今日も続けます。
ネタバレします。
〔その9:火星の海で泳いでいた]
キリヤの前に突如あらわれた少女人形、それはキリカとマシロからのサプライズプレゼントだった。
「帰れよ。いらない」と払いのける(「いたァい」と話す人形)キリヤにすねるライカは人形を抱えて立ち去ろうとした。
二階から飛び降りてキリヤはライカから人形を受け取った。
「すきよ、キリヤ」と話す人形。
その時、どこからか紐状のものが飛んできて人形の首に絡まるや人形を奪い取ってしまう。
キリヤはその人物を見て「青羽の夢の中のパイン?」となる。
ところが”パイン”が人形を持ち去るともう一人同じ容姿の少年がいた。
「・・・これはチガウ・・・」
「チガウ?」
「これはタベラレナイ」
すると今度は同じ姿の人形がもう二体現れ逆にパインのひとりを捕獲してしまう。
そして三体の人形(と思しきものたちは)パインの腹部を食べ始めたのだ。
「うっ」となるキリヤに気づき三体は「キリヤだ。キリヤも食べる?」と聞いてきた。
ライカとマシロの呼び声に三体は逃げ出す。
キリヤはその後を追う。
屋上のさらに上に青羽が立っていた。
三体のことを聞くキリヤに青羽は「あの子たちは飢えていて勝手に出てくるの」と言う。
「あの子らは、きみだろ。きみは飢えていたの?なぜ?」
「飢えていたのはわたしじゃない。あの惑星よ」と火星を表した。
火星・・・死んだ星・・・でも昔は水で満ちていた。
思い出してキリヤ、わたしたちが幸福だった時のこと。
あなたはわたしでわたしはあなたでみんなで一つの全体で満ちていて恐怖も飢えも孤独も知らなかったころのこと・・・
キリヤがそれを否定しても青羽はこの星の生命体は再び一つになり永遠の命を持つようになる。
それこそが来るべき未来。希望だと青羽は言う。
キリヤはそんな永遠は要らないと言う。
青羽は「あなたのバルバラは何?」と問う。
「あれはただの避難場所だ」「わたしにとっては未来だわ。火星の記憶があるんはわたしだけじゃない。ほかにもいる」
そして青羽は早く思い出して、そして永遠の海に帰りましょう・・・と消えていく。
キリヤの部屋にライカのいとこ花園光助と風仁が訪れる。
光介は江戸時代同好会なので武士のような恰好をして「ござる」で話すのがおもしろい。
光介は4年前キリヤの御神楽を伊勢で見て感動したという。その時一緒に見た大伯父が面を打つと約束したものを持ってきたというのである。
光介さんわずかな登場だがインパクトあって好き。
キリヤはその面をつけて部屋の中でくるりと舞う。
しかし師匠であるおじいちゃんは御神楽を舞う時は私欲私怨を捨てて神に近づけと言った。怒りが消えないキリヤはもう舞えないと思うのだ。
バルバラではヒナコのお通夜は行われていた。
青羽は不思議がる「バルバラでは誰も死なないんじゃなかったの」
タカとパインは「誰も死なないよ。ヒナコは今夜バルバラの記憶になるんだ」
〔その10:お父さんお帰りなさい]
ヒナコのお通夜、それはヒナコの心臓と浮き袋を切り取って食べる儀式であった。
「ではヒナコの思い出の為に、ヒナコを忘れないために」と言いながら参列者は渡会に「さあどうぞ」と勧める。
「な、なぜ」と問う渡会に「食べることで我々は永遠の命が約束されるからだよ」
そしてその我々の血をとることでこの世界の外の人々もまた生き永らえるのだ、という。
渡会は「これは青羽の夢だ。ぼくがこれを食べてもただの夢なんだ」と思いながらそれを口にした。
その時現実の渡会の心臓が停止した。
百田氏はじめスタッフは渡会に心臓マッサージを施す。
バルバラの渡会は彷徨っていた。
霧の中を。
その中に人影があった。
タカだった。
タカは「お父さん」と呼びかける。「お父さんだ。帰ってきたんだね」
折しも雨が降ってきた。
渡会はタカに手を引っ張られ家には入る。タカは甲斐甲斐しく渡会の世話をして「お母さんはずっと前に死んだよ」と言う。
「ぼくここでずーっとお父さんを待ってたんだ。お帰りなさい、お父さん」
嬉しそうなタカの顔を見て渡会はなごむ。
雨がやみふたりで外へ出る。
かかしがびしょぬれだ。
渡会はタカを肩車した。タカは喜ぶ。
だがしばらく歩くとタカはふわりとおりた。
「ぼくそっちには行けないんだ。ごめんね、お父さん」
渡会はタカの名を呼び続けた。
「渡会さん」
百田氏の呼び声に目覚める。
目の前に大黒先生がいた。
火星とバルバラとの関係を話そうとするが渡会は涙が止まらない。
仕方なく一人で休息するが思いはキリヤとタカに及ぶ。
タカのきりりとした眉は確かに小さな時のキリヤの眉とそっくりだと思いながらそれが本当のことだったのか、記憶をすり替えていないのか、と渡会は不安になる。
記憶をすりかえちゃいけない。
記憶はすぐにだまされる。
そんなことをしていると夢が現実とすり替わる。
起き出した渡会は百田氏と大黒先生の前で粥を食べながら昔話をした。
母と父は別居婚だった。
母は大坂の総合スクールの校長になっており、父は下呂の奥の山の中でキノコ農業と陶芸をしている。子どもの頃はよく父に誘拐されて山の中でふたり暮らしをした。
渡会の夢見の力を最初に発見したのは父だった。
母は嫌がったけど最期にはフランクフルトでの勉強をすすめてくれたのだ。
正反対の父母だがキリヤが生まれた時はどちらも自分に似ていると言って譲らなかったのである。
キリヤは臓器移植の授業を受けていた。
キリヤの問いは「臓器移植の時は拒絶反応が起きるのに、食べる時には起こらないのはなぜなのか」ということだった。
秋紫野は「胃で消化するから」と答える。
教師は「その通り。しかし分解されないたんぱく質もある。そのひとつがプリオンというたんぱく質で肉として食べても分解されず脳に潜伏して海綿状脳症を起こしてしまう」
(これが昨日書いた「狂牛病」の話)
ここで教室に入ってきたのが転入生のパリス・グリーンだった。
パリスはキリヤを見るなり手をつかみ「ここにいたの」と言い出す。
驚くキリヤに「ぼくだよ。パインだよ。ねえ、タカ?」
実を言うとそう書きながら狂牛病と本作の結びつきがよくわからないでいる。
とにかく共食いは恐ろしいことなのだ。
考えただけでゾッとしてくるのは本能的にタブーだと知っているのだろう。
んんん?てことはレクター博士はどうだったんだっけ?
特別にプリオンを分解できる胃を持っていたのだろうか。
ここで登場するパリス・パイン。
どうしてコートを着て汗だらだらでやってきたんだろう。
謎が多すぎる。