盤糸嶺の章
ネタバレします。
【第37回 皇帝と称すといえども 身に仁なく 民を救わんとせば 義守り難し】
明けて貞観元年、この年の冬突厥の地には大雪が降りたくさんの家畜が死ぬ。
人々は飢え長城を越えて村々を襲った。
冬が過ぎても中国全土を干ばつが襲い多くの人々が飢えたのであった。
さてその中国全土でいまだ唐に平定されていない者がひとり残っておりそれが夏州の梁師都であった。
とはいえその梁師都も突厥の支援を受けてかろうじて持ちこたえている状態だったのだ。
李世民はこの梁師都を一日も早く降すようにと望んでいた。
ところがここに悟空は関わってくるのである。
どうやら何かの恩を受けて悟空はしばらく梁師都の下で働いていたようだが梁師都に見切りをつけて悟空はまたもそこから旅立ってしまう。
その後を梁師都の娘婿である九頭駙馬が追いかけていく。
【第38回 玄奘 志を守りて天竺を目指し 悟空夷を打ちて少年を援く】
ついに玄奘は天竺へと出立する。
その前に彼は決意するきっかけとなった易者袁守誠を訪ねる。
袁守誠は餞別代りと易を立て「あなたは出発する時はひとりで老いぼれの痩せ馬に乗っていくでしょう。ですが天竺には四人でつくでしょう」と伝える。
そして玄奘の後ろ姿を見ながら「その三人のうちひとつは凶だ」とつぶやく。
が、玄奘の旅立ちは若い馬に乗って供も一人いた。袁先生の易は外れたなと玄奘は思う。
玄奘の天竺行きは国法に背いた独断であった。
悟空は突厥に追われるひとりの少年を救う。
巽二郎というその少年は父を捜して「盤糸嶺」という山へ行こうとしていた。
黄花村の百姓の彼の父はイナゴの大群を見て「おかしい」と思い発生源と思われる盤糸嶺を調べにいったというのだ。
ここで悟空を追いかけている九頭駙馬が近まってくるのだが同じく悟空を捜している紅孩児と鉢合わせして争うことになってしまう。
が、突厥の集団がやってくるのに気づいた紅孩児はすばやく逃げ出す。
一方悟空は巽二郎と共に険しい山道を進んでいたが突如美しい花畑に出た。
腹がすいた悟空は近くの林で蜂の巣を見つけて火をつけ燻りだそうとするが林じゅう蜂の巣だらけでふたりは蜂に追われる。
そこへひとりの少女が現れ竪琴を弾きながら蜂を操って追い払ってしまう。
その少女は二郎と悟空を見比べ悟空に手をかけ「決めた。あんたがいいわ」と言い「蝗婆婆さまに会わせてあげる」とふたりを引き連れていく。
【第39回 盤糸洞の七情 陽を争い 蝗婆婆の蚱もう 陰に光る】
蜂を操る少女蜜娘は盤糸洞と書かれた見事な屋敷にふたりを連れて行く。
「さっきの決めた、というのはなんのことだ?」と言う悟空に蜜娘は「この山には男がいないの。だからあたしのお婿さんに決めたのよ」と答える。
蜜娘の言った通り六人の少女たちが現れそれぞれ虫の名前がついていた。その名の通りの虫を操るのだという。
彼女たちは七仙姑といい姉妹のようなものだと説明した。七姉妹は悟空たちを引っ張り合う。
そして蝗婆婆はイナゴを操るのだと知る。
ふたりは七姉妹にからかわれながらこの場所の様子を知っていく。
蝗婆婆のところへは通臂公が鈴を返しに訪ねてきていた。
さしもの通臂公も七人姉妹には音を上げる。
蝗婆婆は悟空が斉天大聖だと気づき悟空だけを自室に招いた。
蝗婆婆はそこで多くのイナゴそして究極のイナゴを育てていた。
それは地上で最も凶悪なイナゴになるはずなのだという。
一匹だけで世界中の穀物を全滅させてしまう「平天蝗」となるのだ。
すべては毘藍婆菩薩さまの思し召しだと語る。
その夜皆が寝静まった時、二郎はひとり起き上がって父の行方を捜そうと屋敷内を調べまわる。
そして扉を開けた時あの「平天蝗」が金網を食い破って外へと飛び出していったのだった。