ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その17

ネタバレします。

 

【第64回 五荘観に唐僧 人参を届け 霊芝谷に悟空 嬰児を拾う】

狼に襲われた玄奘を救った道教の師らは玄奘を五荘観という道観に連れて行く。

与世同君という人物の棲み処だという。

道教の師らは玄奘に届けていただきたいものがある、と言って籠にはいった包みを渡した。玄奘は馬を引きひとりでその道観に向かう。

「主人が留守だから」と一旦断られてしまった玄奘だが「凌虚子殿から包みを預かっているのですが」と言うとその門は開けられた。

主人の代わりのその人物は第一弟子の陰砒生と名乗った。

中に入り事情を説明した玄奘の目の前で包みが明けられるとそこから赤ん坊のようなものが転がり出た。

「人参果」と陰砒生は叫び玄奘に小刀を突き付けた。「きさまはやつらとどんな関係だ」

玄奘は驚き「助けられて頼まれただけです」としか答えられない。

陰砒生は玄奘が乗ってきた馬に乗って霊芝谷へ向かった。

 

悟空は出会った道整と共に夜道を歩いていた。

暗闇に人影があり悟空は怪しく思う。

人影の男はなんと赤ん坊を山中に埋めようとしていたのだ。

いきなり現れた少年がその赤ん坊を奪い取る。

「わしの人参果の元を」と男が殴ろうとした棒を悟空はすばやく叩き割った。

「これはぼくの妹だ。こいつが盗んだんだ」と叫ぶ少年に男は悠然と「返すがよい」と言い放つ。

悟空は男の怪しさに金箍棒を振り回した。

が男は術をかけて悟空は落馬する。

 

男は先ほどの家の主人、与世同君だった。

陰砒生が現れ人参果を見せたがそれは単に人参を赤ん坊のように削っただけのものだった。

凌虚子らに騙されたのである。

 

その凌虚子らが後を追いかけてきた。

与世同君は再び袖裏乾坤の術を見せて惑わす。

 

悟空は赤ん坊とその兄である少年の家に行き事情を聞いた。確かに父親は道士に助けてもらったお礼に子供を渡すという約束をしていたという。

 

与世同君は帰宅して玄奘に会い人参果がいかに貴重なものであるかを説くのであった。

 

 

七巻に参ります。

 

【第65回人参を求めて三夫 山に入り 嬰児を偸られて木精 谷を擡がす】

嬰児を救った悟空はその兄の住み家に泊めてもらう。

だが陰砒生は悟空の寝所に毒針を仕込んだ奇妙な人形を置き火をつけ、さらに再び赤ん坊をさらって去る。

山に入ると赤ん坊を地面に置き四方に人形を仕込む。

その様子を見ていたのが凌虚子たちだった。

悟空と少年が馬に乗って駆けつけてくる。

途端に人形が飛び出し悟空たちを襲った。悟空は人形を払う。

陰砒生は人形に凌虚子らも狙えと命じた。人形の毒針がひとりに刺さり死ぬ。

悟空は人形を避け、少年は妹である赤ん坊をかばう(なんていじらしい少年だろう)

悟空は人形を陰砒生に向けて弾き飛ばす。毒針が陰の首にあたり陰は逃げ出し、胸元から別の人形を放り出す。不気味にもそれは宙に浮いたままだった。

悟空は赤ん坊を抱いた少年を家に帰す。

宙に浮いた人形から無数の毒針が飛び出し悟空と凌虚子らは避けるしかない。

 

