ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その4

ネタバレします。

 

【第13回 胡兵 馬を連ねて悟空を襲い 単騎 虚を突きて強箭を射る】

悟空はカマルトゥブを後に乗せて馬を急がせた。

だが前方から騎馬集団が攻撃してきた。

応戦する悟空を取り囲む騎馬隊。

それを止める男が現れる。

それでも騎馬隊の攻撃は止まなかったが今度はどこからか矢が飛んできて騎馬隊のひとりのこめかみを直撃した。

さらにもうひとりも。

見るとはるか遠くに弓を持つ人影がある。慌てて逃げ出す騎馬隊になおも矢が射かけられる。

悟空が「おかげでやつらを振り切れそうだ」と思った瞬間自分自身にも矢が当たりそうになり思わず落馬する。

馬はカマルトゥブを乗せたまま走り去る。

追いついた悟空はあの時の「騎馬隊を止める男」と再会する。カマルトゥプは落馬して気絶していた。

男はトルークシュ、漢名は安吐窟と名乗り先ほど悟空を襲った騎馬隊の顧問のような存在だという。

悟空に羊の干し肉に黒コショウをかけて振舞う。

そして「おまえはこの小僧を石千歳の屋敷に連れて行くつもりらしいが連れはもうそこにはいない」と伝えてきた。「粟特城で取り調べを受ける」という。

トルークシュは悟空をそこに連れて行ってやるというのである。

 

が、途中でカマルトゥブの叔父に遭う、という事態が発生する。

驚いたことにトルークシュはあっさり叔父と名乗る男にカマルトゥブを返してしまう。

悟空の方が物わかりの良さに気味が悪くなり「容疑者を開放してよかったのか」と問う。

トルークシュは「なんとかなる。もっとも怪物の件は祆主さまに指示を仰がねばならないだろうが」と気楽に答えた。

祆主さまというのは仏教での大僧正のようなものだと説明する。

しかし悟空の知っている坊主は玄奘は別としておかしな人間ばかりである。

 

玄奘八戒、悟浄はソグド兵たちに連行されていった。

 

【第14回 玄奘 疑いを受けて祆主に会い 大聖 火を退けて結界を破る】

玄奘たちは粟特城に入る。ソグド人の聚落である。

(ソグド人はイラン系民族で古くから交易で利を得てきた)

玄奘は役人に厳しく尋問を受ける。

だが兵士たちから耳打ちをされるとあっさり今日の尋問は終わる。

その後玄奘たちは祆教寺院(胡天祠)に連れられていく。

祆教は拝火教とも呼ばれソグド人に多い宗教であった。

祆主さまの前で玄奘は「天竺へ行って仏教の疑義を正したいと思い国境を越えてきたのです」と話す。

祆主は「ここへすんなりと入ってこられたか」と問う。

玄奘は戸惑うがその通りだと答えた。

祆主は玄奘たちを招く。

そこには火が燃え盛っていた。

祆主はその火を確かめるように見た後は玄奘たちを解放した。

 

玄奘たちは牢獄ではない部屋に閉じ込められた。

外では帰還した騎馬隊たちが騒いでいる。

どうやら悟空たちと出会いその後矢を射かけられた者たちだと悟浄に聞こえる。

 

やがてトルークシュに連れられた悟空がやってきた。

だが粟特城の門の前で炎が燃え盛りその中から精霊のようなものが現れ「退がれ。汝ドゥルジ・ナス。この門は汝の入るべき門にあらず」と叫んだのだ。

トルークシュにはそれは見えない。が、悟空がそれに阻まれ金箍棒で打ち砕き無理矢理その門を潜り抜けた。

 

祆主は「城門の結界が破られた。ドゥルジ・ナスが侵入した」と感じた。

そして遠い場所でアマルカの祖父は「斉天大聖が城門の結界を破ってくれたようじゃ」とつぶやきアマルカは笑った。

 

【第15回 悟空 争いを避けて市場を走り 二童 体を繋ぎて屍魔を捜す】

城門を破った悟空の馬は勢い余って街を駆け抜ける。

前方に騎馬隊がおり悟空に向けて剣を抜いたがあっさりと逃げ去られた。

トルークシュは呆れて見ているしかない。

 

祆主のもとにはナササラルたちが集まっていた。

「城内にドゥルジ・ナスが入った」と告げられどよめく。

夢にアフラマズダーの使者ナルヨー・サンハが現れて告げたのだという。

「異国から来るものが城市に穢れを持ち込むだろう」

祆主は死の穢れを専門に扱うナササラルを集め四つ目の火を連れて行き城内を探索せよと命じる。

バイワンドで行け。くれぐれも気を付けよ。

 

祆主のもとに双子のハルワタータクとアムルタータクが駆け付けた。

ふたりは身体を紐で結び付けている。(これをバイワンドというようだ)

「ぼくたちもドゥルジ・ナスを捜します」

ふたりのそばにはワユという名の子犬もいた。濃い眉があり見事な四つ目になっている。

祆主が止めるのも聞かずふたりは飛び出す。

が、すぐにアシャイバンダクに咎められる。

それでもふたりはドゥルジ・ナスをやっつけようと駆けだした。

 

アシャイバンダクは祆主に問う。

祆主はアンラ・マンユの眷属はどこにでも悪をまき散らそうとする、と答える。

 

双子は市場で知り合いの子供トプチンに出会う。トプチンは雇われている家主バクラクッチから羊肉を買ってこいと命じられ市場に来ていたのである。

ふたりは本当の話は禁じられているため城市の人々が悪事に走らないよう見張っているのだと説明した。

 

玄奘たちはトルークシュと面談しますます不安になる。

そして「次の取り調べでは怪物の話はせず遊牧民風の男たちだったと言え」と忠告される。

 

一方悟空は騎馬隊に追われ、馬を降りて隠す。

が、この馬に括り付けていた羊妖怪の首をさきほどのトプチン(双子の知り合い)に盗まれてしまう。

(なぜこうも問題が複雑になるんだー)

ほんとにこの後はややこしくなっていく。

悟空は双子に絡まれうんざりしながらつきあう。

双子は悟空がドゥルジ・ナスだと疑いながらも呪文が効かず困ってしまう。

 

玄奘らはトルークシュの言った通りに弁明し釈放され、富豪な商人バクラクッチの家に招かれる。

そこにあの悟空から盗んだ化け物羊をトプチンが持ち帰るが、とんでもないものだったと気づき慌てて屋敷を飛び出す。しかしもうすでに周囲は暗くなっておりしかも悟空と双子が近づいてくるのに気づいてまた引っ込む。

双子はトプチンに出てこいと喚き悟空も「あいつが盗んだのか」と馬を降りる。

 

商人バクラクッチの家には悟浄のかつて昵懇だったらしい女性が妻となって暮らしていたのだ。その女性は悟浄に「話があるので後で裏庭に来て頂戴」と呼びだす。

 

城門の内側にはアマルカが現れていた。

「楽に入れたわ」と微笑む。

 

もう恐ろしいことが起きる予感しかしない。