どうしてもどうしても闇の奥から抜け出ることができないジェルミとイアン。
ますます複雑な迷路に侵入していくようです。
ネタバレします。
なんども繰り返されるジェルミとイアンの戦い。
シャロンによってふたりはリン・フォレストにいるナターシャと再会する。
ナターシャはジェルミに謝罪するがジェルミはそんなものは必要ないと答える。
どうしてもジェルミを捕まえられないイアンはあの鞭打ちの写真をもう一度リンドンに作ってくれるように頼み今度はジェルミとふたりでその写真を見ながら真実を聞いていく、という荒療治をし始める。
テーブルを挟んで向かい合うジェルミとイアンはまるでこれから戦うボクサーのようだ。
ふたりの対話はこれまでも常に冷静ではいられず罵りあい殴り合う状況になったがこれはやはり萩尾望都が少女時代に少年マンガでバトルで対決してきたからではないのだろうか。
しかしそのバトルはまたも決着はつかずセックスという肉弾戦を経て休戦に持ち込まれるといういつもの繰り返しで終わる。
イアンとの荒療治によってかジェルミの精神はむしろ危ない状態になってしまったようだ。
常にジェルミの頭の中で叫び声がしているのだ。
あーっ
あーっ
と。
今ジェルミはわがままなマージョリーに会いたかった。
そのマージョリーは熱を出して寝込みママ・クレアにわがままを言って困らせていた。
もう元気になったと言って飛び出すマージョリーはパスカルの家へ向かう。
そこにはマージョリーに会いに来たジェルミが薬でぶっ飛んでいるパスカルにつかまり手錠をかけられ鞭打たれていたのだ。
わめくマージョリーをパスカルはうるさいとバスルームに閉じ込める。
閉じ込められたマージョリーは次第にぼんやりとしてお風呂の湯を入れ棚から剃刀を持ち出す。
そこへロレンツォが来てパスカルを抑え込みジェルミを助ける。
ジェルミは「マージョリーを助けて」と叫ぶ。
ロレンツォがバスルームを開けるとマージョリーは湯の中で溺れていた。
入院するマージョリーにママ・クレアは泣き叫ぶ。
ジェルミも治療のために入院したが抜け出してマージョリーを見守っているのでイアンは彼を退院させる。
その夜ジェルミは自ら「あの写真を見せて」と言い出した。
再びふたりは対決するのだ。
今度のジェルミは冷静に写真を見ていく。
縛られた自分を見て「牛肉みたいだ」と言ったりする。そんなジェルミにイアンはまたも不安になって攻撃してしまうのだ。
以前「サンドラはすべて知っていた」と話したジェルミが今度は「サンドラは何も知らなかった」と言い出す。知っていた証拠はない、と。イアンは戸惑いまた言い争いと殴り合いになる。
そしてジェルミは「あんたは母親に捨てられた」と罵る。
茫然となるイアンは自分に言い聞かせ落ちつくために蜂蜜入りの生姜湯を作って飲みジェルミにも運ぶ。
しかしジェルミはそんなイアンの側で体がバラバラになってしまう。
イアンはジェルミのバラバラになった体を集める。ジェルミは泣きながら「ぼくは臭い?」と訊く。
イアンに知られるのが怖かったと泣くジェルミをイアンは抱きしめる。
イアンはジェルミがすごく近くにいると感じた。
なおも現れるグレッグの亡霊にイアンは「あんたもバラバラになっていたのか」と問う。
するとグレッグの姿は消えていった。
「ママがいない」とつぶやく小さなイアンの姿が見えた。
集まった皆の前でクレアはマージョリーが以前ポリープ手術を受けた時に自分の少女時代にいとこから性的悪戯を受けたことを思い出したのだと告白する。
だから私はどんなことをしてもマージョリーを守ると誓ったのだと。
同情するナディアを嫌うクレア。
そしてジェルミはマージョリーを助けるためにボストンには帰らないと告げる。
とはいえエリックと再会したジェルミは彼をつれてスエーデンにいるバレンタインに会いに行くことにする。
「余計なことに首を突っ込むな」というイアンに反抗するジェルミ。
イアンは思い通りにならないジェルミに苛立つ。
堂々巡り、という言葉を思い出す。
他のいろいろなマンガや映画や小説ではするりと解決できることが本作ではどうしてもどうやってもうまくいかない。
私はまとめて後で読んだからまだいいがリアルタイムで読んでいた人は同じくらい消耗したのではないだろうか。
9年間、よく作家も読者もこの地獄を歩んでいたものだ。
しかしどうやってこの物語設定をしていったのか、と今更ながら感心する。
wikiでは本作を「サイコサスペンス」と区分しているのがクールだ。
その判断でいいんだ?ちょっとおもしろい。