ネタバレします。
高校・文化祭でマヒコの1年1組は「シンデレラ」の芝居をやることに。
シンデレラはマヒコ、王子様は律子、という配役だ。
そんな時、マヒコの隣家に金太郎という青年がやってくる。隣家にはおばあちゃんが住んでおりその孫なのだがなぜかマヒコにはあたりが強く。
その金太郎は両親から「おまえがおばあちゃんの養子になればお金を貸してもらえるのよ」という無体な身売りをしろと言われて良い子ぶっていたのだった。
おばあちゃんが一時危篤状態になり両親は遺産が入ると大喜びするがおばあちゃんは奇跡の生還をしたのだった。
しかしおばあちゃんが金を貸してくれるとなって一段落。
金太郎も自由の身となって美大を目指し始めてハッピーエンドとなる。
「危ない壇ノ浦」
「壇ノ浦」は何故カタカナの「ノ」なんだろう?
普通に変換できるのね。
とにかく本作、劇中劇とはいえ萩尾望都で稀有な日本歴史ものだ。
しかも義経。
ここでは特に義経と頼朝という兄弟の関係に焦点が当てられている。
兄を慕い続ける義経とその弟を厭い続ける兄頼朝、という構図は様々な作品で描かれてきた。
マヒコはどちらかだけに加担するのではなくどちらにも寄り添いながら兄弟の思いを知ることになる。
歴史マニアの男女二人を案内人としながらこの物語がわかりやすく語られていく。
私としては横山光輝『時の行者』を思い重ねてしまう。
そして萩尾望都は本作で義経と頼朝の心がひとつになった最初の出会いの場面を美しく描き出す。
伊豆に流され頼朝の心にしんしんと降る雪を義経は知らず、壇ノ浦に吹き渡る風の輝きを頼朝は知らない、と描き出すのだ。
「あぶない未来少年」
こちらはますます横山光輝的。
マヒコとアズは聞き役に回って羽衣兄妹(エドガーとメリーベル風)と呼ばれている内海遊羽(ユウ)と美衣(ミイ)そして未来から来たジーンそしてロボット・モノンの物語となる。
破滅に向かっていく地球という話はまさしく『時の行者』そのものでやはりこの作品は『時の行者』を下敷きにされているのではなかろうか。
そのジーンがいなくなってしまうと大勢のロボットたちは目的を失いストレスに苦しむ。
モノンはロボットたちのためにジーンに帰ってほしいと頼みにきたのだ。
ジーンは帰ると決心する。
ミイがそれを悲しむ姿を見て兄ユウは妹の背中を押す。
破滅の危機に瀕した未来でジーンとミイは新しい世界を作っていくのだ。
これは『時の行者』ともまったく同じだ。
とはいえ昔はこういうSFがかなりあったという気もするが。
横山氏のSFは「世界が破滅し新しい世界を作り始める」というものがとても多かった。
たぶん今の世界に絶望されていたのではないだろうか。
萩尾望都氏の場合はかなり楽観的である。
そのあたりは私も同じなのでとても心地よい。