「月刊アフタヌーン」
猫シリーズが続く。
レオくんはやんちゃな子供だったけどこちらは落ち着いたおっさん的なかんじで良いです。
ちょっと不思議な本です。
田中アコさんが書かれた原作は全部なのか「菱川さんと猫」だけなのか、よくわかりません。
本にはなぜか目次がありません。
それらも含めて謎の本です。
(あ、カバーの裏表紙に目次的なものがありました)
それから読むと絶対泣いてしまうのでご注意ください。
ネタバレします。
「菱川さんと猫」2009年5月号
大森レオくんは学校も会社もうまくやれない未熟猫だったがこちらの菱川ゲバラ氏は会社仕事もそつなくこなしていく。
語り手である高野白湯子は入社二年目の新年、会社に行くと菱川さんが座る席に大きな猫が座っているのを見た。
菱川さんは入社して十五年目のベテラン社員。ひっそりと目立たない男性で白湯は殆ど会話したこともない人であった。
だがその人が大きな猫となって菱川さんの仕事をこなしていく。
何故か、白湯以外の社員たちは誰もそのことについて何も触れず当たり前のように「菱川さん」と呼んで仕事の話をしている。
どうやら、彼が猫であると感じているのは白湯だけだったのである。
という不思議話。
菱川さんと呼ばれている猫は当たり前のように仕事をこなし帰宅する。
白湯はそのあとをつけて「化け猫」と叫ぶ。
逃げる猫を追いかけ菱川さんの家に着いたが本人はおらず白湯は家の中で菱川さんに化けた猫に理由を問いただす。
猫の本名はゲバラといった。
といってもむろんそれは本物の菱川さんがつけた名前だ。
ゲバラは菱川さんがチェ・ゲバラに憧れて母親と一緒にキューバに旅行にいったと言い出した。
白湯は半信半疑で帰るしかなかった。
白湯は先輩女性から「体の弱い菱川さんは結婚もあきらめ母親と二人暮らしだった。仲良く旅行にも行っていたが5年前に母は亡くなり独り暮らしだった」と聞きゲバラが嘘をついていたと知る。
再度ゲバラを問いただすと「菱川さんは去年の暮に亡くなったんです」と事実を語りだした。
野良猫だった彼は菱川さんに可愛がられてそのまま家に上がり込んでしまったのだという。菱川さんは持病の心臓病を持ち自分が早死にすることを知っていたので猫を飼うのはためらっていたがゲバラがいついてしまったのでやむなく飼ってくれたのだという。
そして去年の暮雪かきをし終わって疲れたのか家の前に座り込んでしまったのだ。
ゲバラはしばらく菱川さんの膝に座っていたが夜になると冷たくなってしまった。
その遺体の上に雪が積もって隠してしまった。
「もう少し菱川さんがいちゃいけませんか」
ゲバラはうまく菱川さんに化けて会社に行った。
白湯以外誰もそれを信じて疑わないのだから。
一月二月と過ぎ三月はじめ暖かい日だった。
白湯ははっとして菱川さんの家に走った。
昨夜の雨と温かさで雪が柔らかくなっている。
白湯はスコップを取り出し菱川宅の前の雪を掘り起こした。
汗をかきコートを脱いでまた堀った。
その下に菱川さんが冷たく硬くなって横たわっていた。
22歳の白湯にとって菱川さんは地味なおじさんでしかなかった。
彼のことは何も知らなかったのだ。
葬式が行われた。来たのは会社の人たちだけ。
そしてゲバラは普通の猫に戻っていた。
奇妙な話である。
猫は人間に化けたりしない。
こんな話はありえない。
しかし鍋島化け猫騒動もあるしなあと思いはする。
猫は人間の気持ちをわかってくれそうな気がする。