ミカル主人公バージョンも読みたいんだよな。
ネタバレします。
第19話「ハレルヤ」
ミカルが新市長になる時が来た。
センターの不思議な場所で作り出されたマザ・ハレルヤの衣を受け取り儀式を終えた。
アシジンはセンザイマスターの指示でメイヤードから偽の毒薬を飲まされ解毒剤を飲まないと死ぬと告げられる。
解毒の条件はキラをつれてくることだった。
アシジンはヘビの宿を訪れるがそこにいたのはグリンジャだけだった。
ゴー博士はヘビ男をつれネズを訪ねていた。
キラはマーゴのアジトで念力でスイッチを入れる暗示にかけられ実験をくりかえしていた。キラの超能力は確実だった。
そこへアシジン・グリンジャが来てキラは喜びアシジンに抱き着くがアシジンはそれを受け止める体力すらない。
キラがスイッチを入れるとどうなるのかと尋ねるのでマーゴは建物の屋上へ行って街の様子を見せた。
街の人々はぞくぞくと新しいマザを見に聖堂へ向かっていた。
マーゴの計画は都市にある七つの東医の水場を同時に破壊するというものだった。
その爆破スイッチをキラが遠隔の念力で押すのだ。
都市の二百の水盤から水が溢れ出しセンターと聖堂が中央のくぼ地で孤立する。
修理される前にマーゴたち革命派がマザ、市長、メイヤードの暗殺を遂行するのだ。
その成功のカギはすべてキラのがスイッチを入れる念力が握っていた。
ところが捕らわれたセンターから不意に戻ってきたアシジンがいきなりキラの手をつかみ逃げ出す。
驚くマーゴにグリンジャは「センターから毒を仕込まれた。奴はセンターの手先だ」と告げる。
が、アシジンはつかんだキラの手を放しうずくまる。
キラは逆にアシジンをつれて新市長ミカルの家へむかった。
そこへネズがやってきてアシジンとキラを見て金切り声をあげる。
しかしむしろこのほうがいい、とふたりをミカルの付き人にするとして出て行く。
ネズは親しいジャックに__連絡し地下鉄で空港へ脱出する手はずを頼む。
が、そこへゴー博士とエドモスが来た。
エドモスはマザを見たいというのだ。
第20話「暗示」
人々が動き出す。
新しいマザ・ハレルヤを見に聖堂に人々が集まる。
エドモスもそのひとりだ。
脱出を考えているネズ、それを見破るセンザイマスター。
グリンジャはマーゴにキラへの暗示の言葉を聞きだそうとするが言わない。
グリンジャとともに来た聖者たちは「我々は都市とともに沈む」と心で伝えた。
ミカルはバルコン(バルコニー)に立つことを嫌がっていた。
彼にはあまりにも理解不能なことが多すぎた。突然知ったことが多すぎたのだ。
ミカルはいわゆる妻となるハレルヤを怖れ目の前にいるキラの女性性に惹かれていた。
センザイマスターはメイヤードに「七つのメインタワーが壊れたらどうなります?」と問うがメイヤードは冷静なままだった。補助電力もあり洪水など起こりえないのだ。
ナースタースからメイヤードに連絡がはいる。ナースタースはキラを早く殺すよう伝えた。
メイヤードは聞き返す。
「地球のマージナルプロジェクトはあと22年で終わらせる予定なんだがその後わたしは何か次の予定があるのかね」
ナースタースは答える。
「あなたの最大限界寿命があと22年だからよ」
「聞いてなかった」
メイヤードは答えた。
マザのお披露目が始まる。
新市長の挨拶がありカーテンがあがった。
そこに新しいマザ・ハレルヤ、かつてのエメラダの美しい女体となった姿があった。
そこへ一羽の小鳥が飛んできた。
マザの手にとまりさえずる。
そして飛んだ。
それを見たマザは小鳥に手を差し伸べ高いバルコニーから飛びだしたのだ。
一瞬の静寂そして悲鳴があがる。
誰かが「マザが死んだ」と叫ぶ。「死んだ!死んだ!」
「モノドールは終わりだ」
「死んでなぞいない」ミカルが叫ぶ。「マザは死んでいない。ここにいる」
ミカルの眼差しはキラを見ていた。
『マージナル』始まりは萩尾望都の宿命である父母への呪いと女性性への呪い(女性が子供を産まなくてはならないことへの)だろう。
「子供を産むため女性に科せられた毎月の生理という呪い」は最たるものといってもいいだろう。
出産そのものの恐怖だけでなく10歳を越えた頃から始まる「毎月の生理」毎月一週間近く出血し頭痛と腹痛に耐えなければならない。
人によっては起きることもままならないというこの苦痛を経て死ぬかもしれない恐怖の中で出産をする。
その憎悪が「子どもがすべて政府から与えられるものだったらいいのに」という夢となって表現されたとしか思えない。
そのせいで本作から女性は消え男性だけの世界となってしまった。
前にも書いたがこの話が女性だけの世界だったらなんの混乱もなく平和なのだと思う。
まさしく「蜜蜂の世界」だからだ。
男性だけの世界として仕掛けることで物語は暴力的に壊れてしまうのだろう。
それは何故なのか。
女性は精子を求めているが男性は別に卵子を求めているからではないからだと思う。
たぶん精子を求める女体が欲望の的であるはずだからだ。そういう仕組みになっているのだ。
しかし萩尾望都のそんな呪いを越えて物語はおもしろい。
そんな思い通りにはさせないという人間のダイナミズムが頼もしい。