陰砒生の人形の毒は解毒すらかなわないほどだった。

自らの毒に死に瀕した陰は「人参果を食わなければ死んでしまう」と人参果を探し求める。

が、人参果が埋まっているはずの木の根っこにある場所はいくつもすでに掘り返されていた。

なんと通臂公が全部食べてしまっていたのだ。

樹木の上で満腹になった通臂公は最後の食いかけを放ってよこす。

追いついた凌虚子と熊山君も争って取ろうとし生き絶え絶えの陰砒生を刺し殺してその人参果を手に取った。

悟空はその様子を醒めた目で見ていた。

人参果はもともと生きている人間の赤ん坊を埋めて作った冬虫夏草なのだ。

通臂公は悟空を呼んで樹木の中を見せる。

「この谷で人参果があるのはどうやらこの樹の周りだけらしい。その理由はこの中にある」

悟空が覗くとそこには女性の裸体が木と交じり合ったようなものがあった。

熊山君は悟空たちが新たな人参果を見つけたのかと怒鳴りながら樹の中を見驚いて持っていた刀を女性の胸に突き刺した。

女の目がかっと開き「あたしの人参果を掘り尽くしたのはおまえたちだね」と叫んだ。

女の身体である樹木が動き出し熊山君を閉じ込め凌虚子を枝で掴みあげた。

ふたりは食ったのはじじい(通臂公)だと喚く。

樹木女は通臂公と悟空を枝や根っこで襲ったがふたりは走って逃げ出し事なきを得た。

そこへ道整が馬を引いてきた。陰砒生が死んだと聞き「困ったな。玄奘さまのことを聞きたかったのに」と言い出す。

その馬が玄奘のものだったと聞いて悟空は驚く。

突如、与世同君が登場する。

 

【第66回 袖裏乾坤 逃れること如何 人参果樹 何んぞ生を得ん】

 

与世同君の術と悟空の激しい戦いとなる。

が、樹木女に締め上げられた凌虚子が火を放ったため樹木に火が付き苦しむ。

「与世同君さまあーっ」

悲鳴が与世同君に届き与世同君はただちに悟空との争いをやめて駆け付ける。

雨を降らせて火を消した。

女は扶桑夫人といった。人参果が盗まれたと与世同君に訴えた。

 

通臂公は全部食ったと言ったのは嘘でじつはまだ四つ胸に忍ばせていたのだ。

悟空は怒るが通臂公はまたも早々と逃げ去ってしまう。

 

与世同君は悟空たちが逃げたのを感じた。

樹木女扶桑夫人は焼かれ枯れ果てていた。花粉を飛ばす。

そして自らは実となって与世同君に手に落ちた。

「これでわたしも地を離れて動くことができます。どうか私をお連れください」

 

五荘観では玄奘が旅立とうとしてまた弟子たちに止められていた。

がここでも恵岸行者が玄奘を迎えに来てふたりの弟子をやっつける。

外では道整も待っていた。

 

扶桑夫人の花粉は風に飛びながら我が子にも等しい人参果の行方を追い、通臂公を見つけ与世同君に知らせる。

これに気づいた通臂公は困り果て、とぼとぼと歩く褚悟能を見つけて利用しようと考えた。

四つの人参果を包んで「恵威法師様から玄奘法師にこれを渡してほしいと頼まれたのじゃ。必ず渡してくれ」と悟能に頼んだのである。

意地汚い悟能は喜んでこれを受け取りこっそり開けてみる。

すると死んだ赤ん坊のように見えるものが四つ出てきて驚くが「これは金もうけになるかも」と察知して玄奘には渡さずにおこうと考えて担ぎ込んだのである。

 

狼頭堡。

 

ここで褚悟能は玄奘、道整と合流する。

李靖軍が駐屯し広場はあふれかえる。

恵岸行者は玄奘を安全な屋敷へと案内した。

与えられたのは角の離れだったが玄奘は厚く礼を言う。

 

悟能は黄色の布がついた手裏剣を見つける。

黄袍が悟能に情報を聞きだした。

悟能は黄袍が悟空を捜しているのだと知って報告を約束した。

黄袍は天竺楼にいた百花羞をここにも連れてきていた。

石方相という大男が現れ彼女を「お嬢様」と呼んで労わる。

 

悟空は玄奘を探し回っていたが見つからない。

その横を紅孩児が通りかかり微笑む。

 

まあまあここまでくると紅孩児、なんでこうも悟空に執着しているのかわからない。

「好き、なんだね」と思うしかない。

その悟空は玄奘に執着しているんだけど。

玄奘は天竺に。