ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その6

毒敵山の章

 

ネタバレします。

【第19回 八戒 酒を欲して浄財を偸み 胡婦 企みを懐きて妹を訪ぬ】

玄奘一行はようやく伊吾国の中心伊吾城へ入ることができた。

ここには仏寺がいくつかありそのひとつに宿泊することになった。

 

八戒はもともと欲深いので今でもまだおかしくなったことに気づかれないでいるがそれでもあまりにも度が過ぎている。

世話になっている寺の老僧に酒をせびり、足りずにお布施を持ち出してしまう。

悟浄から「それならバザールでしょう」という情報を得て悟空はともにバザールへ行く。

やはりバザールでお布施の布地を売りさばこうとしていた八戒だったが途中で馬車に乗ったメーウザーイと出会ってしまう。

メーウザーイを見て戸惑う悟浄は悟空を呼んで馬車を追うが、またしても双子が邪魔をする。

 

八戒をつれたメーウザーイは妹が嫁いでいるというタクワルチュという役人の家へと馬車を向かわせる。

なぜかメーウザーイは「毒」を胸元に忍ばせていた。

 

【第20回 八戒畳ねて毒婦に従い 悟空 ふたたび胡宅を鬧がす】

双子と子犬のワユは犬潜りの穴から役人の家に入り込み悟空は悟浄を台にして塀の上に跳びあがる。

 

メーウザーイは妹に毒を飲ませたいと考えていた。八戒に毒を渡して妹の飲み物に入れてほしいと頼む。

かつてメーウザーイは恋人(悟浄だろう)といるところを妹にみつかり告げ口されたと恨んでいたのだ。

毒と言っても寝込むだけのものだという。

 

ところが召使が運んできたティーポットの中に八戒は気づかないまま毒を入れてしまう。

が、そのティーポットは別の部屋で会議をする男たちに出すものだったのだ。

そこには屋敷の主人タクワルチュ、石万年、吐屯などがいた。

その部屋の天井には(明り取りの?)穴があり悟空たちはそこから中の様子を伺う。

会話は悟空にはわからない。が、カマルトゥブという言葉だけが聞こえて悟空ははっとする。

双子に通訳させるため悟空は聞き取らせようとした。

が、双子の片割れが手を滑らせ穴から落ちそうになり例の紐でなんとか免れちゅうぶらりとなった。

「何者だ」と護衛兵を差し向ける。

ところが八戒がうっかり入れてしまった毒によって三人の男は苦しみ始めた。

屋根の上では護衛兵と悟空が戦い始め大騒ぎとなる。

 

八戒は残った毒を目的のメーウザーイの妹の茶碗に入れようとしてメーウザーイの茶碗にも入れてしまう。おまけに自分の茶碗にまで入れてしまう。(どんなうっかりものだ)

そうとは知らずメーウザーイはお茶を飲んでしまった。

妹も飲みふたりは苦しみ始める。

しかも八戒までがうっかり(しすぎだ)お茶を飲んでしまい苦しみだす。

そかしこのことでメーウザーイはとり憑いた妖怪羊を吐き出してしまうのだ。

吐き出したものに双子は持ってきていた「神聖な牛の尿」をかけて浄めた。

ついでに八戒にもかけると八戒もまた妖怪羊を吐き出してしまう。

 

「賊だ」という声に悟空は双子を両脇に抱えて逃げ出した。

メーウザーイの夫バクラクッチは「妻が離婚すると叫んで出て行った。妹のところへいったのではないか」と駆け付けてきた。

メーウザーイは妖怪を吐き出してすっきりしたのか「そんなつもりはありませんわ」と言って黒テンの外出着を買ってもらう約束をして家に戻る。

 

八戒は自分も毒にあたったことで嫌疑はまぬがれたのである。

 

 

【第21回 毒敵山に悟空 変を知り 蝎子谷に義者 屍を見る】

悟空は役人の家で盗み聞いた「サソリの谷」へと向かう。

 

文字通りサソリがうようよといる道を進むと五十人ほどの人々が矢を受けて倒れていた。

なぜかハゲワシが降りてこようとしない。

悟空と悟浄は死体の群れの中ほどにある不気味な物体を見て近づくこともできない。

 

そこへ来たのはアシャイバンダクだった。

双子に知らされきたのである。

 

と、ハゲワシが降りてきて死体を食おうとした途端不気味な物体から液体が発されハゲワシは倒れてしまう。

悟空は石を投げて不気味な物体を壊した。

ハゲワシたちが降りてきて死体を啄み始めた。

悟空は咎めるがこれは「鳥葬」なのだと言われる。

悟空は死体を確かめる。カマルトゥブがいないか。

が、うようよとするサソリがそれを邪魔した。

 

「なにを捜しているの」

アマルカだった。

悟空はアマルカが自分を利用したと憤りその後を追う。

残された悟浄とアシャイバンダクもサソリの谷から抜け出す。

 

双子はアシャイバンダクを追いかけようとしてサソリの谷に向かうナササラルの馬車に潜り込む。

ところが谷に差し掛かったところで馬車を御していたマルボーロとカクザートは何者かに襲われ倒れてしまう。

双子は車から降りて様子を見る。

アムが馬車の下を覗き込むとそこに人が潜んでいた。

「ハル、助けて」

ハルが紐を引っ張るとちぎれてしまう。

気づくとアムの姿は消えていた。