ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その9

ネタバレします。

【第40回 飛蝗ふたたび興りて 山沢に群れ 道人ひとたび説いて 村民を動かす】

 

究極のイナゴ「平天蝗」は飛び出した後、悟空の胸に留まる。

そこへ蜜娘が悟空を夜這いに来たのであった。

悟空の胸に留まったイナゴを追い払いキスしようとしているところを蜡娘によって二郎と間違われ逆にキスされてしまう。

さらに別の娘たちも悟空の部屋に入り込んできて大騒ぎとなる。

これを蝗婆婆が怒って静めてしまう。

 

この間に平天蝗は外へと出てしまった。

悟空は騒ぎを逃れ年長の螞娘の部屋に入っていた。

彼女が戻ってくると悟空は「なぜ蝗婆婆が恐ろしい飛蝗を作る事に熱中しているかを問う。

しかしそれは螞娘の知らぬことであった。

悟空は落ち着いた螞娘に「あの子たちがうるさい時はまた来てもいいか」と聞く。

「良いけど・・・私も女よ」と螞娘は答え悟空は「おやすみ」と声をかけた。

 

次の日、あの金色のバッタ「平天蝗」はイナゴの大群を率いてまたも農村を襲いだした。だが百眼道人が平天蝗を見つけこのカラクリを知る。

 

盤糸洞では蝗婆婆が平天蝗がいなくなったのに気づき大騒ぎしていた。

螞娘は「落ち着いて。あの鈴があるじゃありませんの」と声をかける。

「そうじゃった」

それは紫金鈴といい先日通臂公が返しに来たあの鈴だった。

金輪に三つの鈴がついており人の耳には聞こえない音で飛蝗たちを操る。

三つの鈴はそれぞれ「飛蝗を呼ぶ蝗来鈴」「飛蝗を移動させる蝗飛鈴」「飛蝗を自滅させる蝗死鈴」となっていて使わない鈴には綿を詰めて振るのである。

今、蝗婆婆は蝗来鈴を振って彼らを戻そうとしていた。

が、二郎がこれを見て「やはり父の思った通り。では父はここに来たのではないですか?」と問いただす。

しかし蝗婆婆はこれを嫌がり追いやった。

 

農村では百眼道人が百姓たちに「この飛蝗は盤糸嶺の蝗婆婆という女怪がよこしたもの。皆で武器を取り盤糸嶺の女怪たちを殺すのだ」と宣言した。

 

蝗婆婆のところへ平天蝗とその影響で飛蝗となったバッタたちが戻ってきた。

蝗婆婆は平天蝗が悟空の胸に留まったことで斉天大聖の力を授かったのだという。そして悟空に「こいつはおまえの兄弟だよ」と告げる。

これを嫌った悟空は平天蝗を殺そうと金箍棒を振り回した。

が平天蝗はまた逃げてしまう。

通臂公は「紫雲山へまっすぐ飛んで行った」と知らせて蝗婆婆を安心させた。

この平天蝗探しの途中で二郎は山の中で男ものの靴を見つけ斑娘に問う。

やむなく斑娘はやってきた男の墓を見せたのだった。

 

一方農村の百眼道人を訪ねてきた男がいた。

「久しぶりだな、他目怪」

 

 

【第41回 黄花観に仙 旧知に遇い 高老荘に僧 喬って鬼を捉う】

悟空が蜜娘と語らっている時、ふいに3人の見知らぬ男たちが現れふたりを殺すが一人逃がしてしまう。

彼らは百眼道人の弟子であった。

蝗婆婆が数年前、百眼道人から「イナゴを利用して農村から貢物を脅し取ろう」と言う策略を持ち掛けられ断ったことがありすぐに判ったのである。

 

さて前回の終り、百眼道人のもとに訪れたのは九頭駙馬であった。

駙馬は百眼道人と昔荒稼ぎをした仲でその時の名前「多目怪」で呼んだのだ。

 

悟空は夜中通臂公によって起こされてしまう。

目が覚めた悟空は温泉があると思い出しそこへ行ってみる。

そこには二郎の服が置かれていた。

悟空が中にはいると温泉に二郎の姿を見た。

その裸体は女性だったのだ。

 

一旦物語はあの玄奘のほうへと移る。

玄奘は孝達という善良な老僧と秦州までの旅を共にしていた。

彼は長安での学問を終え故郷に戻ろうとしていたのである。

ところが日が暮れ秦州に入る前に城門が閉じてしまった。

やむなく孝達は近くの知り合いの家に泊めてもらおうと考えた。

ここであの猪八戒である褚悟能登場。

屋敷の主人高太公の三女に物の怪がとり憑いたという騒ぎになっていたのだが、これが悟能の祈祷でぴたりと収まっていた。他の者の祈祷では効かないというのだ。

怠け者で大食らいの悟能が、と孝達は驚く。

実はこれは褚悟能と三女の芝居でふたりは皆を騙して毎晩まぐわっていたのである。

孝達は悟能の先輩でこんなことが知られたら寺のメンツにかかわると悟能を追い出し太公には「もう二度と娘さんには物の怪は憑きませんよ」と言って感謝された。

 

玄奘は何もわからず仕舞いであった。

 

 

【第42回 八足の怪 山中に虫を捕らえ 百脚の魔 温泉に娘を追う】

蝗婆婆は紫雲山にかかる雲が気になり出かける。

これを悟空も追った。

雲と見えたのは虫だった。

 

娘たちは通臂公が持ってきた鶏たちで大わらわだった。

少し離れた場所に鶏小屋を作ることにして洞を出た。

 

悟空は蝗婆婆が行く紫雲山にまでは行かず蜜娘と戻ろうとしたが蜜蜂たちの様子がおかしいという。森の茂みになにかいるらしい。

崖の上を見ると悟空が乗ってきた馬がいた。

悟空は蜜娘を残して馬に近づく。

馬は取り戻したが今度は蜜娘がいなくなる。

蜜娘は百眼道人の手先につかまっていた。

しかも張八足の使う蜘蛛が盤糸洞の周囲一面に巣を張って娘たちが放った虫をみな捕まえていたのだ。

 

悟空はいきなりタカに襲われしかも前方には数人の突厥が待ち構えていた。

悟空は猛然と突き進む。

 

一方鶏小屋を作りにきた娘たちはついでに温泉に入る。

忘れ物を取りに来た二郎を引きずり込もうとして二郎が女であるとわかる。

二郎は慌てて逃げ出すが周囲にはムカデがうようよとしていた。

娘たちが入っている温泉にもムカデが現れる。いつもなら虫を呼ぶ娘たちも服を脱いでしまったため呼ぶための笛が手元にない。

 

悟空は突厥が放った矢を避けそのまま蜜娘をさらって逃げている男たちを襲った。

蜜娘を助け蜜蜂たちに守らせた。

その様子を見ていたのが九頭駙馬であった。

 

温泉では三人の娘たちがムカデに襲われていた。

戻ってきた二郎は温泉を囲う塀の中に連れてきた鶏たちを放り出した。

鶏たちは次々とムカデをついばんでいく。

斑娘は急いで服を着て温泉から出ようとしたが服の中にムカデが一匹まだいたのである。

二郎は急いで彼女を抱き上げたが斑娘はムカデの猛毒で死んでしまう。

 

盤糸洞に残っていた螞娘 蜢娘 蜻娘。

様子を見てくると言った蜢娘は門を出た途端飛んできた矢で死んでしまう。

それを機にいっせいに百眼道人の弟子たちが盤糸洞に駆け寄った。