ネタバレします。
【第11回 仙境に処女 天意を図り 村裏に凶徒 良民を虐ぐ】
この部分も微妙に描きかえられている。
通臂公によって竜児女がどんな修行をしてきたかが語られる。
竜児女は悟空が力を持った時に得られる金箍棒を見せる。それは岩から生えているようで今の悟空の力では抜くことができない。
竜児女が持つのは銀箍棒でありそれも彼女が力を持った時に得られたのだ。
しかし悟空は斉天大聖などただの妖怪であり人々や野人までも見境なく食ってしまったと疑問を持っていた。
反抗する悟空の前に岩壁の斉天大聖が「悟空」と呼ばわった。
悟空は脅威を感じる。
白雲洞の中には外国のものらしい読めない文字も書かれていた。
天竺の文字ではないかと竜児女の師匠は言ったという。
竜児女は壺を覗いて金角銀角の様子を見た。彼らが麓の村へ向かっている。
竜児女は悟空を連れ村へと急いだ。
デジタル版2巻に入ります。
双葉社版では2巻の中頃。
【第12回 竜女 党を率いて唐軍を打ち 悟空 子女を負いて洞へ還る】
竜児女は村を襲う金角銀角を止め李建成の兵站部隊を狙えと命じる。
竜児女は先頭に立ち攻撃をかけた。
意外にあっけなく山賊軍はこれを打ち負かし食糧を手に入れた。意気揚々、祝杯をあげようと金角たちは竜児女を誘うが竜児女はなぜか急ぎ五行山に帰る。
途中どうしたことか竜児女の二姉が倒れていたのを見過ごせず連れ帰った。
二姉の世話を悟空に任せ竜児女は慌てて奥へ入ってしまう。
通臂公はそれを知り「女の宿命じゃ」とつぶやく。
竜児女は月経が始まっていたのだ。
月に一度のこの時だけ竜児女は斉天玄女の力を失ってしまうのだ。
早く力を取り戻すためには白雲洞の奥に漂う霊気を浴びねばならない。
このことだけが竜児女の女の宿命であり弱点だった。
【第13回 来光寺に少女 僧を訪ね 相州城に老婆 財を貪る】
竜児女と悟空は会話する。
月経があるため力を失いたくない竜児女はこの白雲洞から離れることができないのだ。
紅孩児と共に旅立つことができなかったのはそのためでもある。
幼い頃長姉から捨てられた竜児女は大仙について修行した。
恋をし結婚をし子を生み育てる、そういう平凡な女の幸せは無縁のものだ。
そう誓って修行し斉天玄女となった竜児女だが月経だけはどうしようもないのだ。
更に修行を積み白雲洞の霊気がなくとも斉天玄女でありうる存在になりたいと願っていた。
さて力を取り戻した竜児女は再び山賊の頭となって暴れまわる。
山賊手下は隠れている僧侶を引きずり出した。
悟空は驚く。
それはあの時自分に祈ってくれた僧侶であった。
山賊たちは殺そうとしたが玄奘が「相州に天竺から来た偉い僧がおられると聞き足をのばした次第です」と言うのを聞いて劉児女がこれを止めた。
不服そうな山賊を押しとどめ竜児女は玄奘にその僧侶の場所を案内させる。
ふたりが寺内で暴れまわるのを聞き天竺の迦菩提師は現れ竜児女に連れられ外へ出た。
外で待っていた玄奘はいきなり山賊手下に殴られ気を失う。
その間に山賊らは寺を焼き金目のものを運び出した。
竜児女が天竺僧を白雲洞に連れて行こうとするのを通臂公が嫌がる。
迦菩提師は通臂公を化け物と呼び祈った。
途端に通臂公は苦しみだし妖怪の姿を現し泣き叫んで逃げ出した。
迦菩提師は竜児女が指す壁の文字を訳した。
「天竺に猿神あり地煞の者をして闘戦勝者となさしむ」
これに竜児女は愕然となる。
天竺の猿神なんて、どうしろというのか。
悟空は「やはり斉天大聖はただの化け物だ。おれたちは戦っても災いをもたらすだけなんだ」と竜児女に詰め寄った。
しかし竜児女は「戦いの勝者になると書いてあるじゃない」と言い返す。
が遠くを見ることができる壺を覗いても地煞のひとりである劉黒闥はまたも敗走していた。
迦菩提師は「今のままではおまえはおまえの分身に滅ぼされよう」と告げる。
その頃竜児女の長姉はまたしても竜児女を裏切っていた。
唐軍の李元吉に竜児女の棲み処を教えていたのだ。
「敵は平頂山だ」
【第14回 白雲まさに去って道通じんとし 虚影まさに動いて闇ますます深し】
悟空は竜児女ともとで剣の腕を上げた。
またも竜児女の月経が始まる。
悟空は相変わらず戦うことに消極的で竜児女を苛立たせた。
外に出ると迦菩提師が「霧が晴れ平頂山が良く見える」と言う。
一年の春先に数日谷の霧が晴れるのだ。
谷には霊気がなく竜児女は弱っていた。
悟空が壺を覗くと李元吉が村人を地に埋め馬で蹴らせるという酷い仕打ちを行っていた。
と、突然竜児女の二姉が悟空を壺の中に突き落とす。
斉天大聖の声が悟空に届き悟空は先ほど壺の中で見た場所に転がり落ちた。
悟空は李元吉の部下に捕らえられ馬で引かれたが馬で蹴られる村人を現実に見て怒り狂う。
自分を引いていた馬を投げ飛ばし剣を取った。
【悟空 大いに相州城を鬧がし 銀角 策もて竜児女を招く】
悟空は怒りのままに我を忘れ暴れまわる。
李元吉の部下を殺した後はどこかへと走り去っていく。
竜児女は力を取り戻せずにいた。
斉天大聖が現れ竜児女に「わしに必要なのはお前達人間の何千何万と言う民衆の血が必要なのだ」と叫ぶ。
斉天大聖をつなぎとめている鎖を断ち切るにはもっともっと多くの人間の怨みが無念さが必要なのだ。おまえたちの血を啜りおまえたちの肉を食らってわしはさらに強大になる。そしておまえたちの怨みを晴らすのだ。
これを聞いた竜児女は怖れ逃げ出す。
そのあいだも悟空は狂ったまま走り続け殺し続けた。
いまや悟空を抑えきれる者はいなかった。
力を失ったまま竜児女は山を下りていた。
そして彼女は銀角の罠にはまったのだ。
とある辻占い師の前で悟空は我を取り戻した。
手には自分が斬り落とした生首があり放り出す。
壁には竜児女の手配書きが貼られていた。「僧ふたりを誘拐し」とある。
「占ってみてやろう」という占い師を制し悟空はとぼとぼと歩き出した。
占い師は「不思議じゃ。人間の卦であって人間の卦ではない」とひとりごちる。
悟空が落としていった生首を見て「やれやれ、わしも長安へでも行くか」とつぶやく。