ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その16

ネタバレします。

【第60回 黄風の中 大王刀を振るい 砂塵の内 悟空 谷を走る】

これまでと違う悟空。

明確に自分がどうするべきかを考えながら戦い始める。

旅芸人たちは逃げ出す。

玄奘もその中にいる。

しかし黄風大王は旅芸人たちを見逃したわけではなく殺す手段を取っていた。

それに気づいた二娘たちは一行を止める。

大王の手下たちに追われ散り散りに逃げる。

玄奘の行く先には紅孩児がいた。

しかしここでも現れる恵岸行者。

そして悟空の乗る馬が阻まれ悟空は振り落とされる。

 

【第61回 唐僧を護りて行者 鬼を放ち 大聖を念じて悟空 棒を振るう】

落馬した悟空だが信念は揺るがない。

その時、紅孩児と争っていた恵岸行者の胸から悟空に頼まれていた壺が飛び出し落ちて割れる。

中から李軌と玉女の怨霊がまろび出る。

と、悟空の金環が反応した。

またあちこちから李軌によって殺された死霊たちが起き上がってきた。

悟空の金環はますます震えだす。

斉天大聖。わしらの怨みを晴らせ。

悟空は斉天大聖が自分を闇の中に引っ張り込んでいると感じた。

走りながら大王の一味を殺しまわる。

が、目の前に旅芸人たちの姿を見て怯む。

このまま大聖にとらえられたら・・・。

悟空は自分の中にいる斉天大聖を引き出す、だけでなくただ引き出してしまうと守るべき人達まで危害を加えてしまうのを恐れた。

 

【第62回 黄風定めて河西 安けらく 西土を望み手回廊 道遠し】

斉天大聖が近まっていくのを感じ悟空は戸惑う。

 

そんな悟空を見て二娘は怖れた。幽霊たちが悟空を狂わせている。

「お坊様、あの幽霊たちを追い払ってください」

二娘のその願いは悟空の思惑とはずれたものだったのだが同時に二娘の思いが偶然悟空を救うことになる。

玄奘は一心に祈りだした。

 

皆の心配をすることで大聖の力をそのまま受け入れることを躊躇っていた悟空の耳に玄奘の祈りの声が届く。

この声はおれを引き戻す。

激しい戦闘の中で小さな声がはっきりと悟空に聞こえた。

大聖がおれを闇に引き込み玄奘の声がおれを光の中に引き戻す。

その中間に上手く身を置いて、と悟空は自分自身をコントロールしながら戦い続けた。

そのバランスの中で悟空は一撃のもとに黄風大王を打ち倒したのだ。

 

黄砂に乗り李軌と玉女の怨霊と多くの死霊が飛んできた。

恵岸行者もまた祈る、と皆が集まっていた小さな仏塔が割れその中に怨霊たちが吸い込まれる。

悟空はなおも残った山賊たちを殺し続けた。

 

その時、軍団が走り込んできた。

李勣軍だった。

 

悟空に落馬させられた黄風大王は二娘を捕まえその顔に刀を当て脅した。

「その棒を捨てろ。娘を殺すぞ」

悟空は金箍棒を無造作に手放し、次の瞬間走りこんで棒を手に取り大王の刀を叩き割った。

しかし大王は片腕で二娘を掴んだまま放さない。

悟空はひるむことなく金箍棒を大王の胸にねじ込んだ。

今度こそ黄風大王は死んだ。

そのそばに二娘は気を失い倒れた。

 

天竺人の竺達羅が馬を引いて悟空のもとへ走ってきた。

悟空はその馬にまたがり「天竺へ行く」と告げる。

そして二娘を頼み旅立った。

 

デジタル版ではここで次の章に行くだけですが、双葉社版単行本巻之九ではここまでで「第一部 大唐篇 完」となって終わります。

詳しい経緯は知りませんがwikiによると双葉社では「月刊スーパーアクション」1983年6月号から1987年9月号まで「コミックアクションキャラクター」1988年5月27日号から1989年4月28日号まで、となっていますのでここまでの分なのかな?と思っています。

この後、潮出版社コミックトム」1992年3月号から連載再開となるまでおよそ3年ほどの中断があったということですかね。

 

これから『西遊妖猿伝』を読んでいこうと思う人は諸星氏が改変された新版だけで充分だと思いますが私はもともと双葉社版単行本をほとんど持っていたのであえて並走してみました。

しかし諸星氏の改変にさらに敬意を持ったのも事実です。

昔はとにかく女性が不幸に死んでいくのを娯楽としていたのです。

そこはやはり作者の望むところではなかったのではないでしょうか。

 

 

ではここからは双葉社版単行本を離れデジタル版のみの進行となります。

 

 

人参果の章

 

『第63回 人煙絶えて孤僧 道を失い 険路窮まりて餓狼 客を追う】

 

祁連山を抜け玄奘はひとり旅を続けていた。

悟能、道整に荷物を預けたままだったため玄奘は困惑していた。

しかしその道整も悟能に置いてきぼりにされ途方に暮れていたのである。

その悟能はまんまと玄奘の荷物を奪い取り逃亡しようと進んでいるのだった。

悟能の行く先に美しい女が座り込んでいるのを見つけ馬を引いてあげることにした。

その女は黄袍の手下だった。

悟能は黄袍に捕まり玄奘の様子を知らせるスパイになれと命じられる。

 

一方悟空はまたも紅孩児に追われていた。紅孩児はなんとしてでも悟空をもう一度仲間にするつもりでいた。

悟空は紅孩児から逃れ狼に襲われていた道整を救い旅を共にする。

 

玄奘もまた狼に襲われたところを凌虚子という道教の人物に救われたのであった。

 

まだまだ道は遠い。