
ネタバレします。
宋代、首都開封の城外に住む五行先生とその弟子見鬼が湖南に旅をし麗池村という場所を通った。
その村は養魚池やため池が多かった。
ゆったりと歩くふたりの前に一人の青年が三人の暴漢に襲われている光景が現れた。
五行が暴漢を押しとどめると男たちは捨て台詞を残して去っていった。
五行と見鬼は襲われた青年・百三郎の屋敷に迎えられ、父・聶郁から話を聞く。
祖父の時代は五つもの大きな養魚池を持っていたが次第に家運が傾き今はひとつだけになってしまった。
そのたった一つの池を金焦という男が奪い取ろうとして様々な嫌がらせをしてくるというのである。
「この頃は妖術使いまで雇いまして」と話す中、下男が「池に化け物が」と駆け込んできた。
五行と主人たちが池を見に行くと巨大な水蛇のようなモノが池の中で暴れまわっており堰が破られそうになっていた。
「蛟か」
五行は側にいた男が持っている魚籠を借り御札を貼ると阿鬼に渡した。
見鬼は心得てその魚籠にまたがると池に飛び込んだ。
魚籠はあっという間に巨大な鯉となって蛟に向かって突き進む。
蛟は立ち向かってきたが見鬼は臆することもない。
見鬼がまたがった巨大な鯉はその蛟を咥えこみズルズルと呑んでしまったのである。
ゆうゆうと戻ってきた巨大な鯉はいつの間にか魚籠になって見鬼の手に抱えられていた。
その魚籠の口から木片が落とされる。
五行は「その木符は妖術使いとやらが池に投げ込んだものでしょう」と説明した。
こうして五行対妖術使いの一騎打ちが始まる。
勝負はあっけなく五行が上回ったがその間に聶郁が金焦の手下に斬り殺されてしまったのだ。
息子の百三郎は仇を討とうと剣を持ったが五行に諫められ母と共にしばし隠れることにした。
歌人たちも散り散りとなると金焦は堂々と養魚池を我がものにしてしまい早速池で漁をさせた。
見事な大鯉が捕まり金焦は今夜行う祝の席に料理させることにする。
祝宴では大鯉が出され金焦は皆にすすめたが客人はその鯉がぎろりと睨む気がして食べきれなかった。
金焦はそれならわしが全部食うと言い出し、箸をつけた。
そこへ見鬼をつれ五行が金焦の屋敷に入ってきた。
見鬼は「聶郁さんの霊魂の気配がする」というのである。
賑やかな宴会を見鬼が透視するとそこに金焦が大皿に盛りつけられた聶郁の死体を食べているのが見えた。
「うまい、こりゃうまい」
周囲の人々はとり憑かれたように鯉ばかりを食べ続ける金焦に唖然とする。
「今、聶さんの心臓を食べました」と見鬼が言った途端「ぐっ」と呻いて金が立ち上がった。
よろめく金に驚いて下男たちが駆け寄ってくる、と金はその下男の剣を抜くやその頭を叩き割ってしまう。
金焦は次々と下男や客人はては妻子までも斬り殺し自分の顔を削いだ。
その下には聶郁の顔があったのである。
この話は五行と見鬼が問題解決をしてはいない。
良い人を追い詰めるとこのようになるのだ、といえよう。
「幽山秘記」
若い頃からよく書を読み俗世を嫌う性格だった。
ついに神仙の道を志すようになり崋山にはいて不老不死の法を求めようとした。
李吉は崋山で神仙に会い弟子入りを願う。
神仙は李吉の気持ちに応え「神仙の道を志すなら下界の楽しみは一切捨てねばならぬぞ」と断ったうえで「この山を下ったところにある荒れ寺に行け。真夜中にふたりの神がやってくる。ひとりは善神でひとりは悪神だ。おまえはふたりの神の言い分をよく聞いてどちらかに助太刀せよ。善神を選べば不老不死の法を教えてくれよう。だが悪神を選べば命を奪われる」と告げた。
そして宝剣を渡したのである。
李吉は言われた通り荒れ寺へ行き、真夜中にふたりの神が言い争うのを聞く。
ふたりの話はそれぞれの言い分があって李吉は迷う。
そこにひとつの女性像があった。
その女は美しく男を破滅させやがては国を亡ぼす魔性を持つというのだ。一人の神はその女像を刺し貫けば不老不死にしてやると叫びもうひとりは「おまえを皇帝にしその女をやる」という。
女などに惑わされはしない、と誓った李吉はその美しい女像を見た途端心が揺らめいた。
李吉は女像を刺せば不老不死を与えると言った神を斬り殺す。
もう一人の神は「約束どおりお前を皇帝にしその女を与えよう」といい「その前におまえの命を奪わねばならぬ」と李吉の胸を突いた。
神仙は結果を知る。
百年後、李吉は皇帝となり女は楊貴妃となる。
李吉、かなりの強運である。
「鬼城」
見鬼が五行先生の弟子になる前のお話。
阿鬼は河北西路の貧しい農家に生まれた。
幼い時から幽霊や怪異をよく見たので「おばけちゃん」と呼ばれたのである。
その村のだんなは隣村の地主を訪ねた。
珍しい客人を迎えたというので会食に招待したのだ。
その人は開封の高名な道士で五行先生といえば知らない人はいないという方であった。
村のだんなは「自分の村に怪異や幽霊を見る子供がいて”赤い腹掛けの子供が屋根の上で赤い旗を振っている”などというのです」と話しかけた。
五行先生は「それは凶兆です。その子は見鬼かもしれません」と言ってだんなに早く帰るよう勧めた。
果たして村に戻ると屋敷は火事になっていたのだ。
しかし五行がその子に会う前に生活に困った母親は阿鬼を宋鉄観という旅の男に売り払ってしまったというのだ。
宋鉄観は行く先々で子供を買い内臓を抉り出しては薬として売るという悪行を続けている恐ろしい男だった。
今回も阿鬼に「うまいものを食わせてやる」と言って嚢から刀を取り出そうとしたが阿鬼はその姿がこれまで子供を殺して内臓を取る様子として見え逃げ出した。
阿鬼が逃げた先は不思議な町でおぞましい形相の幽霊たちが次々と現れる。
宋鉄観もまた阿鬼を捕まえようとその町に入り込む。そして腹を切り裂かれ胎児が見える女の亡霊と出会い逃げ出すがさらに幾多の亡霊たちが彼を取り囲み「おまえは宋姓だな。宋姓の者は生きてここを出られないぞ」と迫ってきた。
宋鉄観が逃げようとすると足元がじゅうじゅうと焼けている。
わっと転び手をつくとその手は焼けただれ宋鉄観は燃え盛る火の中に落ちて行った。
「あっ、あそこにいた」
という声がした。
阿鬼はいつのまにか一本の木に取りすがっていたのだ。
宋鉄観から買われていったという話をきいた五行は村人たちとともに阿鬼を捜してきたのだった。
阿鬼から話を聞いた五行はこの場所がかつて殷の都があった土地で妲己という美女と共に人々を苦しめた紂王という皇帝がいたのだと皆に話す。
殷の残った王族たちは宋の地に封じられ後にそれを姓とした。なので宋姓の者は特に祟られるのだ。
阿鬼は一度家に戻ったが相変わらず家の生活苦からやがて五行先生に引き取られることとなった。
中国怖話は内臓欲しがる話が多すぎる~。怖すぎる~。
それがやみつきになってしまう、ともいえるのだが。
それなしにはすまされない。
そのためにこの場所に出る亡霊たちは