うるわしい『王妃マルゴ』もついに七巻となってしまいました。
ネタバレします。
マルゴはナヴァルのアンリをベアルンに残しひとりフランスに戻る。
そしてサパン、今はジャックと呼ばれている我が子とついに再会する。
ジャックは父親かと思っていたアンリ三世にも失望しマルゴが近寄っても反発するのだった。
マルゴはすべてアンリ三世の仕業だと気づき改めて兄アンリに憎悪を抱く。
がアンリ三世のほうもマルゴに悪態をつきパリから追い出してしまう。
その後もジャック(サパン)を間にして兄アンリとマルゴの確執は続く。
アンリは本当に愛してほしかった人からは愛されないと嘆くが母から溺愛されデュ・ガストという忠実な愛人が長い間存在している。
求めた女性が実の妹と夫婦仲の良い人妻だという無茶を言っているだけなのでなあ。
マルゴのほうは王妃なのにもかかわらず行く当てもなくうろうろと彷徨うしかない状況となる。
やっと夫であり国王ナヴァルのアンリがいるネラックに到着しても今度は義妹カトリンに「不義の王妃」と呼ばれてしまう。
アンリは妹をたしなめマルゴを迎え入れた。
マルゴは離婚したいと言い出すが「きみには行く場所がないじゃないか」と言われ涙するしかなかった。
そんな時期マルゴの弟アランソン公が死亡する。
念願の王にもなれず結婚もできず子供も作れないまま死んでしまったのだ。
アランソン公の急死によって突如自体が急変する。
ナヴァルのアンリがフランス王位の第一継承者になったのだ。
だがここでも彼がプロテスタントであることが障壁となる。
そしてこの事態に憤激したのがカトリックリーグのアンリ・ド・ギーズだ。
彼はブルボン枢機卿(61歳)に王位第一継承者になってほしいと願い出た。パリはギーズの行動を褒めたたえ、アンリ三世は怒り狂う。
そしてマルゴは我が子サパン会いたさにギーズの力を借りたいと思いカトリックリーグに参加すると手紙を出す。
1585年3月、マルゴはすっかり心が離れてしまったナヴァルのアンリと別れひとりアジャンで復活祭を過ごす。
アジャン市民はナヴァルのアンリに反感を持っており夫から逃げてきたマルゴを歓迎した。
マルゴはギーズの訪れを心待ちにするが彼は来ない。
やむなくアジャンの城壁を厚くさせるが不安は高まっていく。
突然の爆破が起きマルゴたちは慌てて百キロ離れたカルラ城まで逃げ延びる。(単なる事故だったのだが)
マルゴを守り続けたドゥ・ビァックは彼女の愛人となる。
が、彼はアンリ三世の命令で処刑される。
マルゴは愛人ドゥ・ビァックを殺したカニャックにすがることになる。
裏では母后がナヴァルのアンリに改宗を勧めようと二十歳の美しい孫娘をマルゴの代わりに花嫁として差し出したがアンリはとどまりこれを拒否した。
それで母后はマルゴを殺すことはあきらめたのである。
今、マルゴの恋人と夫と敵である三人のアンリがフランス王位をめぐって戦っていた。
マルゴはギーズの優位を信じていたが1587年10月20日「クートラの戦い」でナヴァル軍は国王軍に大勝利を収める。
モールヴェールによってジャック(サパン)がマルゴのいるウッソン城に連れてこられる。
ジャックにサパンという名を与えマルゴは彼を見守った。
サパンさえいれば一生をウッソンで過ごしてもいいとさえ思える。
1588年12月23日、母后は体調を崩し寝込んでいた。
アンリ三世は手はずを整えアンリ・ド・ギーズ暗殺を決行した。
非常に複雑な関係と行動が描かれていくこの七巻はマルゴ自身の物語としてはかなりわびしいものだ。
頼るものもない女性であるマルゴにとって武器はその美貌だ。
不義の王妃、というより次々と男たちに身体を与えることで難関を突破していく。
その相手は王侯貴族ではない。
しかしそれでも不屈の闘志でマルゴは生きぬいていく。
彼女の幸福はサパンを愛することだけにあるのにそれは容易いことではない。
彼女を愛したはずの三人のアンリたちは誰も彼女を救おうとはしない。
愛だけを求める、といったマルゴにはその愛さえも手に取ることができない。