
ネタバレします。
「邪仙」
阿鬼が五行先生のところへきて間もない頃の話。
まだまだ五行先生の仕事がどんなことなのか、よくわかっていない幼い阿鬼にとって五行先生は時に恐ろしい存在でもあったようだ。
その日、五行先生はいつにもまして怖い顔をしていた。
用があってひとり出かけてしまったのだ。
夜、寝つかれないでいる阿鬼は物音に起き出した。
五行先生は翼のある白い馬で空を飛んで帰ってきたのである。その白馬には先生のほかに気を失っているらしい若い娘も乗っていた。娘のお腹は丸く膨れていた。妊娠しているのだろうか。
五行先生は娘を抱えて一室に入り御札を火にくべて呪文を唱えていた。
娘は突如ばたばたともだえ苦しみ嘔吐した。
先生がなおも唱え続けると娘はガクンと動かなくなりその腹はいつの間にかしぼんでいた。
その光景は阿鬼にとってただただ怖いものでありこっそり母を呼んだのである。
十日ほどたち阿鬼は再び庭に妖しい気配を感じた。
今度は五行先生、孕んだ馬と格闘していた。
「五行、邪魔をするな」
馬の膨れた腹から腕が飛び出す。
しかし五行の唱える呪文に馬は苦しみ、その身体に落雷した。
阿鬼は思わず「キャッ」と叫び五行は阿鬼を呼び怪しげな甕を覗かせた。
それに恐怖を感じた。
五行先生の説明によると「この甕には邪仙の胎が入っている」ということだった。
仙人というのは修行をして様々な欲を断ち切り世俗を超越して不老長生を得るものだが、成り得なかった者が邪術にいよって仙人になろうとする。
弟子に命じてその死後に体内の三丹田を取り出させ、甕に入れて防腐処理をし魂魄と共に機が熟するのを待つ。
千年経つと甕の中で妖気を発し身辺の女の胎を借りて新しい人間として再生するのだ。
生まれた時から邪悪な力を持った妖仙であり母の腹を食い破って出てくるとも言われている。
こやつが復活できるチャンスは千年目から百日の間に三度、その三度を防げば邪仙は出られずに滅びる。
五行は今二度目までを封じたのだ。
が、期限の百日目が来ても邪胎を身ごもる気配が鏡に映らなかった。
五行は見鬼を連れて周囲を歩き回った。
とある墓に近づくと多くの烏が群がっている。
阿鬼は「あの中からあの甕と同じような感じが」と告げる。
「なに?!」
五行は墓を開け中に入った。
棺桶が揺れ動いていた。
蓋が開き中に収められている遺体の腹を不気味な小さな者が食い破って出てきていた。
「すごい妖気がわしの術をはね返す」
さしもの五行も鏡でその妖気を防ぐしかなかった。
墓が崩れ五行と阿鬼は逃げ出す。
邪仙は遁甲で逃げようとした。
五行が術で邪魔をした。
「ええい、邪魔くさい」と屍の身体を持つ邪仙が憤った時、群れていた烏がいっせいにその屍体に食らいついてきたのだ。
邪仙は蘇れなかったのだ。
五行は阿鬼をつれ帰る前に茶店に寄った。
「怖い思いをさせたな。阿鬼、家に帰ってもいいのだぞ」
阿鬼は「家には帰りたいけど・・・先生・・・あの」と口ごもる。
「なんだ?」
「最初、腰掛を馬にして飛んできたでしょ?ぼくにもあれ乗れる?」と訊いた。
「乗りたいのか、はは・・いいとも」と先生は茶店の腰掛をあっという間にペガサスにしてしまうと阿鬼を乗せて飛んだ。
「ぼく、やっぱり先生のところにいる!」
阿鬼ちゃんが可愛すぎるっ。
五行先生、絶対可愛くて手放したくなかったのだろうなと。
なんとなく『マンダロリアン』的な感じ。
「巫蠱」
諸星先生と言えば「巫蠱」というくらいのものであるがその中でも最強の巫蠱がこれだろう。
巫蠱、とは様々な動物や器物を使って人を呪い殺し材を蓄える妖術である。
蠱毒の最たるものは各種の毒虫を集めて一つの甕に入れ毒虫たちがたがいに殺し合い最後に残った一匹からとった毒を蠱毒として使うのである。
ある師匠が四人の弟子に課題を出した。
「おのおの自分で工夫をしてそれぞれ強い蠱毒を作ってみよ。一番強い蠱毒を作り出した者にわしの奥義を授けよう」
