1985年「ASUKA」8月創刊号
これはまったくの初読でした。
そのせいもあってか読んだ直後は「どういうことなのか」と戸惑いました。
ネタバレします。
何度か読み返して(何しろ短編なので)ようやく少しつかめてきたのですが私には読み取りにくい話だった。
そのわからなさに宮沢賢治の『貝の火』を思い起こしてしまったのだけど『貝の火』とはまた違うのかもしれない。
若き領主ハプトが学友のメールデールを迎える場面から始まる。
メールデールは僧侶となるのだがハプトは婚約者リアよりも美しいと言う。
ハプトはメールデールに夢鳥(夢を見せる能力を持つ)を見せて「つまらぬ夢を見せた時は打って躾をしてやる」と夢鳥を邪険に扱う。
驚いたメールデールは夢鳥をかばう。
ハプトはそれなその鳥はおまえにやると告げた。
ハプトが見た夢は裸の女などではなくメールデールにキスをする夢だった。
目覚めたハプトは恥ずかしさに夢鳥を打ったのだ。
それは理解できる。
しかしメールデールが見た夢は底なし沼にのまれ腐って解けていく夢だったのだ。
はっと目覚めた時、メールデールは夢鳥の片耳をちぎり縊り殺していたのだった。
そしてメールデールは自分で自分の耳を斬り落としハプトに鳥の耳と一緒に葬ってくれと送りつけるのだ。
ゴッホの話を思い出す。
この話と関係があるのだろうか。
ハプトはすぐにメールデールが自殺するかもと案じて会いに行く。
メールデールは狂気の淵にいた。
自分が見た悪夢、それが自分の本性なのだと苦しんでいた。
そしてハプトが恐れたとおりメールデールは自分の目を潰してしまう。
ハプトが愛した美しい目を。
医師はメールデールに死んだ夢鳥の目を移植する。
医師は言う。
「彼は鳥殺しの罪を犯したことを苦しんでいるのではなく認めたくなくて苦しんでいるのだ。認めれば次のステップに進める」
のだと。
メールデールには夢鳥の目が移植された。
こうしてやっとハプトとメールデールは表裏一体ではなく別の人格になれたのだろうか。
この後、ハプトとメールデールはどのようになっていったんだろう。
夢鳥ちゃんの世界も気になる。