺されエルグは星に閉じ込められクロバと源は処刑(冷凍睡眠)されたがサンシャインとカッパはかろうじて地球に戻ってきた。

落ち込みながらもサンシャインはカッパをつれて自分の(親の)会社に向かい平賀(できる男だ)の機転で助けられる。

 

サンシャインにとって妹のような存在だったセイを失ったという事実は受け入れられないものだった。

アン・ジュールは「ロビンソン島の破壊はクロバの手によるもの」として首謀者は「ソベク」であると判断しラバーバのもとへ訪れた。

しかしラバーバの強い精神力が阻みアン・ジュールは読心ができない。

アン・ジュールと別れたラバーバは平賀と交信し情報を得た。

そしてサンシャインはカッパとアン・ジュールそしてベルと組み火星へと向かう。

同じ便にラバーバいた。

サンシャインはラバーバに「ヨダカの言う名の火星人を知りませんか?」と問う。

しかしラバーバの表情はまったく変わらぬまま「いいえ」と答えるだけであった。

 

 

さて、この先の展開に心を奪われてほしい。

火星に着いたアン・ジュールはそこで生まれ育った小さな子どもたち(地球人の子どもたちだがすでに火星人としての超能力を持っているのだ)が不思議な現象を見続けていると知らされる。

ペーブマンはそれを「火星人のテレパシーによる幽霊騒ぎ」として憤慨していた。

生粋の地球人である大人には見えないが火星で生まれた子どもたちはドームの外に「女の人の姿」が浮かんで見えるのだという。

 

同じようにドームの外に住む火星人たちもそれを見ていた。

それは「セイ」だった。

苦し気な悲し気な表情をするセイが何度も何度も現れるのだ。

それは以前初めてチグルが見たものだ。

ピアンを抱きしめて女は言う。

「目を閉じて頭でみるんだよ。火星人ならできるはず。さあ、知らなければならないのだよ。何を告げようとしているのか」

(このふたりのエピソードは感動するなあ)

 

一方ラバーバは先に貨物で送ったヨダカを入れた箱を受け取っていた。

その様子をアン・ジュールは見つけ一緒に行くと言い出す。

サンシャイン・カッパもそれに気づき後をつける。

ここでラバーバがアンジュールにヨダカの事を「彼は私の友人だった」というのが痺れる。この鋼鉄の男はどうしてヨダカをそんなに気にいってしまったのか。

 

ラバーバはそのヨダカをドームの外へ運びだし彼を目覚めさせる力を持つという百黒老を心で呼ぶ。

がこの時数えきれないほどのセイの幻が現れ空を指さした。

火星人たちはセイの指さした方向を見る。

それは火星の衛星フォボスが砕け散ったことを知らせるものだったのだと火星人たちは気づいた。

そしてヨダカが目覚めた。だがまだ完全ではない。

百黒老が現れヨダカの手を握りその魂を呼ぶ。

 

その頃クリュセでは子どもたちが「こわいこわい」とパニックになっていた。はっきりと「お月さま消えたよ」とわかっている子どももいた。

まだ公表してはいない事実を子どもたちが知ってしまったことをペーブマンは訝しむ。

 

エルグは一人星に残され苦しみ悲しんでいた。

セイは・・・セイの意識はその姿を見たがもうどうすることもできなかった。

セイの意識は時間の中を行き来していた。火星が砕け散ることを知り火星人たちにそれを知らせようと話しかけた。

やがて船が行くのを見つける。

その中には白い髪赤い目の小さな女の子がいた。誰?と聞くと「ジュニア・セイよ」と答える。

そしてそこに「ヨダカ・ママ」と呼ばれる女性が入ってきた。

 

ヨダカ、彼の意識もまた彷徨っていた。

百黒老の声も聞こえる。

が、セイの意識がヨダカに問いかけた。

「どうしてここに?」

「徳永博士の意識を追ってきたら帰れなくなった」

「私は戻ろうとしたらもう身体がなかったの」

ふたりの意識はまずエルグを見た。

セイはこの未来を見たくないという。

しかしその星に水が生まれ芝草におおわれる景色を見る。

遠い未来の姿なのか。

その後、百黒老がヨダカを呼ぶ声が聞こえる。

セイは言う。

「あなたの身体はあるわ。あなたは帰れるわ」

ヨダカはセイの手を引っ張り「いっしょにくるんだ」と呼びかける「小さくなって入り込むんだ。ぼくは少しだけ身体を変えればいい。子どもを生む女の身体に。君はあとで新しく生まれればいい」

火星人の夢見たちは言う。

「火星人の最後の子どもが生まれる。たった一人の六世代目(ヘクサ)が。

その子は別の意味では火星人でも六世代(ヘクサ)でもなく火星で生まれるものでもないが・・・我々の失われた星になるだろう。新しい星になるだろう」

百黒老はラバーバとアン・ジュールに告げる。

「ヨダカは目覚めた。そして子どもを生む。すぐにヨダカを火星から連れ出せ。身重の者にとってはこの星は毒だ」

アン・ジュールは火星人たちがピアンをつれているのを見つけ後を追おうとしたが空気が薄くあえいだ。

「あれはわしらで育てる。あんたらは火星人ではない」

(いいのか。ピアンいいのか???)

 

 

こうしてセイはヨダカの身体の中に入った。

医師は診断して「体内に子宮らしきものができて受胎していますね」と答える。

この後の「このごろはもうかわったことばかりおきます」という台詞が笑える。

(冒頭参照)

火星が砕け散ると判断した政府は火星移住者の移送を始めた。

サンシャイン・カッパはアン・ジュール女史に連れられ早々と地球に送還。

なにもかも終わってしまったとサンシャインは腑抜ける。

が、カッパと再会したサンシャインは彼をつれてヨダカに会いにラバーバの元へ向かう。

ESP研究所は今唯一の火星人といえるヨダカを欲しがっていると聞いたぜ、とサンシャインが問うとラバーバは「私の妻をですか」と答えた。

そこには新妻の装いをしたヨダカが立っていた。

あと四か月でセイは生まれるという。

 

エルグは精神を封じ込めてきたいましめを解くことにした。

ミュージュたちが彼に仕掛けた超能力を抑える角を彼は自ら取り外した。

そしてセイへの愛をこの星に柱に刻みこんでいく。

 

数年後、少し成長したジュニア・セイをサンシャインは訪れた。

今のサンシャインの願いはセイが大きくなったら彼女にいろいろなことを告げたいということだった。

火星のこと・・・

エルグのこと・・・

 

完。

 

何度も読み返した作品ですが何度読んでも感動してしまいます。

光瀬龍百億の昼と千億の夜』の影響を強く感じるこの作品ですがもっとも違うのは明るさでしょう。

あの壮絶な悲しさを負う阿修羅とはまったく違う希望のある本作のラストは萩尾望都作品の基盤となっていると思います。

なぜか原作付きの作品は破滅的なものが多いが。

成長したジュニア・セイの物語はどんなものなのでしょうか。

火星人たち(特にピアン)と出会うのでしょうか?クロバや源とは?

そしてエルグと会うことはあるのでしょうか。

幻のセイ・シニアとの出会いを彼女はどう思うのか。

 

いやまずヨダカとラバーバの関係を知りたいですよね。

きみたちの関係、どうなっているのか教えてください!!