ガエル記

散策

『Marginal/マージナル』萩尾望都 その2

死にぞこないのアシジンだ。

 


ネタバレします。

 

 

やはりどうしても「マザを殺した」ということがこの作品のすべてのような気がしてしまうのだがそれではいけないので先に進む。

 

市長は後継者である息子ミカルに新しいマザとなるハレルヤのことを話し「おまえが第一夫となる」と告げる。そしてマザは生まれ変わったりはしないこと、センターの医療技術で長生きするがいつかは死ぬことを話して聞かせた。

そしてその新しいマザにあのチトが内定していた。

 

そのチトは自分からセンターの話を聞いてグリンジャたちが暗殺を実行したと勘づいていた。

グリンジャが来たと聞き慌てて逃げ出す、がすぐにつかまりグリンジャの手で絞殺される。

 

メイヤードは市長に告げる。

「こういうミツバチ型のひとりの母と多くの息子という社会では母親殺しなどは起こりえないものです。これは興味深い調査になるでしょう」

 

グリンジャたち仲間は暗殺を実行した者を逮捕させ四人で都市を離れた。

駱駝に乗り砂漠を行くうちに倒れているひとりの少年を見つける。

それが冒頭に登場したキラだった。

 

第1話「迷い子」

グリンジャは気を失っている少年を介抱してやる。

仲間は近くの市場で売り飛ばせばいい、と言い出した。

グリンジャは気になり何かとキラの世話を焼くがそのたびキラが暴れるので口を塞ぎ逃げないよう縛らねばならなくなった。

 

市場に到着するとさっそくアシジンが登場する。

キラを見て気に入り砂牛と交換する。

ひとりの男がマザが死んだため誰も近寄らぬ森が突然火を噴き数え切れぬほどの魔物(ジン)が四方八方の空へ飛んで行ったと話し出す。

その時轟音が鳴り響いた。

「マシーナだ」

それは空を飛んでいく飛行機だった。

人々はそれを見て逃げ惑ったが一団の荒くれ者たちがそれをせせら笑いまだつながれていたキラを奪って走り出した。

アシジンは怒り後を追いかける。

そしてグリンジャは仲間たちに別れを告げアシジンの後を追った。

 

ここでアシジンはグリンジャに名乗る。

「オレはアシジン。死にぞこないのアシジンだ」

(今読むとどうしても「オレは不死身の杉元だ」と重ねてしまってしょうがない。もしかして関係あるのだろうか)

 

そして荒くれた暴走族の一団は集まって戦利品を見せあった。

その中にキラがいた。

 

第2話「アシジンの岩屋」

ここでアシジンのカッコよさとグリンジャの知恵が披露される。(すでに披露されてはいたが)

火を放って乗り込んでいくアシジンはここでも決め台詞「オレは月の岩屋の死にぞこないのアシジンだ」

それを聞いた荒くれ者たちは怯えて逃げだす。どうやら縁起が悪いらしい。

一方キラはグリンジャに「みんなを助けて、キラは、キラは?」と泣きだした。

 

荒くれ者らからキラを奪い返したアシジンはグリンジャと別れ自宅である岩屋へと向かう。

しかしキラはなぜかグリンジャになつきアシジンと行くのを嫌がった。

 

岩屋ではアシジンが飼っている豹が出迎える。

泉もある言い岩屋だとアシジンはキラに説明する。「だが逃げ出そうとしたら豹が襲うからな」

だが、アシジンが茶を用意し薬を探す間にキラは毒蜘蛛に刺されてしまうのだ。

毒消しの薬が切れていたと気づきアシジンは急いで薬草を探しに出るがない。

そこにグリンジャが現れ毒消しの薬を持っているという。アシジンはグリンジャを岩屋へ連れて行きキラの介抱を任せた。

グリンジャは薬師だと言い的確に治療をした。毒を吸い出したというアシジンにも解毒剤を飲ませる。

キラは変な色の汗を出しふたりでその汗を拭きとった。

この奇妙な共同作業が印象的である。

その間にアシジンは自分のことをグリンジャに話聞かせる。

7,8歳の黒い子どもの頃、崖から落ちて大ケガをし、額が割れて脳みそが転がり出たという。ちょうどその時小さなマシーナが村の上を行きかかって降りてきた。センターのものが出てきてアシジンを銀の箱に入れて飛び去った。

死んだと思われたアシジンはセンターで手術を受け生き延びたのだ。半年後父親が迎えに来たが村人は皆アシジンを気味悪がって岩屋に住んでいた叔父と暮らすことになった。

アシジンは叔父に念者になってほしいと願ったが断わられた。

叔父の夢は「ウー・マン」を探すことだったという。

ウー・マン、それは子供を産む人間だ。

マザは「ウー・マン」ではないという。

グリンジャは「雌のことか?しかしそれは動物の話で人間は獣とは違う」と答えた。

 

キラは高熱を出しふたりの男に汗を拭かれながらずっと奇妙な寝言を発していた。

 

第3話「二九九九ー現在」

キラが回復した。

アシジンは洗濯をしグリンジャは甘い蜂蜜を取ってきた。

キラの世話をすることで不思議な連帯感が生まれていた。

 

そうした安堵感からかグリンジャはアシジンにマザの話をする。

マザはもう生まれかわれない。

子供はもう生まれない、と。

そして「死にゆく世界の流れを変えられるのなら、マザがいないこの数日だ」と。

しかしすぐに「言い過ぎた。忘れてくれ」と告げる。

それを聞いたアシジンも話し出す。

頭を割った事故でセンターに運ばれずっと眠っている間に聞こえてきた声がある。

「男ばかりのあわれな世界。私はマルグレーヴ。ここはマージナル」

この言葉を聞いたキラは質問に答えていくがグリンジャとアシジンはますます謎が深まるばかりだった。

 

マザの候補者だったチトが死亡した後、候補者は逆に増えすぎ市長は困惑していた。

メイヤードの口論になり市長は体調を崩して寝込む。

むすこのミカルは心配するがメイヤードは常に冷静でミカルは「人間ではないようだ」と感じる。

だがメイヤードも「森が燃えた」という噂が気になりその写真を撮りに行かせる。

 

アシジン、グリンジャ、キラが住む岩屋に村からアシジンのいとこガリバーと一帯で一番の美形と名高いジューシーが訪れる。

都市から戻った村長がへばっているので氷を持って見舞いに行くため近くに氷室がある岩屋にやってきたのだ。

キラが一向になつかないアシジンは一年ぶりにあったジューシーの美しさにほだされ関係をもつ。

次の日、氷室にむかったアシジン、グリンジャ、キラそしてジューシーは氷室の中で氷漬けになった少年を見つける。

その姿はキラそっくりだった。

そしてキラはそれを見て「キラ」と叫ぶ。