ガエル記

散策

『海賊と姫君』萩尾望都

1989年「プチフラワー」9月号

 

これまた奇妙な味わいの作品です。

バレエと恋愛をシンクロさせていくのはもう無論巧みだがキャラクターの癖が強く生半可に共感などできない気がします。

 

 

これを読んでハッと気づいた。

以前はいつも「おなじみの美しく奔放な少女と振り回される少年」と書き続けていたのにしばらくそれを書かないでいたら本作は単純なそういう構図ではなくなっている。

少女はやはり美しくて奔放ではあるが内心とても揺れ動いているし少年、ではなく30男(29歳)は振り回されているが美しく傲慢でもある。

 

本作を初めて読んだ時は「あまり面白くないように感じてしまった」のだけれど読み返すうちにこの不思議な味になんとなく共鳴できる気がしてきた。

タダの良い話、ではなく「変な話」に共感するようになった時、心は捕らわれる。

 

奇妙な美形オリバーとローズマリィ、ひたひたと好きになっていく。