ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その23

巫蠱の章

 

ネタバレします。

 

【第86回 瓜州に至りて強風 更に吹き 玉門を前に法師 心乱る】

瓜州に向かう玄奘と悟空は強風に吹かれる。

通臂公は駱駝の壺に入って移動してきた。

巫蠱使いの男と出会い旅を共にする。

 

瓜州の寺で玄奘は高僧に「どうしても西域へ行きたい」と願い出る。

禁忌である出国については何もわからないと困惑する僧たちだが玄奘のために一案を呈した。

寺の裏に住む毛さんは去年まで玉門関の守備をしていたから何か知っているかもしれないと教えられる。

玄奘と悟空はすぐに毛さんを訪ねて西域への道を訊いた。

国境の関門が玉門関となる。

その先の砂漠には百里おきに烽台が五つあるという。その先は莫賀延磧で伊吾国との境になる。

(莫賀延磧=ゴビ砂漠の一部の地名)

水一滴、草一本ない大砂漠だという。

 

これを聞いた玄奘は難しい顔になり悟空と諍いを起こす。

外に出た悟空は一升金と鉢合わせとなりまたも「婿になる話」を蒸し返される。

一升金は盗み聞きをしてどうやら天竺行きは中止になりそうだと踏んだのだ。

しかし悟空はたとえ玄奘が行かなくともひとりで行くつもりだった。

一升金は「早い話、あの坊さんが死ねばいいのね」とつぶやく。

(いやひとりでも行くって言ってるし)

 

玄奘の方は胡散臭い役人に声をかけられ金をせびられるが持っていなかったため「なら金持ちの檀那に肩代わりしてもらえばいい。その奥方に会ってみてくれ」とそそのかされる。

 

玄奘はひとりで交渉へ行く。

悟空は八戒を見つけ一升金が玄奘についていったと聞きだす。

 

玄奘が会った奥方は百花羞であった。

が、彼女を知らない玄奘はその美しさに驚く。

百花羞は玄奘から話を聞き援助したいと申し出た。

その様子を恵岸行者が見ていたのだった。

恵岸は彼女に命を助けられた後、共に粛州まで来て養生しながら玄奘の到着を待っていたのだが会えずこの瓜州まで来たのだった。

そしてこうして図らずも玄奘に再会したのである。

 

【第87回 唐僧 貞婦の供養を受け 貪吏 孤老に布施を与う】

悟空は見知らぬ男に連れられとある家に入る。

そこにいたのは羅刹女だった。

声に誘われ行くと彼女は行水をしていた。

慌てて隠れる悟空をからかいながら羅刹女は「たまには殺し合いではなく会いたいと思ってね」と言う。

そして羅刹女は悟空たちが西域に行こうとしている事実に興味を持っていた。

 

百花羞はあくまで裕福な未亡人というていで玄奘に亡き夫の菩提を弔ってほしいと願う。

そんな話を恵岸は奇妙な気持ちで聞いていた。

 

羅刹女は悟空に言い放つ。

「あたしは砂漠だよ!さあおいで!」

羅刹女の裸体が砂漠と重なって悟空に見える。

「悪いな、急用ができた」と出て行く悟空。「ほんとに命がいくつあっても足りないぞ」とつぶやく悟空の頭上に羅刹女が刀を突き立て落ちてきた。

「あたしをコケにして無事で帰れると思うんじゃないよ」

「やっぱりそういうことか」

「あたしの気にいる男はふたつさ。ひとつは抱きたい男、もうひとつは殺したい男。おまえはその両方だよ」

 

玄奘は百花羞の家を出た。

騎馬で帰るその途中、一升金の大青が玄奘とびかかるが別の何かが襲い掛かった。馬は大青の毒で死んだが玄奘は無事だった。

これを見ていた玄奘は無論のこと、一升金も驚く。

そして大青を襲ったのはあの謎の巫蠱使い、丘の蚯蚓蠱だった。

その丘は通臂公と今も手を組んで悪だくみをしていた。

 

悟空は羅刹女から「一升金は化け物だよ。一度懐を探ってごらん」と言われたことが気にかかり一升金に会おうとするが家は留守で小青が番をしていた。

ところが小青より早くミミズの化け物が悟空にとびかかり悟空はこれを退治する。

そのタイミングで一升金が帰宅し悟空を追い出した。

大ミミズは丘の蚯蚓蠱である。

 

玄奘はここにきて酷く心が乱れていた。

越えることもままならぬ大砂漠を前にして馬が死んでしまう。

座禅をしても集中できなかった。

そこに現れたのが石槃陀という胡人だった。

彼は玄奘に五戒を授けてほしいと願うのだった。

石槃陀は玄奘の苦悩を知って「わたしが師を送りましょう」と申し出た。

 

【第88回 瓜州城に妖人 甕を転がし 岩窟院に悟空 柩を倒す】

玄奘は百花羞との約束を行うため悟空を連れ立って赴く。

一升金は襲撃を案じ財産を持ち出して進んでいた。

八戒はこれに気づいて後をつける。

 

通臂公は丘に騙され盗んだお宝を持ち出されてしまっていた。

そのお宝を取り戻しに来た男たちから逃げるため、大きな甕に入って転がり出る。

恵岸が見つけ通臂公を阻もうとしたができなかった。

 

玄奘と悟空は百花羞との約束の弔いをする岩窟院に到着したが柩があるだけで百花羞もおらず何の用意もない。

怪しんだ悟空は玄奘に注意をしたが間に合わず岩窟院の入り口が崩れ落ちふたりは閉じ込められた。

柩の蓋が開き中から不気味な化け物が現れる。

それは黄袍であった。

すべては黄袍の計略だったのだ。

 

黄袍は腕を折られた恨みをはらそうとしていた。

外では一升金がただならぬ事態に襲われていた。

 

【第89回 悟空 暗中に仇敵と戦い 玄奘 窟坊に鬼僧に遭う】

黄袍が仕掛けているであろう岩窟で悟空は動けずにいた。

が、玄奘は岩窟の奥の方に光を見て暗い通路を進む。

 

外では一升金が襲ってくるミミズに手を焼き油をかけて火を放った。

小青が一升金に洞窟への道を教える。

 

玄奘は暗闇の中で座禅する僧侶に出会う。

その僧侶は玄奘を案内すると言って先に立った。

 

黄袍の罠が張り巡らされている中で悟空は戦う。

黄袍は最後の手段の縄を引いて岩窟を崩れさせる。

 

暗闇の中で僧侶は楽慧と名乗る。そして音沙汰のない師匠法楽さまを待っているという。

 

黄袍の計略のためにふたりを追い込んだ百花羞はこの岩窟院の堂守に洞窟の隙間を教えると言われて手を引かれる。

だがこの堂守は百花羞によからぬ好意を持っていた。

 

洞窟の中では悟空と黄袍が果ての無い戦いを強いられ次第に黄袍の方が弱っていく。

玄奘は不気味な僧侶に関わり読経する。

一升金は蚯蚓蠱に襲われ大青に救われる。

そこに悟空が現れ蚯蚓蠱を叩き切った。

 

悟空と玄奘は岩窟の中でお互いを見つけ玄奘は出口を指さす。

その時執拗に黄袍が現れ一升金を抱き寄せた。(一番危ないんだが)

「動くな弼馬温」といいまたもや仕掛けた弓矢を悟空たちに向ける。