週刊少年ジャンプ1976年20ー25号
先日記事で書いた通り諸星大二郎シリーズ始めることにしました。
wikiに記載されている単行本リストに従って読んでいきます。
画像の本と2021年第20刷の文庫本を持っています。
(先の本を失くしたと思い購入した)
しかし文庫本では細かすぎて読めません。
しばらく映像を観ようと予定していたのですがどうしても映像に耐え切れず本に戻ります。
ネタバレします。
これが一冊の内容とは信じられないほど濃い。
とても順を追って説明するほどの根気はない。
それをやったらたぶんそれだけで膨大な資料になりそうだ。
「畜生の巻」
冒頭の描写がとても良い。
現在のうるさい演出が嫌いな人種にはこの出だしはたまらなく良い。
長野県蓼科山、黒々とした木立がざわめいている。
泣いている小さなこどものそばに背中を傷つけられうつ伏せに倒れている大人がいる。
子供の泣き声が続く。
そして10年後。利口そうな少年が長野県茅野市尖石考古館で縄文土器を見ている。
杖をついた老人が話かける。
竹内というその老人は「諏訪盆地には蛇を神聖視する集落がありその子孫は蛇の神紋を授かるという言い伝えがある」と少年に伝える。老人はなぜか少年が「武(たけし)」という名前だと知っていた。
そして武の肩には蛇の頭のような傷跡があったのだ。
武は小泉小太郎と名乗る男と知り合う。彼は武の父の友人だという。
その男は冬休みに武と共に武の父が死んだ諏訪の山へ行きそこに眠るという財宝を探し出そうとする。
そこにあの考古館であった老人が現れた。
竹内老人はふたりに「甲賀三郎の人穴を案内してやろう」と言ってひとつの石仏を指示した。
その石仏を動かすと洞穴があり三人はそこへ入っていった。
人骨が散乱するその奥に甲賀三郎らしき人骨が扉を塞ぐように存在しその扉の奥に不思議な両腕のない怪物が鎖でつながれていた。
怪物は武の肩に食いつき服が破れ肩の傷跡が痛んだ。
三人は逃げ出した。
そしてそのまま車で山陰へと進む。
竹内老人は出雲へと向かわせる。
車中で竹内老人は先ほどの怪物は建御名方(タケミナカタ)の神だったと話す。
タケミナカタは敵将建御雷(タケミカズチ)から腕をひきちぎられたのである。
「神様が?」と訝しむ武に老人は「神とは古代ではありがたいものではなく、たたりをなし破壊と死をもたらすものだったのだ」と答える。
三人が乗った車はいつしか暗黒の道を走り続けていた。
「出雲大社のオオナムチがわしらを引き寄せている」と叫ぶ。
前方に土偶のような姿の巨大なものが現れ「おまえを待っていた」と武に呼びかけた。
三人が乗った車を追いかける者がいた。
菊池と呼ばれるその男は大社の塀にぶつかって大破した車を見つける。
運転していた小泉小太郎は頭が半分になって死亡。老人は生きていた。
が、そこには武の姿はなかった。
「阿修羅の巻」
武は不思議な空間に飛ばされていた。
そこでは時間がないという。
竹内老人がオオナムチと呼んだ不思議なものは「我が存在を表現する言葉はない。しいていえば唯一にして最高の真理、永遠の無にして永遠の力すべての時間と空間を支配するブラフマンだ」と名乗りオオナムチも我が歯車のほんの一部にすぎないという。
そして武に「おまえこそ我が分身たりうるアートマンとしてこの歯車を動かす権利と力を受ける者だ」と告げその膝に食らいついた。
武は気を失いなぜか山奥の磐座の上に横たわっていた。
ひとりの阿闍梨が彼を見つけて驚くがそこへ菊池とその部下が車で到着し「その子は私たちのつれです」と呼びかけた。
菊池は武を車で運び去った。阿闍梨は磐座に彫り込まれた「災害を招ぶ」という文字を読み胸騒ぎを覚える。
武は目覚め自分を運んだ男が「菊池一彦」だと知る。
菊池一彦は武に「ブラフマンとは何だね?肩やひざの傷跡は?」と問う。
武は何も答えられない。
菊池一彦は菊池家の七十三代目の当主「菊池彦」であった。クマソの子孫である。話し合いが行われた。
阿蘇家、大神家、隼人族、緒形家、そして当主の菊池彦。
武が”聖痕”をふたつも持つことで「後継者」なのではないかとささやかれる。
菊池彦は武を連れ古墳を巡っていく。
福岡県浮羽郡日ノ岡古墳を訪れた時、石壁の円紋がぐるぐると回るように感じられ菊池彦とその部下は動けなくなってしまう。
武一人がその場から去ってしまった。
どこからか「殺せ!相手を殺せ」という声が聞こえ菊池彦は襲ってきた部下をやむなく殺す。
自分の脚を刺してなんとか逃げ出した菊池彦に一族のひとり大角隼人が駆け寄った。
ひとり去った武は幻影を観ながらもどうやら電車に乗り込んだらしい。
電車の椅子に腰かけながら武は暗黒神の使いから問われる。
「決心はついたか?」
そして馬の頭部をした使いは武に三つ目の聖痕を授ける。八つの聖痕がそろった時、武の運命は成就するという。
隼人が懸命に武の後を追う。
武は国鉄(JR)に乗り大分まで移動し国東半島で降りて山の中を歩き続けたのだ。
摩崖仏の中を通り隼人が歩き続けると武は馬頭観音の口に咬まれ逆さにぶら下がっていた。
結局順を追って書いている。
どうしても『百億の昼と千億の夜』を思い出してしまう。
宇宙の果てのようなこのSFと比べたら本作はわかりやすいのではないかとは思うのだが。