ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その1

今になってここも『西域篇』だと気づきました。その中の「火焔山の章」だったのですね。

 

ネタバレします。

 

【第1回 聖僧 夜を徹して高昌を目指し 行者 山中に孤兒群を見る】

五世紀末から七世紀にかけて西域トルファン盆地に高昌国はあった。

漢族の麴氏が支配する天山南路のオアシス国家である。

その中心である高昌城の東方三十kmほどのところに白力城という城市があった。

 

悟空を除く玄奘一行がトルークシュに案内されてこの白力城に到着したのは日が暮れかけた頃だった。

疲れ果てた玄奘たちはここで悟空を待ちたいところだったがトルークシュは一休みしたらすぐに王城へ向かうというのである。

小さな姉弟たちは瓜を摘んだ馬車に乗せられ火焔山を越えて進むことになる。

トルークシュの部下ドヴォルクはこれを案じてジュンマイとムカンサという子どもたちに案内させることにした。

 

悟空が到着した時はもう日がとっぷり暮れていた。

ドヴォルクは玄奘一行は先に進んだと告げる。

 

玄奘一行は火炎山を越える途中正体不明の集団に襲われ荷物の瓜を盗まれてしまう。その騒ぎの中でシュムもさらわれてしまったのだ。

どうしても玄奘たちを急がせたいトルークシュはジュンマイとムカンサをその場所に置いて先へ進んだ。

ふたりは後から来た悟空とドヴォルクに経緯を話す。

それを聞いた悟空は「俺の役回りということだな」と言ってふたりに心当たりを案内させる。

この火焔山は岩だらけで人が住める場所ではないが幾つか渓谷もあり川がが流れている。

最近この谷に住み着く奴らがいるらしい。

それが子供ばかりの集団だというのである。

それは向こうから石を投げて存在を知らせてきた。

瓜は食い散らかされシュムは仲間と間違われ連れていったのだという。

悟空はその子どもを連れ戻しに来ただけだと話すが再び石を投げられるだけだった。

しかし子供ばかりでは悟空も本気が出せない。いったん引き揚げることにしたのだった。

 

夜が明けるのを待ち悟空は岩場を探索してみる。

しかしどこにも誰の姿もない。

悟空は気づかなかったが不思議な大きな人影が現れ悟空たちがいた洞穴の入り口を崩す。

それも完全にふさぐほどはなく三人は外に出る。

これは警告だ、と悟空は感じた。

 

【第2回 二児 山中に秘窟を探り 悟空 坎井に怪人に遇う】

強行軍で王城に着いた玄奘一行はすぐに二階建ての楼閣に通され王は自ら丁寧に拝問した。

ところが伊吾王から贈られた瓜が盗まれたと聞き怒った王は担当役人の首を斬れ、犯人を見つけ出し瓜を取り戻せと騒ぎになる。

 

ようやく休めることになった時悟空が到着しシュムは見つけられなかったと報告する。

 

王は翌日も玄奘を参拝し側室も現れた。

その側室はなぜかチェイリーの姿を垣間見てはっとし王に「気分がすぐれませぬ」と言って退室するのであった。

 

玄奘一行は王宮の隣にある道場へ移るがこの時女児であるチェイリーは泊められないということで問題になる。

トルークシュがチェイリーを自宅に連れて行くと言い解決。

だが瓜泥棒を捜査するため王は兵を出したという。シュムに危険が迫る。

 

悟空はドヴォルクの部下少女ジュンマイに案内させ火焔山へ向かう。

途中地面に穴が開いているのを見つけて問う。

それは「カレーズ」と言い砂漠の下に水路があるのだという。

この辺は雨が降らず水は全部天山の雪解け水で蒸発しないよう地面の下に水路が掘ってあるのだ。

山中に入った悟空は驚く。

王の兵士たちが死んでいるのだ。

しかし案内したはずのムカンサはいない。

悟空はあの子どもらが襲ったのかと思ったが死体は骨が折られており投石が武器の子供たちではできない。

 

悟空たちは以前捜索した洞窟に入る。

悟空は洞窟に溜まった水に潜り別の通路へと出た。

そこには子どもたちの集団に捕まったムカンサがいた。

悟空は見張りをしていた子どもを人質にしてシュムと話をした。

ムカンサに通訳させる。

シュムは帰りたくないという。「ここには牛のおじちゃんがいるから」と。

そして姉ちゃんに来てほしいと言い出す。

 

悟空は皆の前に出て「この子はもらっていく」と抱えて逃げ出した。

ムカンサは逃げようとして捕まるが今度はジュンマイが子供たちの頭であるカシュラートに短刀を突き付けた。

だがカシュラートは落ち着いてジュンマイをかわす。

 

悟空は逃げる途中で大きな牛の化け物に出会う。

シュムは「牛のおじちゃん」と呼び悟空はそのシュムを掴んで引き離した。

牛の怪物は太い鉄の棒を悟空に振り回す。

悟空は咄嗟に避けたがその反動で水路が崩れ戻れなくなる。

やむなく水路を進みカレーズから外へと出た。

ジュンマイとムカンサが迎えに来た。

子供たちから解放されたらしい。

牛の怪物についてふたりはなにか知っているようだが悟空には話さない。

ジュンマイは自分をからかったカシュラートが気になっていた。

 

【第3回 安氏邸に呉越同舟し 水流洞に怪人 呻吟す】

悟空はトルークシュの邸宅へと行きチェイリーにシュムの話をする。

チェイリーはシュムに会いたがったが、トルークシュに「お母さんが見つかりそうだ」と言われ留まることにした。

悟空が「牛のおじちゃん、とはなんだ」と聞くとトルークシュは「牛魔王のことかな」と答える。

そこへ現れたのはヴァンダカだった。

なんとふたりは兄弟だったのだ。

会った途端いがみ合う悟空とヴァンダカ。

トルークシュは兄貴の好きな胡炮肉を用意していたと言って悟空にも勧める。

悟空は断るがここに国王の妹の公主が訪れ皆で食事をしたいと言い出した。

公主の供が皆から武器を預かる。

 

しかし食事の席でも悟空とヴァンダカの争いは止まらない。

公主は笑い楽しんだ。

そして悟空に「お母さまのところへ来て頂戴」と命じるのであった。

 

高昌城外のオアシス。

子供盗賊たちが盗みを働き隠れ家へと持ち運んでいた。

水路の出口で盗みをやったと聞きカシュラートは咎めるが背に腹は代えられない。食べ物が手に入らなくなっているのだ。

カシュラートは牛怪人の様子を見に行く。

牛怪人は暗闇で頭を抱え座り込んでいた。

苦しそうに息をしている。

子供たちはその様子を見て恐ろしいと言い出す。

しかしカシュラートは「よせ、あの人は苦しんでいるんだ」と皆を諫めた。

 

子供盗賊の隠れ家を突き止めた男がいた。

ドヴォルクの手下ニゴーリだった。