ガエル記

散策

『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その3

ネタバレします。


【第八回 悟空 児を捜して寧城に入り 牛王 威を顕して陋巷を震わす】

悟空は再び双子と一緒に行動することになる。

行先は寧戎城である。

双子は祆教寺院に悟空はバザールへ行って古着屋を捜そうとしていた。

 

が、暴動のためかバザールは荒れ果てていた。

こっそりと物を拾い集めていた女とこどもに古着屋の場所を訊く。

古着屋も荒らされたらしく主人はうんざりした様子で悟空の質問に答える。

子供たちは暴徒と一緒に西北のスラムの奥に立てこもっているらしい。

 

が、スラム街の人々は暴徒よりも略奪や暴行を繰り返す役人や兵隊たちを怖れていた。

さらに町の隅々に奇妙な化け物がおり悟空の頭痛を引き出す。

路地奥から轟音が鳴り響き建物が破壊された。

悟空はさらに頭が痛くなっていく。

路地の行く先には牛魔王がいた。

 

【第八回 悟空 児を捜して寧城に入り 牛王 威を顕して陋巷を震わす】≪その二≫

 

悟空が牛魔王と対峙している間にハルとアム、馬までがいなくなってしまう。

牛魔王を置いて悟空はふたりが消えた方向へと行く。

そこには不思議な佇まいの老婆がいた。

「そこの扉を閉めとくれ」

外を兵士たちが駆け抜けていく。

と爆音がして壁が崩れ落ちた。

クイとグイという子どもたちが老婆に従っているようだ。

老婆は骨を使った占いをして悟空が捜している子供は無事だ、と告げる。

それでも気になるという悟空に老婆はクイとグイに案内させた。

 

悟空があの婆さんは何者だと二人に聞くと「おばばだ」と答える。

 

一方、八戒は連れだした奴隷女が逆らうためやむなく玄奘がいない間に寺院へと戻る。

悟浄に「どっか置いておける場所はないかね」と尋ねると、なんとふたりは知り合いだった。

女は悟浄を「バルザート」と呼んで抱き着き女の名前は「オパチ」だと判った。

以前は人妻、今度は色っぽいねえちゃんから好かれてしまう沙悟浄八戒はむかつくばかりだった。

悟浄は寺院に戻ってきた張法師と崔法師のやり取りを聞いてオパチに早く行けとせっつくがオパチは「アンナ坊主キライ」と言って動かない。八戒もむろん返すつもりがない。

沙悟浄はひとり頭を抱え込んだ。

 

【第九回 刀圭 遊里に胡娘を伴い 行者 陋巷に緑林を知る】

悟空はクイとグイに騙され街の外へと連れ出されてしまう。

だがそこでムカンサ・ジュンマイと出会いこれまでの経緯を話し合う。

 

さて困り果てた悟浄はオパチ(と八戒)を連れて知り合いの遊郭へと向かった。

オパチをそこで預かってもらおうとしたのだがオパチは何の芸もなく女将や他の遊女たちには反感を買われてしまう。

だが本来のはねっかえりの明るさで客たちには受けがいい。

さらに八戒は店に入った途端あちこちの部屋で飲み食いを始める。

悟浄だけは弱り果てていた。

 

再び寧戎城。

ヴァンダカはソグド兵に皆殺しを命じた。

だが反撃を食らい制圧は困難だった。

悟空もまたソグド兵に一撃を与える。

カシュラートら子供集団は暴徒たちと組んでいたがここにきて牛魔王の発作が酷くなり立場が悪くなっていた。

なぜか牛魔王が苦しむと影響するかのように悟空の頭痛もひどくなるのだ。

あまりの苦痛に悟空は暴れ牛魔王も子供たちの前で石壁を叩き割った。

そこに近づいてきたのはシュムだった。

シュムが「牛のおじちゃん」と言って膝に座ると牛魔王は痛みがなくなったようだった。

 

