ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その13

ネタバレします。

 

【第54回 黄風大王 疊ねて道を遮り 河西回廊 なお路険し】

通臂公は悟能におぶさり玄奘と旅を続ける。

通臂公は黄風大王の一味を見つけ危険を知らせるが玄奘の天竺行きの決意は揺るがない。

悟空、二娘を加えた旅芸人一行も悟空の護衛で進み続けた。

黄砂が晴れ烏鞘嶺を越えると道はいよいよ祁連山脈とゴビ(砂漠)(ゴビって砂漠って意味なんだよね)に挟まれた細長い地帯に入る。これが涼州から甘州、粛州を通って西域に通じる河西回廊である。

(この地図はウェブ上で拾ったもの。本作に収録されてはおらず)

 

河西回廊と聞いただけでわくわくするのは何故。

沙州(敦煌)わくわく。

そしてその先は西域となる。

胡人と商人と遊牧民の国だ。わくわく。

 

旅芸人たちはここまで来たら黄風大王の盗賊一味もいないと安心したが悟空は「待ち伏せしている」と注意する。

果たして行方に待ち構えていた。

旅芸人一行の切り札は悟空が捕らえた黄風大王の息子小旋風だ。

親父の顔を見て「助けてくれ」と喚いたが大王はなぜか去っていく。

それは彼方から官軍の騎馬軍団が近づいてきていたからだった。

悟空は慌てて旅芸人の馬車に隠れる。

官軍のリーダーは李勣だった。

 

さて玄奘一行は涼州にたどり着く。

 

【第55回 涼州城に唐そう足を止め 天竺楼に悟空 敵を避く】

涼州の新しい都督は李大亮という男だった。蘭州手前の旅籠で八戒と騒ぎを起こした女の亭主である。

 

玄奘はすぐにも先を急ぎたかったが突厥が河西に侵入し軍隊が出動して街道が封鎖される現状ではそれはかなわないとわかった。

しかし悟能は落ち込む玄奘涼州にある「天竺楼」という遊郭につれていく。

その途中で旅芸人がいた。

二娘は投げた瓦を矢で射落としてみせる。

その破片が悟能にあたったのを見て悟空は後をつける。

 

「天竺楼」が遊郭だと知って玄奘は怒るがその店の主人が天竺人だと聞き是非会いたいと願い出た。

悟空も後から入り込む。

 

玄奘は店の主人に会うが実際は天竺人とはいってもウイグルのクチャ出身で天竺のことは知らないという。

しかし主人は店には様々な人が来るので天竺人が来店したらお知らせしましょうと約束してくれた。

 

同じ頃悟空は旅芸人の車に戻っていた。皆は都督に呼ばれて出かけていたが竺達羅という天竺人が留守居をしていた。

悟空の問いに彼は答え幼い時の記憶しかないが父親に連れられ祭礼に連れていかれた。

岩窟寺院の中に巨大な猿の姿をした神が祭られていた、と悟空に語る。

「猿の神」と聞き悟空は驚く。

 

さて黄風大王は偵察をだして状況を把握し次に黄砂が吹いた時、涼州を血の海にしてくれると豪語する。

 

さて『西遊妖猿伝 大唐篇』デジタル版第五巻終了。

西遊妖猿伝双葉社版単行本巻之八もちょうどここで終了です。

 

【第56回 李都督 将に唐僧を返さんとし 孫行者 計りて大鼎を割る】

やがて涼州に駐屯していた李勣の軍隊は南下した突厥に備えるべく出発した。

黄袍は李都督と高台の上で語らった。

その他課題は隋末の群雄のひとり李軌が天から玉女が降臨するのを願って作ったという。そのために人民は酷使された。ゆえに李軌もまた滅んだのである。

語らううちに高台が崩れ李都督は落ちそうになったところを黄袍に救われる。

崩れたその場所には大きな鼎が埋め込まれていたのだ。

都督はいずれ潰して鐘楼の鐘にでもするまで庭に転がしておけ、と命じる。

 

悟空は涼州の寺に赴き玄奘が講義を行っている場に出会う。

そこには通臂公もいた。

悟空は玄奘に対し再び天竺のことを問う。

そこへ恵岸行者も現れた。

 

玄奘は都督に呼び出され長安に戻らなければ強制送還されると告げられる。

それでも決意は変わらぬ玄奘に恵威法師は出入りする商人にまぎれて涼州を出るようにと助言する。

 

通臂公は恵岸行者を襲い「悟空に近づくな」と脅した。

悟空は天竺楼に行き黄袍の愛人である遊女と話す。

悟空はとにかく女性にもてる。

もてるが悟空がまったく興味をもたないのがミソなのだが興味を持たないとはいってもただちに毛嫌いはしないという、一番もてそうな奴である。

 

悟空は旅芸人に連れられ李都督邸へ行き芸を見せることになる。

悟空は金箍棒を振るう芸を見せるが「そのくらいはわしの部下にもできる」と言われ庭にあった巨大鼎を一撃で割ってしまう。

そして芸人たちに「もうお前達といるのはまっぴらだ」と言い捨てて出て行く。

二娘はなにかわけがあると思い悟空の後を追いかけた。