ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その22

ネタバレします。

【第83回 両雄 空材に戦い 孤僧 巫蠱を破る】

 

火井鎮では婆の占いが当たった。禍がやってきたと騒ぎになる。

昼間から大トカゲが徘徊し人々は逃げ惑った。

一升金はその様子を見て析易居士は三流だと罵る。

 

八戒はうっかり寝込んでしまい目覚めると一升金がいないので鎮火石と刻まれた大岩の下を掘り返した。

 

悟空はぐったりと寝込んでいる玄奘を連れとりあえず火井鎮に行こうとして羅刹女の手下どもに襲われ逆に叩きのめす。

玄奘を馬に乗せ火井鎮へ向かう。

が、村は静まり返り婆巫師の弟子が殺されていた。

さらにいつかの仮面の男がのし歩いている。

そして玄奘の顔をした蜥蜴が「私は死ぬよ。天竺へは行けないよ」とつぶやいていた。

 

悟空は仮面の男と勝負した。この前とは動きが違う。

仮面の男は紅孩児であった。

紅孩児、まじで悟空が好きだと大告白しとる。

 

玄奘は蜥蜴にとり憑かれ苦しみ続けていたがついに自分自身で「ひとりでだって必ず天竺へ行くのだ」と蜥蜴を握りつぶした。

 

そのことで玄奘は析易居士の蜥蜴蠱を破ったのだ。

 

鎮火石から流れ出た石脂水に巫師は火をつけた。

川が燃える。

鎮火石の付近には石脂気(天然ガス)が漏れ阮暴虎は燃え上がった。

羅刹女はそんな状況を見居ながら村からひとり去る。

 

【第84回 金箍月牙 刀桿を回り 蜥蜴巫蠱 水泡に帰す】

阮暴虎軍に追われる悟空は燃え盛る河を飛び越え紅孩児は潜って向こう岸に渡る。

目覚めた玄奘は析易居士の家ではなく別の村に居ると気づく。

救けを求める声を聞きその場所に行くと枯れ井戸の下に析易居士がいた。

玄奘がつるべ縄につかまり落ちることで居士は上にあがり玄奘をそこで育てていた大トカゲに食わせようとした。

そこに悟空の呼ぶ声がして玄奘は答える。

悟空は玄奘の声のもとへと急ぐがまたも紅孩児が阻み戦うはめになる。

紅孩児は悟空の金箍棒で肋骨を折られ倒れる。

 

悟空がたどり着くと析易居士は大トカゲを呼ぶ。が途端に悟空の金箍棒によってその頭は割られてしまう。

すると大トカゲからはこれまでトカゲに呑まれた村の者たちの怨念が飛び出してくる。

今度は悟空がつるべ縄につかまり玄奘とふたりぶらさがることになる。

それを見た析易居士は縄を切ってふたりを大トカゲの餌にしようとするが紅孩児によって逆に突き落とされる。

「悟空、今日こそは何が何でもケリをつけると言ったはずだ」

 

析易居士は自分の蠱に呑まれてしまう。大トカゲが噴出して悟空と玄奘は吹きあげられた。

飛び出した悟空は紅孩児の脚を叩き折る。

「なぜおれの頭をぶち割らねえ。お前の得意のその棒でよ」

しかし悟空は冷たく「ケリはついた」と言い玄奘を支えて出て行く。

 

それでも紅孩児はあきらめきれず這い出て悟空を罵る。

負傷した脚には小さな蜥蜴蠱がなおもへばりつき紅孩児はそれを切り落とす。

 

夜中怪しい男が村に来る。

どうやら析易居士の弟子らしい。師匠が死んでいるのを見つけそばにいた師匠の蜥蜴蠱にすべてを聞きだす。

 

悟空のところへは紅孩児の蜥蜴蠱が来て彼の心を話した。

紅孩児はすでに仇討などは考えていなかった。

だが悟空の活躍を見て欲望を持ったのだ。

「おれはおまえがほしい。おまえのその力をまたおれに見せてみろ。見るだけじゃ飽き足らねえ。おれのために使うのが嫌ならおれに使え」

悟空はその蜥蜴蠱を叩き落とし紅孩児は自分の脚を切り落とした。

 

【第85回 羅刹女 蠱嬰児を逃し 紅孩児 火輪車を駆る】

一升金は羅刹女と出会う。

ふたりは姉妹の間柄だったとわかる。羅刹女は元羅刹女である母親が残した財産を横取りされるのが嫌で一升金を追っていたが彼女は持っていない。

それは小青に任せた八戒によって運ばれていた。

 

悟空と玄奘は旅を続けようとしていたがこれを阻むものが3人いた。

ふたりは阮兄弟。

だが弟の阮暴虎は羅刹女によって腕を切り落とされ、兄の阮馮河は崖下に落とされる。

阮馮河がよじ登ってくるのを見て悟空は先を急いだ。

 

が、その行く先には四頭の馬に引かせた車に火をつけた紅孩児がいた。

悟空と玄奘は反対方向へと逃げ出す。

しかしそこからは阮馮河軍が近まってきていた。

前と後ろを阮と紅孩児に挟まれ玄奘は問う。

悟空はどちらかを突破するしかない、とすれば「あっちか」と紅孩児を見た。

悟空は玄奘とともに紅孩児の乗る火の馬車を飛び越えようとした。

悟空は馬の上に立ち金箍棒を構え紅孩児の上に跳ぶ。

金箍棒は紅孩児の得物を叩き割りそのまま頭を叩き割った。

 

玄奘は悟空に彼について訊くが悟空は何も答えなかった。

玄奘と悟空の西への旅は続く。

 

紅孩児、死んじゃった。

悟空から殺されたかったのだから幸福だったのではないだろうか。