【第十回 胡娘 酔いて胡旋舞を舞い 心猿 往きて牛魔王に見う】

遊郭八戒は思う存分(ではないかもだが)飲み食いしていく。

オパチも酒癖が悪いらしく酔えば酔うほど調子に乗ってはしゃぎだす。

胡旋舞を踊れないのに踊ると言って食べ物や飲み物を蹴散らしひっくり返って笑いを取る。

悟浄は見てみぬふりをして逃げていく。

オパチと八戒の悪ふざけを見て気に入ったという御仁がいた。

 

ヴァンダカはソグド兵たちを戦わせていたが牛魔王が復活しそれも無駄骨となる。

悟空の頭痛もやみジュンマイ・ムカンサと街の中を捜しまわりカシュラートを見つける。

カシュラートが気になるジュンマイは懸命に逃げろと説得するがカシュラートは思うようにはならない。

その間に悟空は眠り込んでいるシュムを見つけ出した。

 

街の外ではハルとアムが待ち疲れていた。

子犬のワユが騒ぎ出しふたりはあちこちにいる小さな化け物を見つけては退治し始める。

が勢い余って井戸の底に落ち込んでしまった。

そこにはふたりが会いたがっていたアシャイバンダクがいたのだ。

 

悟空は「来る」と感じていた。

だがもう頭痛もせず静かな気持ちでいる。

今まで見たこともない大きな山並みを感じ悟空は不思議を覚えた。

眠っていたシュムが目を覚まし「牛のおじちゃん」と呼ぶ。

そこには牛魔王がいた。

 

【第十一回 両雄 相見えて宿命を知り 怪童女 悟空に再会す】

悟空と牛魔王が相まみえた。

悟空の心は平静であったし牛魔王も同じだった。

そのとき悟空が感じたのは「俺はこいつとやりあって倒さなければならない」

大勢の子供たちが見守る中で悟空と牛魔王の戦いが始まった。

悟空の一撃が牛魔王の牛の仮面を引きちぎりその顔が少し見え片膝をついた。初めてのことだった。

その反動で悟空の左腕が痺れる。

さらに悟空が金箍棒を打ちこもうとした時牛魔王の足元にシュムがすがりつく。悟空は咄嗟に避けた。

それまで見入っていた子どもたちが突然気がついたかのように「牛魔王が片膝をついた?そんなはずはない」と言うや手あたり次第に皆悟空めがけ小石を投げ出す。

やむなく悟空は逃げ出した。

子供らは悟空を追おうとしたがカシュラートがそれを止めた。

牛魔王は黙ったまま立っていた。

 

悟空とジュンマイ、ムカンサは街の外に出る。双子はいない。

だがアシャイバンダクに連れられ戻ってきた。

 

悟空はアシャイバンダクに抜け穴が掘られていることを知らされる。それは城外のカレーズのひとつにつながっているというのだ。

それを聞いたジュンマイはその抜け穴を通って子供たちを助けられないかと言い出す。

アシャイバンダクは善い行いならすべきだと答えた。

 

悟空はアシャイバンダクの言う抜け穴がある井戸に入る。

抜け穴を通るとアシャイバンダクの仲間ナササラルたちがいた。

魔族の毒にあたって弱っていた。

アシャイバンダクは悟空そして双子を連れ別のカレーズの先へと向かう。

 

やがて地上に出た彼らはそこでアマルカが飛ばすハエの言葉を聞く。

悟空は苛立つがハエをどうすることもできない。

悟空をからかうだけで引き返したアマルカは羊力大仙に諫められ今度は牛魔王の様子を見にハエを飛ばした。

 

だが牛魔王はアマルカのハエを振り払いその力はアマルカ本人まで届き撥ね飛ばしたのである。

羊力大仙は気絶したアマルカを抱き上げた。

 

アシャイバンダクに連れられていた悟空はカレーズの中に妖物の固まりが水路を遮断しているのを見る。近くには妖物の毒で倒れたナササラルたちがいた。

攻撃すると毒液を吹き出しナササラルたちはそれでやられたのだ。

アシャイバンダクは遺体を運ぼうとし悟空もそれを手伝おうとして奇異を感じた。

「これは毒でやられたのではない」

そう言った途端上から飛び降りてきたのはサソリ女だった。