西域篇 入ります。
こちらはまったくの初読みです。
ネタバレします。
【第1回 校尉 意気に感じて客を通し 悟空 唐僧を追って烽を破る】
玄奘と悟空たちはそれぞれ別々に進み、大唐国の国境玉門関を遠くに望み瓠蘆河に木を倒して渡り禁忌である密出国を犯しなおも進んだ。
かつて西域貿易が華やかなりしころは大勢の商人や駱駝のキャラバンが行き来したこの区域も今は国境を守る守備兵が五つの烽火台に駐屯するばかり。
さらにその先には莫賀延磧という大砂漠が広がる。
この五烽が唐の目の届く一番外れなのだった。
その五烽の一番手前には王祥という校尉が烽官として詰めていた。
辺鄙なところにいるせいかもともとそういう素地なのか、見張りの兵である李小弐を不埒な心で可愛がっているようだ。
ほぼ何もないであろう毎日のようだがそこにやってきたのが玄奘であった。
水を求めてきたのだ。
校尉に問われ、玄奘は正直に経典を求めて天竺へ行く所存だと打ち明ける。
校尉は玄奘の気概に感心し天竺行きを応援すると答えた。
一晩休んで翌朝出立すると良いとまで快く応じたのだ。
玄奘もこれを有難く受け取った。
昨夜玄奘が訪れた第一烽にたどり着くや悟空は早速見張り兵を殴りつけて中に入る。
玄奘という僧がやってこなかったかと問おうとするが校尉はじめ皆なんやかやと話すばかりで答えを得られず悟空は癇癪を起して金箍棒でテーブルを叩き割る。
その間に八戒は食べ物をみつけて烽台の上に上がり飲み食いを始めるが吹きっさらしで寒いと積み上げられた薪に火をつけた。
たちまち狼煙があがり兵たちは玉門関に気づかれたらとんでもないと慌てて火を消そうと大騒ぎになる。
騒ぎに紛れ悟空と八戒は第一烽を後にする。
【第2回 第四烽に悟空 僧を尋ね 第五烽に玄奘 人を誤る】
第二、三、四の烽台を気づかれぬよう通り抜け玄奘は王祥の親戚だという第五の烽台で水をもらおうとするが見とがめられ尋問を受ける。
王祥は勘違いしており親戚は第四烽台にいたのである。
ところが追いかけてきた悟空八戒が第四烽台で大暴れした後狼煙をあげたので第五烽台は「どういうことだ」と大騒ぎになる。
玄奘はこの隙にこっそり抜け出した。
入れ違いにたどり着いた悟空八戒は玄奘が出て行ったと聞き急ぎ追いかけた。
校尉はせめてもの反撃と八戒の乗る馬に矢を射かけ落馬した八戒は走って悟空を追いかける。
玄奘の馬の蹄跡を見つけた悟空だったが酷い砂嵐が吹き始め玄奘も悟空も進めなくなる。
玄奘は留まって黒風(カラ・ブラン)をやり過ごし再び歩を進めた。
【第3回 護法 磧中に唐僧を励まし ニ弟 沙上に竜骨を見る】
玄奘は道標となる骨や糞を探しながら進んでいく。
一休みしようと馬を降りて水を飲もうとして手が滑り大切な水を失ってしまう。
我慢しながらなおも進むが前にもあったような岩を見て「同じところをぐるぐる回っているのでは」と不安になる。
またも同じ形の岩を見て玄奘は失望した。
嵐で足跡は消え八戒は馬を失い再び徒歩になっていた。
蜃気楼に惑わされたが玄奘がいる証拠だと悟空は進む。
玄奘は心弱くなり戻ろうかと考え打ち消した。
ついに馬が倒れ玄奘も落ちて倒れた。
その時声が聞こえた。
「目的に向かって命のある限り進まんか。このまままっすぐ進むがいい。そして竜の橋を渡れ」
玄奘は起き上がり馬にまたがる。
馬は突如向きを変えて走り出した。その先に窪地があり水が湧き出ていたのだ。
玄奘はさきほどの声が御仏の使いだと感じた。
悟空たちは八戒を落としていった馬を見つける。
そしてその馬も悟空の馬も突如駆け出し砂漠の中の水たまりを見つける。
玄奘が見つけた場所だった。
しかしその場を離れると流沙が起こり馬の足が取られ見つけた馬は飲み込まれていった。
悟空八戒が流沙を避けながら歩き続けると目の前に巨大な竜の骨が横たわっていたのである。
【第4回 竜橋を渡りて 廃院に達し 空塔に昇りて 異人に遭う】
その竜の骨の先に建物があった。
玄奘は気づかぬようだったがこの場所は流沙で飲み込まれてしまうのだ。
夢のお告げ通り巨大な竜の骨の橋を渡ることで飲み込まれずに玄奘は建物に入っていくことができた。廃墟だった。
塔もあり寺院のようだと玄奘は思いながら廃墟を巡る。
中には仏像もあり玄奘は祈った。
人の気配がした。
声をかけるがその人影は消えてしまう。
塔を登り部屋の戸を開けるとなんと数人がテーブルについていた。
が、玄奘が覗き込むとそれは骸骨だったのだ。
「この家族はもう何十年もこうしている」
さきほどの人影の主だった。
その人物は奇妙な仮面を被り玄奘に座れと合図する。
仮面の男は玄奘に告げる。
「俺はここにやってくる者に三つの問いをする。その問いに答えなければ殺す」
その問とは「俺の名前はなにか」「俺の母はどこにいるか」「俺はいつここを離れることができるのか」であり期限は今日の日没までだというのである。
答えることのできない問いかけに玄奘は呆れすぐに逃げようとしたが馬も荷物もなくなっていた。
玄奘はやむなく隠れるがその時悟空の声を聞いたように思えた。
ついに悟空たちは追いついたのだ。
仮面の男は悟空と八戒にも同じ質問をする。
悟空は「知るものか」と金箍棒を振り回す。
「おまえの名前は砂漠の中のイカレ野郎だ」
男は誘うように砂漠の方へ走り悟空を待ち構えた。
ひとり残された八戒は壁の向こう側に玄奘の馬を見つけさらに金貨を見つけて大喜びとなる。
悟空は仮面の男と戦うが場所が流沙で足を取られいつものようには戦えない。
男は「答えを考えておけ」と言って走り去る。
悟空が廃墟に戻ると八戒の姿はなかった。
しかし不気味な化け物が現れ玄奘は逃げようとするが流沙に足を取られ思うように進めない。
八戒も悟空も流沙に困惑するばかりだった。
玄奘は暗闇の中に灯りを見て落ちていた木の棒で思いきり叩くとそれは八戒であった。
玄奘は慌て棒を落として知らぬ素振りをしながら再会を喜んだ。
しかし八戒は見つけた金貨の壺をしっかり抱え込むがまたも流沙に飲み込まれそうになって悲鳴をあげる。
その時あの仮面の男がやってきてふたりに「答えはわかったか」と尋ねる。
男の名前とその母親の居場所などわかるわけもなく玄奘は「悟空、助けてくれ」と叫ぶ。
天井が激しく叩きつけられる音がして割れた。
そこからひらりと降りてきたのは悟空であった。
「坊さん、やっと追いついた」
砂漠にあった巨大な竜の骨はむろんゴビ砂漠にあった恐竜の骨。
あんなの見たらどうしたって龍がいたんだと思わずにいられないはず。
目の前にあるのだから。