恐ろしく鬱陶しい物語なのですが主人公ジェルミがあきらめずなんとかできないか、と最初から行動し続けているために読むことができるのだと気づきました。
他の誰かに助けられるのを待つのではなく自分自身んで探求していくのです。
しかしそれでも精神が破壊されて行ってしまうのですが。
ネタバレします。
実際、グレッグのこの行動を止める方法はなかったのかと考えてみた。
しかし結局ジェルミにとっての問題はグレッグではなく母親のサンドラなのだ。
グレッグとの結婚が破棄されてしまうと弱い母は死んでしまうのではないかというブレーキがジェルミの行動をすべて封じ込めてしまうのだ。
ジェルミは売春宿街へ行ってディジーから話を聞き「逃げなさい」と忠告される。
そして『十代の心身症』を読んで感銘を受け著者のアダン・オーソンに会いに行くのだ。
ジェルミにとって解決の糸口になるかもしれない邂逅だった。
だがすでに死期が近づくほど重病だったオーソンとの会話は深まる前に彼の死によって途切れてしまう。
再びジェルミは一人きりで迷路を彷徨うことになる。
その間に学校でもジェルミはウィリアムという学友にキスをしたり激しく後悔したりという精神の揺れを見せる。
ここでもまっとうな友人たちとの相部屋生活から出て一人部屋に移ることで麻薬中毒の学生と交わることになってしまう。
パンジーと呼ばれるその男は誰からも蔑まれているがジェルミにとって密かな安らぎにもなる。
バレンタインからもらった薬をイアンが見つけ勘違いしてパンジーに突き返してしまったためパンジーはその薬を一気に服用してしまうという顛末となる。
三巻の表紙はジェルミの母サンドラ。
ジェルミにとって一番恐ろしいのはグレッグではなくサンドラなのだがこの時点でジェルミはそのことに気づいてはいない。
毒親で恐ろしいのは暴力をふるうほうではなくそれを知らず(あるいは知っていて)何も守ってくれず見過ごしているだけのほうなのだろう。
ジェルミが母サンドラを見捨てることさえできていたら。
この作品はさっさと終わっていた。
うんざりするほどのレイプシーンが続き(はっきり言って私がグレッグを殺したかった)唐突にジェルミの殺意が成功してしまう。
それは自分の母親もまた殺してしまうことになるのだが、それこそがジェルミの真の目的ではなかったのか。
サンドラが生きている間ジェルミは幸福になれないのだから。