アンリ・ド・ギーズ。
亡き父の仇を討つために自らの顔に向こう傷をつける。
そんな豪放磊落な男にマルゴは強く惹きつけられる。
ネタバレします。
マルゴたちは母后カトリーヌに従いフランス一周の旅に出る。
ところで私はアンリ・ド・ギーズよりシャルルが好きなのだけど皆そうなのだろうか。
そしてアンリ・ド・ギーズより田舎者のナヴァルのアンリのほうが良いと思う。
兄のアンリはなあ、あいつ。
マルゴは14歳となり社交界デビューを果たす。
ますます美しく艶やかになり男たちを魅了していく。
そんなマルゴを国王であり兄であるシャルルは溺愛し修道院に入れて自分だけのものにしたいと言い出す。
性愛に生きたいと本質的に望んでいるマルゴにとってそれは恐怖だった。
2巻の始まりから物語は「血」を浴びる。
精神が不安定なシャルルは鹿狩りをしてその心臓を取り出し、血を浴びて興奮する。
コリニー提督そしてカトリックとプロテスタントの戦いの裁判でマルゴは人々が血を浴びているという恐ろしい幻想を見る。
裁判後にアンリ・ド・ギーズはマルゴに近づく。
この時アンリはふとマルゴにキスをする。
ふたりの恋が始まるが熱烈に愛するマルゴとは違いアンリ・ド・ギーズの思いは仇討にある。
カッコいい男というのはこういうものなのだろう。
そのあたりの描き方が抜群にうまいのだ。
マルゴはアンリ・ド・ギーズが好きなのだがそれでも「キスが下手」だと思う。
ギーズにとってキスは形だけのものなのだ。
一方チビで田舎者でニンニク臭いと思っていたナヴァルのアンリのほうがマルゴがうっとりするほどキスが上手い。というか心がこもっているのだろう。
そしてアンリ・ド・ギーズにはカトリーヌ・ド・クレーヴ=カトラとの確執が見え隠れしながらもマルゴと恋人であることを明言していく。
そしてマルゴの兄アンリにマルゴとの愛を誓う。
だが兄アンリの様子にマルゴは良からぬ未来を予感する。
吟遊詩人イスパハーンが諸々の人々の心を乱していくのが面白い。
そしてなんといっても服装に見惚れる。
これまでタブーとされてきた(?)いわゆる「チョーチンブルマー」を萩尾望都は果敢に描き出す。
これは相当描写に自信がなければ描けないものだと思われる。
どうしてもおかしく見えてしまうのだ。
この時期の萩尾望都作画はかなり等身が低い。
そのせいもあってバランスが良いのだとも思える。
が、様々な情報を集め考察工夫思案されたには違いない。
マルゴのシンプルなドレスの描き方にも目を奪われる。