渡会時夫が詰まってる表紙です。
ネタバレします。
三巻に入るんだけどこれまでの情報量がたった二巻とは思えない。
萩尾望都の力量を感じるが同時に「もっとだらだら見たい」気もする。わがままな。
〔その13:長い長い遺伝子の物語]
カーラー女史。
楽しいキャラである。美女で黒人でバイタリティあってかっこいい。
十条菜々実の二番目の夫氏。良い人そう。
菜々実さんが何故この人と再婚したかというより何故この人が菜々実さんと結婚する気になったか、だが美しい花づくりをしている人だから美人好きだったということだろうか。
青羽はキリヤに遺伝子の物語をする。
いつもキリキリと眉を逆立てているキリヤがこの時は心地良さに身を委ねている。
萩尾望都世界をもっとよく見てみたくなる。もっと深く知りたくなる。
「火星」は何度もでてくるキーワードだ。
これまで「砂漠」が頻繁に使われてきたが本作は「水」のイメージが多い。
「生殖」本作の冒頭で渡会は自分自身がキリヤを産む、という夢をみた。
SFではないが『残酷な神が支配する』でもイアンがジェルミを産み落とすというイメージを持つ場面がある。
『スターレッド』では男性だったヨダカが胎児となったセイを産む。
「時」「永遠」と言うキーワード。
『ポーの一族』がそもそも永遠に生きる一族でありその糧として血液をエネジィとしていた。その方法は指先でもしくは唇をふれるだけで吸い取るというクールでスマートなものだったが本作では永遠を得るために心臓を捕食するというグロテスクなものになっている。作画は相変わらず美しく描かれるが。
しかも尚且つそうしても永遠の命は手に入らないのだ。
青羽のイメージはメリーベルとつながる。
エドガーはキリヤ=タカのほうではなくパインなのである。
メリーベルがアランを「私たちと来る?」と誘った時のように青羽はキリヤに「思い出して」「一つになりましょう」と誘う。
ここでライカが気絶する、というハプニングが起きる。
情報通のアキシノがつい「ライカの親だってアフリカの奥地で化石掘ってんだろ」という禁句を発してしまったのだ。
ライカの両親はアフリカで行方不明になっており先生からその話はするなと禁じられているのをアキシノが忘れてうっかり言ってしまった。
渡会は大黒先生と共に東京に戻り「カササギのパン屋」へ赴く。
青羽の夢の中のパン屋のイメージがつながる。
大黒は言う「あのバルバラは未来の2150年の時間の上に実在していて青羽はその未来の夢を見ているのだ」
その後ふたりは目白秀吉宅を訪れ青羽が小さい頃描いた絵をマシロから受け取る。
マシロは自分がこれをもって青羽に会いに遠軽に行きたいと言い出す。
そこへ十条菜々実がお焼香にと訪れ「わたしも青羽の顔を見に行こう」と言い出した。
〔その14:大人にだってわからない〕
菜々実さん、再婚夫さんと話している時は穏やかな顔をしている。ほんと優しそう。愛が伝わる。
キリヤ宅ではアキシノ、ライカ、パリスが騒ぐ。
大黒先生、渡会からの電話中、突如キリヤの母・明美さんがドアを叩く。
「ヨハネがいなくなった」と泣きだす。
駆け込んできた大黒先生と渡会。
明美は渡会に「あなたはキリヤの父親ではない」と叫ぶ。
逃げ出すキリヤ。
青羽が現れ「遠軽に来て。美しい心臓を用意しておくから」と言う。
キリヤは渡会を部屋に泊め昔話をする。
渡会はキリヤが生まれた時に「母親はいいけど父親は自分のこどもかどうかわからないよね」と冗談を言って明美を怒らせた。
明美は遺伝子のデータを調べてキリヤが渡会の子である証明をした。
「だから明美さんのさっきの言葉は嘘なんだよ」と伝える。
しかしキリヤは「でも途中で入れ替わっているとかない?」と答えた。渡会は驚く。
ここが重要なポイントだったのだがこの時の渡会は思いもよらなかったのだ。
さてこうして一同が遠軽へと向かう。
ここで目白マシロとそっくりな姉マヒルがマシロに化けて遠軽へと向かった。
たぶん昨夜マヒルがマシロに淹れたコーヒーになにかしらの薬物がはいっていたのであろう。コワイ。
この先の話になってしまうが渡会が追いかけていたのは自分の息子ではない男の子だということになるのか。
そして本当の息子タカに「こんな子が息子だったらよかった」という奇妙な願望を抱いている。
その通りなんだ、渡会。
キリヤの絶望が悲しい。