2009年4月「KCデラックス」
wiki記載で記事を進行しようとしてやや困惑する事態が発生しました。「妖怪ハンターシリーズ」の中にこの単行本が記載されていなかったのです。
が、「妖怪ハンター」リンク先のエピソード一覧の下に単行本の記載がありそこにはちゃんと記されていました。
ううむ。全部目を通さなかったために起きた困惑でした。いかんいかん。
(個人的事件でなんのことかよくわからない説明となりました)
ネタバレします。
「それは時には少女となりて」2004年9月号「アフタヌーン」
大島&渚シリーズ。
大島君が海から来た裸の少女に魅入られてしまう。
海岸にある防塁の向こう側に見知らぬ少女が顔だけを出して大島君に声をかける。
「そっち側に行きたいの。手を貸して」
横から回ってくればいいだろと言う大島に少女は「ここを乗り越えたいのよ」と言いつのる。
困惑しながらも大島君は少女の手を取り防塁を乗り越えさせた。
少女は全裸だった。大島は驚き持っていたパーカーを貸してあげたのだ。
あっけらかんとした少女はその服を着て大島の家にいさせて、と言い出す。
そして久美と名乗るその少女は大島の部屋に入り込み居座ってしまったのだ。
変な説明しかしない奇妙な少女、久美をやむなく受け入れてしまう大島君。
しかし魚を丸ごと、たぶんウロコ付きで丸かじりするのは尋常ではないと思わないだろうか。
この時すでに大島君の心はこの少女に取り込まれつつあったのだろう。
これまでこのコンビはいつも渚が何かにとり憑かれて大島君が救うという展開でできていたが今回とり憑かれたのは大島君で渚がそれを果敢に救い出しに行く。
久美とこもっていた大島潮の部屋はなぜか海水で満たされ渚がそのドアをこじ開けた時海水が流れ出す。
気を失っていた大島君に渚はマウストゥマウスで人工呼吸して蘇らせる。
そして渚は稗田礼二郎に手紙で相談したのであった。
手紙・・・2004年執筆当時メール的なものはまだ普及していなかったのか、こんなややこしい話はまだ手紙のほうが書きやすかったのか?どうしてもメールのほうが早く確実に会話できるよね、と考えてしまうようになった。
手紙だと逆に読まれなさそうな気さえする。
まあ、中にコピーを入れておく、と言う部分で手紙を選んだのかもしれない。
ついに久美は正体を大島の眼前に表す。
直後、渚が部屋に来て大島を海岸へと連れ出した。
ところがその直後またもや渚が現れ事態を知って慌てて海岸へと向かう。
最初の渚は久美・・・海から来たモノだったのだ。
最初に出会った防塁の向こう側に登った少女・・・海のモノは大島の手をつかんで引きこもうとする。
渚はぼんやりと海の少女に引きずられようとしている大島を抱きしめその唇にキスをした。
ハッと目覚める大島君。
海の少女は手を放し消えてしまった。
たぶん大島君の気持ちが少女から渚に移ってしまったのではないか、と考える。
「帰っていったんだな」とつぶやく大島君の手を振り払い渚はぷりぷりと怒りだす。
「お、おい、渚待てよ」大島君は彼女を追いかける。
昔だったらこういう展開は「尻に敷かれる」と表現していたがさすがに昨今ではそんな感想は持たれないだろう。
ほのぼのとした(?)物語である。
「書き損じのある妖怪絵巻」2007年「妖怪変化 京極トリビュート」
つまり京極夏彦作品のトリビュートとして依頼され描いた作品なのだそうだ。
が、京極氏のパロディ部分は削除されているという。ちょっと見てみたかった。
竹沢喜左衛門という名家に伝わる絵巻を稗田礼二郎が紐解く。
妖怪絵巻と思われるものを稗田氏の知り合いがオークションで手に入れそれを鑑定家に見せているところから物語が始まる。
鑑定家は「そっくりのものを以前見たことがある」と告げ稗田氏と共にその屋敷を訪れ同じ絵巻を見せてもらう。
稗田礼二郎が謎だと思ったのは絵巻の最後にまるで書き損じのように何かを描いた上を墨で消し潰したかのようなものまでそっくりに描かれていることだった。
これがもし書き損じであればもうひとつの絵巻まで同じなのはおかしい。
つまりこれは書き損じではなく「描いて消す」という表現なのだ。
墨の下には格子のようなものが描かれているのだけがうっすらとわかる。
またこの絵巻は七代目の三男竹沢奇三郎という人物が描いたのだがその七代目という人物は残酷な人格で人々から嫌悪されていたのだ。
奇三郎は絵の勉強をして後、父を妖怪に模して描いたのではないかと稗田は考えたのである。そして九代目に手ほどきをしその写しを描かせたという次第ではないかと考えられる。オリジナルが外へ出され写しが竹沢家に残ったのだ。
今回の語り手はその家の跡継ぎである少年である。
彼は将来喜左衛門の名を受け継ぐことになる。
それまで屋敷の中にある六番目の蔵は決して覗いてはいけないと命じられている。
現在の喜左衛門である父は何かを知っているようだがそれをまだ息子には伝えていない。
彼が喜左衛門を継ぐ時にそれもまた受け継がれるのだろう。
しかし息子喜裕はその禁を破ってしまう。
彼は六番目の蔵を覗いてしまう。
そこには格子がありその中には・・・・。
名家と言うしがらみの物語である。