師匠は旅に出て四人の弟子たちは競い合って蠱毒を作り出す。
四人は仲間ではなくただ一人奥義を授かるために敵対した。
そうこうするうち、四人目の弟子・王の食べ物に毒が仕込まれて死んでしまう。
残った三人は犯人は誰かと言い合うがわからない。
今度は死んだ王の遺体を使って蠱毒を作ろうとした孟が殺された。
残ったふたりは疑心暗鬼で蠱毒を作り続ける。
そしてふたりは互いに相手に毒を仕掛けあったのだ。
趙が毒殺され残った劉も毒にあたり「解毒剤を」と手を伸ばすのを妨げたのはなんと最初に死んだはずの王だった。
王の死は自演だったのだ。
帰ってきた師匠は王に奥義を授けると言って儀式の酒を飲ませた。
途端に王は気を失う。
目が覚めた時、王は小さな甕に入っていてその下は火であぶられていた。
弟子たちは最も強い蠱毒を作るために師匠によって戦わされたのである。
「おれたちを騙したな、よくも、くそう」
怒るほど恨むほどその胆液からは強い蠱毒が絞り取れるのだと師匠は嘲笑う。
これを人蠱という。
「眼光娘娘」
薬屋の張の店は五行先生がよく利用する店でなじみであった。
先生がついでの用を済ませてくるあいだ、阿鬼は店で遊んでいた。
店員たちが忙しく立ち振る舞うなか、阿鬼は好奇心でひとつの薬を舐めてしまう。
それは辰砂だった。
阿鬼は倒れてしまう。
薬屋の奥で寝ていた阿鬼は壁を通り抜けてくる童を見てしまう。その後をつけると城外の林の中へと入っていく。
そこにはもうひとり同じような子どもがいた。
ふたりは鬼(ゆうれい)なのだという。
悪い道士に殺され死んだ後も役鬼として使われているというのである。
その道士は張の薬屋へ行き多額の布施を求めていた。
「この家に起こる厄災を防いでやる」と言い張るのだ。
そして居間のとなりには一番下のお子さんが病気で寝ていますな、と透視能力があること見せつけようとした。
だがそれは阿鬼のことで「わたしの子供ではない」と言い返され「ご利益のないお布施は上げられませんな」と笑われてしまう。
道士は役鬼が下調べをしそこなったと言って呼び出し折檻した。
助けようとした阿鬼まで利用され悪道士の言いつけでもう一度薬屋へ行き張の娘の髪の毛と服を手に入れてこいと命じられてしまう。
阿鬼は張だんなと娘の紅花に知らせようとするがふたりとも阿鬼の姿が見えないのだ。
そして阿鬼は自分自身が寝ているのも見てがっくりするが今は紅花姉さんを助ける時だと急いで悪道士から命じられた服と髪の毛の代替品を探しだす。
服は娘々廟に奉納するための着物を持ち出し、髪の毛は悪道士の馬の尻尾を一本抜き取った。
悪道士は阿鬼を褒め早速娘を呪い殺そうとする、が、たちまち自分の馬が苦しみ始め騒ぎ出す。
そこへ現れたのは眼光娘々だった。
眼光娘々は子供たちに気づき道を尋ねる。
阿鬼たちは姿を見られたことに驚き「おねえさんも見鬼?」と聞いた。
それに眼光娘々はにっこりと微笑んで「あんたたちは見鬼なの?それならあたしの子供みたいなもんだわ」と答える。
だが悪道士が妖術を使っていると聞くや怒りの表情となりカッと眼光を浴びせ剣を抜いた。
だが剣が悪道士を斬るより早く馬が後ろに立った悪道士を蹴り上げ悪道士を殺したのである。
眼光娘々は阿鬼はまだ死んでいないよと告げ他の童たちにもそのうちちゃんとした家の子に生まれ変わるだろう、と優しく言ってくれた。
皆が感謝すると彼女は消えた。
阿鬼は目覚めた。
五行先生がいた。
紅花は眼光娘々廟に行き盗まれたと思った着物がすでに奉納してあることに気づく。
阿鬼が見上げると眼光娘々はあの時のお姉さんだと気づく。
五行先生は「阿鬼は見鬼だから目の神様にはよくお祈りしとくといいな」と説明した。
眼光娘々は阿鬼に気づき微笑んだ。
眼光娘々さんのファンです。
わたしも眼光娘々廟でお祈りしたい。