萩尾望都氏と吾妻ひでお氏の対談で「なんで遠軽?」「安彦さんと知り合って」「やっぱそうだと思った」というくだりがありました。
吾妻さんの浦幌町では駄目だったのでしょうか。ちょっと吾妻さんがかわいそうになりました。
「遠軽」という字と響きが良かったのでしょうかねえ。「エンガル」「ウラホロ」どちらもすてきな響きです。
ネタバレします。
〔その15:遠軽への遠い道〕
一行が飛行機で遠軽に向かう。
途中で濃霧が発生し女満別空港に降りる。
「女満別へようこそ」
「ようこそじゃない」「いそいでいるんだ」という罵声が悲しいなあ。(ま、たしかにようこそじゃないかもだけどw)
遠軽へのワゴン車が出るまでに休憩する一行。
化粧室に向かった菜々実はそこでカーラーと鉢合わせする。
「つけてきたの?」
「まさか。偶然です」と慌てるカーラー。
カーラーと出会ったことで菜々実の心は揺れ動く。
彼女の存在をうざったく思う反面もう一度若返りマリエンバートになって渡会を誘惑したい気持ちになるのだ。
一方キリヤはカーラーが連れ出そうとしている車椅子の男が世羅ヨハネだと勘づき渡会を呼ぶ。
ふたりは追いかけカーラーたちを呼び止めた。
渡会は近づくがヨハネにしてはあまりにも年を取っている。
カーラーは「一刻も早く治療しないと老化が進行してしまう」と言って「いずれ詳しくお話します」と去っていく。
渡会達一行は車で遠軽へ向かう。
が、途中で激しくひょうが降ってきた。
〔その16:ひとつになりましょう]
ヒョウを避けるため一行はラーメン店に避難する。
ここで萩尾✖吾妻対談中に出てきた「カボチャモチ」登場。萩尾さんは「おいしかった。チェーン展開してくれたらいいのに」と言うが吾妻さんは「あんなの、たいしたことない」と言い出すw私は食べたことないので興味津々。
ラーメンがくるまでにキリヤはうとうとする。
渡会はうっかりキリヤの夢の中に入り込んでしまう。
そこには青羽がいて渡会に向かい「キリヤはもうわたしのもの、バルバラのもの」と言う。
そして「キリヤ、渡会さんはあなたを捨てた。あなたが枝垂桜の下で眠り込んでいた時、私は漂っていてその夢を見つけた。あなたの島バルバラに火星の記憶を形にしていった。私は未来の青羽に夢を送りながら美しい世界の中心をつくりあげる。バルバラから未来ははじまりいつかみんなひとつになる」
そのためにはキリヤは渡会の心臓をたべないといけない、と青羽は言う。
しかしキリヤは「オレはきみとバルバラにはいかない」と言い返す。
「はやくひとつにならないと恐ろしいことが起きる。とても怖いものがやってくる」
キリヤが渡会の腕を握るのを見て青羽は打ちのめされ消えていく。
ヒョウが止み一行は走り出す。
一方、大黒先生はまだ伊勢にいて入院した明美さんを見舞っていた。
大黒先生は目覚めた明美さんに「ヨハネはきみの前世の恋人だった。しかし現世できみは渡会と結婚した。キリヤくんは渡会の息子。わかったね?」と言う。その言葉を聞き明美さんは泣きだす。
そして「死んだの」と話し出した。「キリヤくんは死んでないよ」という大黒先生に「死んだけど生き返らせてくれたの。ヨハネが。キリヤを」
明美さん、こわい。このひとがすべてを握っていたのだよなあ。
遠軽で菜々実は孫の青羽に久しぶりに会うことになる。
顔色もよく健康そうな青羽を見て以前とはまったく違う思いを抱く菜々実。
なにしろ初めて出てきた菜々美は青羽のことを「まるで悪魔。死ぬまで眠っていればいい」と言っていたのだから。
とはいえ、健康で美しくなった青羽は受け入れられるのにアレルギーで苦しんでいた時期は「金魚娘」と言っていたのだからなあ。その時こそ助けてほしかったはずなのに・・・。
くどいがその時遠軽に引っ越しできてたらなあと思わずにいられない。違うのかなあ。
青羽に対する医療方法を聞き菜々実は渡会の夢見ダイジェスト版を鑑賞する。
途中で渡会がタカから「お父さん」と呼ばれる場面が入りキリヤは絶句する。やはり嫉妬心は出るのか。
慌てる渡会はマシロ(になっているマヒルに)かつて青羽が描いた絵を見せてくれと突如言い出す。
青羽の絵を見てキリヤはそれらの意味を告げ始める。
渡会は驚き「ではこれは」と言って差し出した絵を見てキリヤは答える。
「ひとつになりましょう。
もう死ぬことはなくなる。
(心臓を食べて)
あなたはわたしに
わたしはあなたに
永遠がまっている」
その言葉を聞き皆は互いを抱きしめた。
「やめろ」
キリヤの鋭い声に皆ハッとして醒める。
その時マシロが入ってきた。
マヒルは泣きながら叫ぶ「わたし間違っていた。パパは永遠に行ったの。青羽ちゃんは天使だったの」
ここ読んで『ゴールデンカムイ』のラッコ鍋シーンを思い出す。
興奮して叫び続けるマヒルを落ち着かせるために出て行くマシロ。
渡会は「なんか脳がスパークして、トランスにおちいったんだ」
菜々実も涙を流し「天国にいるような一瞬だったわ。なんだかなにもかも許せて」と言う。
しかしキリヤは「ハマったんだよ」と言い放つ。「青羽のワナに。みんな。これが青羽の言うひとつの世界だよ」そして「パインを呼べばあのじいさんがヨハネかどうかすぐわかる」と言い出した。
大黒先生は明美さんに「いつ、キリヤくんは死んだんだ?」と問うた。
青羽の「ひとつになりましょう」世界は気持ち悪いんだよなあ。
しかし日本人の理想としてこの発想はありがちでもある。
一億火の玉のいうやつだが。
もちろん諸星大二郎氏の溶け合う人々も思い出す。