ガエル記

散策

『Marginal/マージナル』萩尾望都 その3

メイヤードかっこいい。

ぜったいロックですね。

 

ネタバレします。

 

 

第4話「漆黒の森」

氷室の中で氷漬けになっていたもうひとりのキラを見て「キラ、キラ!」と叫び続けるキラ。

それを見たグリンジャは「これがキラか?おまえたちは双子か?」と問う。

キラは「これはキラじゃない」と答える。そして「これはぼくだ」と言い出した。

アシジンは「こいつがおまえ?じゃ、おまえは何だ?」と問い詰める。

なにも言えないキラを見てグリンジャは「こいつに訊くな。わからないんだ」と言葉を挟んだ。

アシジンは「氷を切り出して出よう」とその話を切り上げた。

 

ジューシーは「あの子には魔物が取りついているのかもよ」という。

なにもかもなぞに包まれている。

 

センターでは新しいマザを決めようと急いでいたがメイヤードは気が乗らない。

補佐役は候補者は選りすぐりで全員XXYだと言う。

ここでの会話で「センターの人間」はこの世界=地球の人間ではないらしい、とわかる。彼らは他所から4年間の赴任という形で来ているのだ。

そのうちの一人は「ホモ」だが「男ばっかの世界は辛い」という。「ホモですが母親から生まれましたから女がいてほしいです」と。

 

メイヤードはXXYのリストを見てひとりに目を止める。

18歳という成人だが男性化していない。しかし補佐役はその人物は虚弱体質でしかも「夜鳴き鳥/ナイチンゲールの家」の者、図書を司っている人物だといってメイヤードを制止した。

しかしメイヤードはプロジェクトは私が決めると退かなかった。

 

ここで空港のフロウから連絡が入る。

密入国者があったという。

メイヤードは「冗談だろ。地球なぞに来たら命がないぜ」と受けた。

つまり非正規に地球に来ることは死を意味するのだろう。

フロウはその密入国者の映像を見せた。

メイヤードは興味を持ちその男に会うことにした。

男は無菌室にいた。

血液検査をされD抗体なしで地球に来たとわかる。D抗体なしでは死んでしまうらしい。

メイヤードは消毒後に男と対面し「座ってお話を。あなたのお名前は」と問うと男は怒って「人と話す時は眼鏡を取りたまえ」とメイヤードのサングラスを弾き飛ばした。

メイヤードの目は虚ろに色素がなかった。「それがないとよく見えないので」

男は「失礼した」とサングラスを拾い上げた。「ではあんたが、マルグレーヴ?」

マルグレーヴ=辺境伯=国境に設けられた国土防衛指揮官(つまり司馬懿みたいなのだな。すげえ)で一般の地方長官より高い地位にある。

生物学者を名乗るその男は事情を話し出す。

20年前大学の友人だったアレクサンドル夫妻が行方不明となり彼はずっとそれが気になっていた。

彼、スズキ・ゴーとアーリン&イワン夫妻は次々と研究発表して博士号をひっさらう羨望の的でもあり謎でもあった。

メイヤードは同じ大学にいたのだ。

しかしアーリン&イワンは突然大学から追放された。学籍は消され学会から名が消えた。

ゴーは「彼らは純粋だった。大学は面子ばかり気にして」と怒鳴る。

「それでイワンとアーリンは地球のユーフラテス地区の森に?」とメイヤードは地図を開く。

そしてゴーに「きみはすべてを語っていない」と告げる。

「わたしはただ親友が心配で。彼らが捕まる前に自首を勧めたいのだ」

メイヤードはゴーに「ワクチン接種を受けますか。D型は遺伝子に傷が残りますが」という。

「覚悟ずみだ」とゴーは答えた。

 

しかしゴーの親友夫妻がいた森は12日前にカンパニーがシャトルで来て焼いていった場所だった。

怒り出すゴーにメイヤードは問う。

「彼らはここで何をしていた?」

 

寝込んでいる市長は息子ミカルを呼び頼みごとをした。

「秘書のネズに訊いて家を訪ねてほしい」と。

ネズがミカルを連れて行ったのは夜鳴鳥ナイチンゲールの家だった。

 

第5話「図書の家の夜鳴鳥」

ネズとミカルがその家に向かう途中搭から飛び降りた自殺者がいた。

「ミュージォン」と呼びながら駆けてきたのはミカルの同級生だった。

動揺するミカルを鎮めるネズ「よくあることです」

その言葉にミカルは驚く。

ふたりはこじんまりとした通路を通り門を開いた。

サキ老という人物がふたりを迎え入れミカルだけを誘った。

 

扉を開けると鳥が飛び出しミカルは驚く。

そしてそこには美しいエメラダがいた。

 

エメラダは温かい飲み物を淹れ話し始めた。

「タイム・マシーナ」の話をする。

このエメラダとエドモスのパートは美しく悲しい。

世界の真実を知っているがそのことを誰にも伝えられず伝えても信じてはもらえない人々だ。

場合によっては恐怖を呼び起こし殺されてしまうのかもしれない。

 

こうして市長の後継者であるミカルは地球のかつての姿を教えられる世界にはマザではなくマンの対となるウー・マンがいた。その数はマンと同じくらいだった、ウー・マンは一年に一度ひとりの子どもを生んだ、しかしある時そのウー・マンが消えたのだ、と聞きミカルは「この人、頭がおかしい」とうんざりしてしまうのだ。

ミカルは教室で人間と動物は違う、と教わってきた。

人間はただひとりのマザによって子供が生まれてくるのだと。

さらにエドモスによって心をかき乱されたミカルは待っていたネズを見てほっとする。

 

ネズは過去ばかりを見ても何もならない。肝心なのはこれからのことだという。

そして自殺者の気持ちがわかるという。真綿で首をじわじわと絞められて、ふと気づく、息ができない、と。

そういったネズはまさに息ができないようになっていてミカルは声をかけた。

 

部屋に戻ろうとしてあの同級生を見つける。

自殺した兄ミュージォンの遺体はセンターに運ばれたという。

名前はローニ。

兄ミュージォンが自殺したのは子供が貰えないからだった。マザが死んでもう子供は生まれないと落胆していたという。

ミカルは死の予感を覚えた。

 

エメラダは長生きできない体だった。

エドモスはそれを秘密にして薬を飲ませようとしていたがエメラダはそれを嫌い、エドモスがいつも自分を見張っているのを疎んじた。

 

その時、何者かが部屋に乱入してきてエメラダを捕まえた。

エドモスはすぐに気づきそれを阻止しようとしたができなかった。

エメラダはさらわれたのだ。

 

マルグレーヴがかっこよい。

前に読んだ時は司馬懿を知らなかったからなあ。

司馬懿の凄さがわかった気がする。