1980年「プチフラワー」夏の号~1983年5月号
『メッシュ』1980年「プチフラワー」夏の号
当時作者萩尾望都氏は両親との不和もあり創作にもかなり苦闘されていたと書かれていますが何も知らない読者である私は萩尾氏の新たな道の開拓を脳天気に楽しんでいたとしか覚えていません。
ネタバレします。
とはいったものの第一巻は読み直すとやや気が滅入る。
主人公はフランソワーズという女性名を与えられた美しい少年で金と銀の二色の髪をしているためメッシュと呼ばれている。
母はメッシュが幼い時に逃げ出し父からは疎まれ親からの愛情に満たされなかったためにいつも愛情を求めているような不安定な精神を持て余している。
冒頭でメッシュが組織から殴られ腕の骨を折られるというおぞましい場面から始まる。
本作は萩尾作品で暴力とセックスが露わに描かれていく。
身体も精神も未熟で未発達なメッシュはその暴力の中で常に傷つき摩耗していく。
彼の庇護者となるミロンの登場は唐突だ。
冒頭暴力を受けて行先もないメッシュを助け怪我の治療をし居候をさせてやる。
ここで重要なのはミロンがメッシュをまるで捨て猫を拾ってきたかの如くで他の男たちのように彼に性愛を求めることはないことだ。
メッシュは(たぶん)はじめてミロンの家にきて穏やかな心休まる生活を感じたのだろう。
ほんとに野良猫の話をしているようだ。
父親を憎悪し殺してやると拳銃を向けたメッシュを止めたのはミロンだった。
警察の目を誤魔化して家に連れ帰り「おまえは根はいい人間なんだから殺さなくてよかったよ」と言い聞かせる。
「違う」と言いながら泣き崩れるメッシュはやはり拾ってきた仔猫のようだ。
後半の小品を挟み二作品でそんなメッシュとミロンの生活が深まっていく。
ミロンは腕利きの贋作画家で裕福ではないがちまちまと小銭稼ぎをしている。
第二巻。
第二巻から『メッシュ』萩尾の本領が発揮されていく、と思っている。
「革命」1981年「プチフラワー」秋の号
メッシュの顔がかなりやわらいで(少し肉がついて少し男らしくなったというのか)より魅力的になった。
本作でメッシュは初めて女性に恋をする。
ジュジュという彼女は歌手だったのだが彼女を歌手へと導いてくれた恋人から受けた言葉で傷つき彼から逃げ出していたのだった。
メッシュはジュジュを求めるあまり彼女を束縛しようとしてしまうがジュジュがほんとうに欲しかったのは恋人の心からの許しだけだった。
ジュジュの友人カティがミロンの家に訪れ失恋したメッシュの心配をするがミロンは「なぐさめてほしくなったら帰ってきますよ」ともう馴れたもの。
一緒にミロンが描いたクレーの模写をながめ「人間だれしもこの絵ぐらい単純で無垢で美しければね。しかしまぁそうもいかんです。泣いたり笑ったり愛したり憎んだり」というのが最高にすばらしい。
『メッシュ』第一巻で好きになった方はいいけどそこでつまずいた方も第二巻のこの話は読んで欲しいなあ。