ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その3

ネタバレします。

 

【第9回 流沙河を去りて 伊吾に至り  胡宅に宿を借りて 復た妖を見る】

西遊記』にのっとって悟空・悟能・悟浄をつれた玄奘三蔵

しかし本作では悟空は弟子のつもりはない。

そして西域を知っている悟浄によって案内されながら旅をする。

 

悟能=八戒は悟浄におまえの元の名は何なのだと問いかけそれに悟浄は「忘れました」と答える。

しかし八戒は「お袋から呼ばれていた懐かしい名前は思い出した、と言ってたじゃないか」としつこく訊く。やむなく悟浄は「小鳩ちゃん」だと答えそれを聞いた玄奘と悟空は笑うまいとしても笑いがこみあげてくるのであった。

 

やがて砂漠は草原と変わる。伊吾が近いのだ。

幼い羊飼いが羊を放牧していた。

悟浄は少年に声をかけ近くにある石千歳の家を訪ねることにした。

石はソグド人で先ほどの羊も彼のものだった。悟浄はかつてその男に装飾品などを売ったことがあるのだった。

主人は玄奘一行を受け入れ宿泊を認め食事を出してくれるが客の前で給仕の女の尻を触るような野卑な人格だった。

しかも先ほど出会った羊飼いの少年が羊を一頭失ったというので棒で酷く殴り止めに入った母親(尻を触られた女)も殴るのであった。

さらに主人は今回悟浄がなにも装飾品などを売りに来たわけではないと知って突然怒り出す。

それがなければ坊主などに余計な布施をするつもりはなかったのだ。

玄奘たちに出された夕食は少なく寝所も家畜小屋の側だった。

一行が寝入った頃、八戒は腹が減って起き上がり目ぼしいものがないか探しに行く。

そこで先ほど殴られていた女が主人に犯されているのを見てからやっとカマドにナンが一枚残っていたのを見つけて食べる。

 

その時、外に人影を見た。

夕べの少年がどうやら羊を見つけて帰ってきたようだ。

悟空もまた何かの気配を感じて起き上がる。

「なにか来る」と外に出た。

戻ってきた羊飼いの少年の横には二足歩行で立つ大きな羊の姿があった。

 

【第10回 牧童 羊を求めて妖を連れ帰り 悟空 棒を振りてひとたび怪を打つ】

その牧童と羊の妖怪は住居の中に入っていく。

それを見た悟空もその場所へと近づいた。

 

一方八戒は物音に気付いて厨房を出ると別の使用人女が眠っている部屋に入り込みことに及ぼうとしてもぐりこんでいた犬に咬まれ叫んでしまう。

 

悟空が物音のした部屋を開けるとそこに羊の妖怪がいてとびかかってきた。

悟空は金箍棒で妖怪を殴りつける。

八戒は女に怒鳴られ逃げるとそこに悟空と羊妖怪がいた。

悟空と妖怪はなおも戦う。

騒ぎに玄奘と悟浄も目を覚まして駆け付けその様を見る。

使用人女と八戒は恐れをなして逃げ出した。

が、逃げ込んだ先の部屋には寝台に切り刻まれた主人と牧童の母親がおりその側には剣を持った牧童が立ちすくんでいたのだった。

 

羊妖怪と牧童は暗闇の草原へと逃げ出す。

屋敷の者たちが皆起き騒ぎ出した。

異国の言葉を悟浄が翻訳する。

どうやらだれもはっきりと怪物を見ておらずこの騒動がどういうことなのか理解できないでいるらしい。

八戒と悟空が先に起きていたのも怪しまれている。

逃げた牧童を探さねばならないが怪物と一緒だと聞いて皆半信半疑で怖がっているのだ。

やむなく悟空が捜しにいくことになる。

 

【第11回 草原に妖を索めて童女に遭い 牧地に骨を見てふたたび怪を打つ】

子羊に誘われ悟空は不思議な童女に出会う。

彼女は漢語を話すことができからかうように悟空と会話した。

牧童の名はカマルトゥブというらしい。

童女はカマルトゥブが所属するキルク族とここでの立場を説明した。

カマルトゥブを見つけたが彼には悟空の言葉はわからずふらふらとまたどこかへ歩いていく。

悟空の前にはまた羊妖怪が現れ悟空はこれを打ち殺す。

だが死んだ途端それは骸骨になってしまう。これでは怪物がいたという証拠にできない。

童女はまた悟空をからかう。

悟空は童女が住むというおじいちゃんの家に案内される。

おじいちゃんは童女をアマルカと呼びにこやかに座っていた。

その姿はどこか羊に似ている。

 

【第12回 童女 羊に跨りて大聖を嘲い 悟空 山腹に日の昇るを待つ】

アマルカの祖父はにこやかに悟空と話をした。

決定的な解決にはならないが夜と昼の間が鍵だという。

そして「この国へ来たからにはこの国の流儀を知ることだよ斉天大聖」と告げたのだ。

 

外に出ると皮衣を着て大きな羊にまたがっているアマルカがいた。

「あなたが捜している羊はあれよ」と言って去る。

指さした先には亡霊の羊の群れの中に立つカマルトゥブがいた。

悟空はそれら亡霊羊たちと戦う。

が、打っても打ってもきりがない。悟空はアマルカの祖父が言った夜明けを待つしかなかった。

やがて夜が明け亡霊は蘇らなくなる。

目の前にある不気味な骸骨の頭を持ち上げ悟空は倒れているカマルトゥプを連れ帰る。

 

一方、悟空の帰りを待ちわびる玄奘と悟浄の目の前にソグド兵が大挙して押し寄せた。

彼らは玄奘たちを連行し取り調べるという。