ガエル記

散策

『夢みる機械』諸星大二郎

1978年 サンコミックス朝日ソノラマ

なぜか手持ちの単行本には何刷りかすら記載されておらず。&表紙カバーは外れて存在せず。

 

ネタバレします。

 

夢みる機械」1974年週刊少年ジャンプ11月号掲載

絵柄が何とも言えず可愛らしい。

隣の哲学者シブさんが良い味出している。

 

無個性で何の刺激もない社会にうんざりしてドロップアウトする、というSFは多々あるだろう。

本作はいわば『マトリックス』カテゴリSFだ。勢作年順としては『マトリックス』が『夢みる機械』カテゴリともいえるが。

単調で退屈な現在に留まるか、『不思議の国のアリス』世界に飛び込んでいくか、それを選択するのは自分自身なのだという問いかけだ。

ここでは日本で多い「巻き込まれ型」ではなくあくまで選択するのは自分自身なのだとされている。

同じ未来がこれも『百億の昼千億の夜』の中で描かれていたがあちらは階級別のやや空きこまれ型に近い。

 

しかし夢を見ているだけ、というのも同意しかねるし現実にとどまってもロボットばかり・・・どちらも地獄なんだな。

 

「浸食惑星」1974年週刊少年ジャンプ9月号掲載

世界的に少子化が叫ばれこのままでは社会が衰退してしまう、と我が日本国でも問題になっているが70年代SFでは逆に人口増加が懸念されていたようで本作と同じような

「このままでは人口増加で地球は破滅する」

という題材の作品が多く作られている。

なにしろ1974年8月に「世界人口会議」が開催されている。日本もこれに参加しているのはやはり人口が多かったからだろうか。

ならば現在の少子化は計画通りの現象ということになるのか。

本作では主人公の家庭で夫婦、三人子供そして寝たきりのおじいちゃん、という構成になっているのだが現在一家庭で生まれる子供の数が二人を切っている。

周囲にもそもそも結婚もせず出産もしない男女が多く子供の数が激減していると誰もが思っているはずだ。

未来予想をするのがSFの醍醐味だが「人口爆発で住む場所もなく食糧もなくなってしまう」という懸念は「結婚育児なんてコスパもタイパも悪い。ずっと遊んでいたい。一人で生きる権利を主張してもいいではないか」という別のベクトルで勝手に解決されつつあるようだ。

それともこの若者の主張は会議によって作り出された計画なのだろうか。

その予想をしたSFもあるのだろうか。

 

諸星大二郎氏も現在のような「セックスさえめんどくさい若者たち」を思いつくのは難しかったのか。

それともあるのだろうか。

 

「奇妙なレストラン」1973年週刊漫画アクション10月増刊号掲載

青年漫画誌用なのでお洒落なタッチの作品。

やはりうまいんだなあと思わされる。

これも食料危機的な発想からくるものか。

人間を処理するのはコスパ悪い気がするんだよなあ。

 

 

ティラノサウルス号の生還」1976年週刊プレイボーイ12月号掲載

いや、ここにあった。

人口激減SF。

しかしすぐ回復したとされている。

が、地球人類は早とちりしこの人口激減から人類絶滅を危惧し対策を講じるために宇宙へ飛び出す。(早とちりにもほどがある)

その宇宙船の名前が「ティラノサウルス号」である。

なぜかこの宇宙船の記録は上層部によって抹消されていた。

全人類の意志で「最後の希望」と呼ばれ打ち上げられた「ティラノサウルス号」は宇宙のかなたへ赴きアルタイルの惑星で高度な文明を持つがおとなしい生物に対し殺戮と破壊、略奪と生体実験を行ったのだ。地球のため、人類のため、人間を救うために行ったのだと乗組員は語る。

 

そして船長は自分の遺伝子に突然変異を起こさせ生まれた子どもをアルタイル人と同じ体にしたのだ。それにより絶滅しかけた人類を再び地球にいっぱいにできると信じて。

アルタイル人とは。

無性生殖、分裂法で増加していく生命体であった。

そして人類は分裂して増えたアルタイル人が何十人も乗るティラノサウルス号を「人類に対する冒涜、人類の汚点だ」と判断し太陽系から追放すると決定する。

こうしてティラノサウルス号は再びアルタイル人を乗せて宇宙へと打ち上げられたのである。

 

後味悪すぎ問題。

おとなしいアルタイル人はこの宇宙船の中でどうなってしまったのか。

人類、鬼畜だな。知ってたけど。

なぜかコミカルに描かれているだけに鬼畜感がより酷い。

ティラノサウルスと名付けられたのは絶滅という理由だろうか。

 

「コッシー譚」1974年パピヨン5月号掲載

パピヨン」てなに?と思って検索。

性コミック「パピヨン」という双葉社漫画誌があったと知る。

漫画アクション増刊号という位置づけ?

 

で「コッシー」とは何かというと「コーヒーの中に棲んでいるからコッシー」なのだ。

ネス湖に棲むのがネッシーだからだ。

で、最後、コッシーはネスカフェの中に棲むことになりネッシーになる、という。

女性誌掲載なので漫画アクション掲載の「奇妙なレストラン」よりファンシーな感じで描かれている。やはり天才。

 

諸星氏は後にも女性マンガを描いてくれているがとても良いのだよなあ。

ネッシーにもリボンついててかわいい。

・・・・若干、性的な妄想を感じなくもないがwwwそういう妄想はヤメヤメ