第四話「闇の中の仮面の顔」1978年「書き下ろし」
この作品の中に「ルングワンダルング」という言葉が出てきて「?」となったのですが検索して「リングワンダリング」だと判る。
単なる印刷ミスなのか、作者の間違いだったのか、別の本では訂正されているのか、それともそういう言い方もあるのかわからないが、視界が限られた場所でぐるぐる回ってしまう現象のことである。
本作では狩猟中濃霧に迷った男が同じ場所をぐるぐる巡ってしまったという現象が描かれる。
有名な話では『八甲田山』で吹雪の中軍隊が同じ場所をぐるぐると回り続けてしまうものがある。
私は「リングワンダリング」という言葉そのものを知らなかったので(見落としてた)またひとつ言葉を知って「読んでよかった」とほくそ笑んでいる。
が、作品はそんな愉快な話ではない。
リングワンダリングという不気味な体験をした猟銃男は出会い頭にやむを得ないとはいえ奇妙な仮面をつけた髭面の男を撃ち殺してしまうのだ。
その男の父親らしき男が意味不明の言葉と「トコイ、トコイ」といういう言葉を発しながら息子の仇に槍を投げつけてきた。
まるで原始時代のような男たちの格好と言い槍といいすべてが意味不明のまま迷った猟銃男は命からがら逃げのびる。
稗田礼二郎にその話をした猟銃男だが「私は妙な夢を見るようになってしまったのです」と打ち明ける。
猟銃男は逃げのびたものの今度は夢の中で殺した髭男の父親から呪いの言葉をかけられ続けるのだ。
その父親は涙の跡がついたような仮面つけて「トコトコイ」と言い続けるのだ。
やがて猟銃男は死んだという。
稗田礼二郎は考えた。
濃霧の中で猟銃男は場所だけではなく時の「リングワンダリング」に迷い込んだのだ。
時を越えて息子を殺された父親は呪いの言葉を唱え続け彼自身も力を使い果たし死んだのである。
第5話「死人帰り」1974年39-41号「週刊少年ジャンプ」
この話で思い出すのはやはり『ペットセメタリー』だろうか。
もしくは『猿の手』だろうか。
人は愛する人や動物が死んでしまった時なんとかして生き返らせられないだろうか、と考えてしまうものだろう。
しかし自然の掟に背くとそれは恐ろしい結果を招いてしまう。
本作では「反魂の術」という秘術で死者を蘇らせる。だが心は蘇らないのだ。
「生物都市」1974年31号「週刊少年ジャンプ」
第7回(昭和49年上期)手塚賞入選作品。
これも諸星大二郎の代表作であり生物と機械そしてみんな溶け合ってしまうというとんでもないユートピアを生み出してしまった。
なんだろう。みんな溶け合ってしまえばユートピアになる、というのは他の人はあまり考えない気もするのだが、いや本当は望んでいるのか・・・かなり気色悪いと思ってしまうのだがどうなんだろう。
「もういい・・・もう・・・きかなくてもわかる・・・」
諸星氏の望まぬユーモア、笑いは無二。
これを審査した先生方の驚きはどんなものだったのか。
観てみたい。