ガエル記

散策

『学校へ行くクスリ』萩尾望都

1994年「ビッグゴールド ビッグコミック増刊」16号

一見、SFファンタジー風味の不思議ラブストーリー、だがその正体は。

 

 

ネタバレします。

 

世の中は自分が見たいように見える。

逆に言えば見たいようにしか見えない。

つまりほんとうのものは見えていない。

見たくないものは見ない。

 

という作品だ。

 

よく好きな人が好きなアイドルに似ている、と思うのもその一つである。

他人が見るとまったく似ていないのに補正をかけて「似ている」と思ってしまうのだ。

 

特に若い時は思い込みが激しく強い。

だからある人を激しく好きになり尊敬してしまう。

そしてその人が「そうではなかった」と知ると激しく幻滅してしまうのだ。

「そんな人ではなかった」「そんな人だと思わなかった」と極端に失望してしまうのも若い時期に多い現象だろうけど思い込みが強すぎるからなのだ。

 

主人公かつみはそんな思い込みの激しい性格だが物語の中で成長し変化する。

母親が鬼となってしまうのだが、それは父親への嫉妬と怒りなのだと気づき、可哀そうに思って叩かれてあげる場面が切ない。

 

やはり萩尾望都がSFを描くととんでもないものが出来上がる。