ネタバレします。
「餓鬼の巻」
菊池彦は大神美弥を連れ大角隼人が待つ国東半島へ急ぐ。
隼人は武を見失ったという。
武はとある施餓鬼寺に辿り着き倒れていたのを住職らに助けられる。
本堂に寝かせられていた武の周囲に餓鬼どもが集まるのを和尚は観る。
菊池彦は石仏の上に彫られている梵字が気にかかっていた。
そこには「ヤマタイ」と書かれていたのだ。
寺では武が目を覚ましていた。
泥酔和尚は武に馬頭観音の説明をする。
畜生道や餓鬼道に落ちた人間を救ってくれる。
珍しい憤怒の観音である。
観音の馬頭は転輪聖王の乗馬を現しているという。
この施餓鬼寺は普段は寂れているが最澄が施餓鬼供養のために開いた寺であり毎年盆と正月には大勢の僧侶が集まり施餓鬼会という法会を行うのだという。
泥酔和尚は武を見て「どうも餓鬼どもに見込まれたようだ」と恐れた。
菊池彦は大神美弥と共に探索を続けていた。
菊池彦は石仏の視線が集まるのが庚申塔だと気づき、空洞になった馬の目に指を差し入れれ岩の戸を開いた。
そこには空の柩があり神代文字が刻まれていた。
「女王卑弥呼、金印をもって暗黒神につかえ、大御水にて不老不死を得・・・」
この文字を見て大神美弥はこの権利を欲しがる。
菊池彦は金印をもらうと取引した。
隼人が菊池彦を迎えにきた。武の居場所がわかったのだ。
菊池彦は大神美弥を置いてその寺に急ぐ。
しかし寺は床が抜け落ち仏像は倒れていた。
そこへあの阿闍梨と竹内老人が到着し驚く。
隼人が菊池彦に「またあの岩屋へ?」と耳打ちしているのを竹内老人が聞きとがめる。
「まさかあの泉に手をつけなかったじゃろうな。
本作で最も恐ろしいエピソードのひとつが始まる。
ひとり残った大神美弥は神代文字の「不老不死を得」という言葉に惹かれたのだ。
美しい彼女は「不老不死」を望んでしまう。
彼女は服を脱ぎ美しい裸体を泉水に浸らせた。
急いで岩屋へ向かった老人・菊池彦らは中から出てきた醜い化け物を見る。
大神美弥だった。
人間の弱い体が不老不死になるためには肉体そのものを変えてしまうしかない。怪物はもう人間の心さえ失い菊池彦らに牙をむき唸り声をあげた。
様々なことを知る老人に菊池彦は疑念の声を出しつかみかかろうとした。
が、竹内老人は容易く菊池彦の腕をひねりあげた。
「おまえの好きなようにするがいい。だがブラフマンは、暗黒神スサノオはお前などが良いようにできるような者ではないのだ。ブラフマンに近づくことができるのはあの少年だけなのだ」
その少年「武」の周囲に餓鬼どもが集まっていた。
「地獄の巻」
大阪府羽曳野市、白鳥陵という前方後円墳の後円部が一夜にして無惨に掘り返されていた。
菊池彦はこれを武が餓鬼どもを操って行ったものと考え菊池一族の総力をかけて武を追い詰めろと命じた。
隼人はひとり竹内老人を追いかけていた。
隼人は老人を怪しみ彼を武内宿禰かと推理する。
武は餓鬼どもを大きな木箱に入れトラックに運送させていた。
菊池彦は待ち伏せし武から金印の半分を受け取る。
それは菊池彦が持つ半分と合わさりひとつになった。
途端に地鳴りがし、石の馬が現れる。
武をこれを「スサノオ」と呼んだ。
木箱から餓鬼どもが飛び出し菊池一族を襲う。その隙に武は刀を受けて逃げ出した。
それを見た菊池彦も追いかける。
武は刀を持って走ったが力尽きたのか倒れてしまう。
そこへ竹内老人が来て武の身体に印された聖痕を数えた。
諏訪で右肩、出雲で右ひざ、邪馬台国で左足。そして飛鳥奈良京都で腰に三つ。
これで六つ。あと二つだ、と老人は言う。
八つの蛇形の聖痕、これを古代人は八俣のオロチと呼び酷く怖れた。八俣のオロチ、すなわち八つの聖痕を持った人間が現れた時、暗黒神が石像ではない本物のスサノオが天空より舞い降り地上に恐るべき破壊と死をもたらす。