
表紙絵なんと阿鬼ちゃんです。
ものすごい美少年になってしもうた。
恥ずかしいくらい美少年なんですけどお。
ここからほぼ初読書です。
ネタバレします。
「鬼市」
こんな夜市があるのかとどきどきする一篇だ。
宋の頃、張と李というふたりの男が深夜の城外に夜市がたつと聞いて物好きな気持ちを起こして出かけていった。
月に一度特に新月の夜に立つという非合法の夜市である。
別名鬼市というらしい。
怯える片方を引き連れながらふたりは「鬼市」へと向かう。
そこに現れた少年がいた。眼光鋭いがきれいな顔立ちの少年だ。
少年は「鬼市に行くなら一緒に行こう」と言って真っ暗な夜道をすたすたと歩いていく。夜目が効くという。
辿りついたのは墓場のようなシンとした場所だった。
薄明りの中で売り手も買い手も騒ぐことなく静かに売買をしている。
「じゃあぼくは用があるから」と少年は離れて行った。
やむなくふたりは妖しげな鬼市を巡るが墓から掘り出してきたものに驚き逃げる間に李は転んで提灯を手放してしまう。
一人きりになった李は顔にくっついてしまった偸面石を買わされてしまった。
張の方は女ものの装飾品を買って満足していたところで李と再会するが李が抱えていた偸面石はいつのまにか李本人の顔になっていて顔があるはずのところには石が乗っていた。
慌てたふたりは市を抜けようとする。途中で見かける売人たちはほとんど化け物のようだった。
ふたりに声をかける女性がいた。
声をかけたのは側使いで馬車の中には美女がこちらを見ていた。高貴な人らしい。
さきほど張が買った装飾品はその女性が盗まれたもので倍額で買い取りたいという。
お礼にもうひとりの石になった顔を戻す方法も教えるという。
応じた張に側使いは金を渡し「元に戻す方法はこれから来る人が教えてくれますよ」と言って走り去った。
そこに来たのは先ほどの少年だった。
少年はそもそも「偸面石を処分しようと思ってきていた」のだった。
石になりかけている李を見て「ぼくの合図で頭を上に投げ上げるんだ」という。
李が言われた通りにすると少年は鋭く李の首の上についている石を斬りはらった。
かわりに投げ上げた自分の頭がストンと落ちて元通りになったのだ。
少年は落ちた偸面石を「もらっていくよ、粉末にすればある種の薬になるんだ」と去っていった。
李は「ひどい目にあった」と愚痴るが張は「あんな美女と知りあえておまけに倍のもうけをした」と受け取った金をとりだしたがそれは葬儀に使う紙銭だったのだ。
とても怖い鬼市のはなしだったがこれを使えば次々と怪談ができそうな気がする。
「羽化庵の来訪者」
宋の頃、各地で叛乱が続き都・開封の近くでさえ盗賊が出没するという噂が立つほどであった。
これは五行先生の住む「羽化庵」から阿鬼が巣立ってからのお話。
五行先生は弟子を取らないと言われていたが最近になって雑用をさせるために若い弟子を一人入れたらしい。
ある日五行先生がよんどころない用事で外出し羽化庵には若い弟子がひとり留守番となった。
盗賊の噂がある昨今、若い弟子はひとりきりになるのが怖くおびえていた。
そんな時に訪ねてきた少年がいた。
「燕見鬼」と名乗るその少年を弟子は頑なに拒む。
弟子は掃除をしていてその少年が中に入っている姿を見たように思いまずます怖くなる。
すると今度は年かさの立派な身なりの道士風の男が門を叩いた。
弟子は迷いながらも断るとその男は「ではわしの木剣をここにおいておくので何かあったら使うがいい」と去っていった。
日が暮れ弟子はますます心細くなってきた。
またどこかで変な音がする。
弟子がそうっと門を開けて見ると何やら小さな化け物たちが重なり合って塀を越えようとしているのだ。
が、塀の内側からぬっと恐ろしい顔が現れ小さな化け物たちを脅して追い払ってしまった。
弟子は夜の見回りをしながらも怯え続ける。
すると塀の上から女の顔がのぞいているのが見えた。
女の顔はにゅうっと伸びて中へはいってくるではないか。
が、塀の内側から大男の化け物が女を封じ込めようとする。
やや女の方が勝っているのに焦った弟子はあの道士が置いていった木剣に気づきそれを女めがけて投げつけた。
女の化け物はぎゃっと言って消えてしまう。
そこへ木剣をくれた道士の声がした。
弟子が返事をすると「家の四隅に怪しいものがあるはず。それを塀の外へ投げ捨てよ」と告げる。
木剣で化け物女を倒せた弟子は今度はすっかり道士を信じて四隅にあった呪符を捨てた。
そして慌てて門を開けて謝ろうとすると門が乱暴に開けられ道士と共に盗賊たちが入ってきたのだった。
これまでの出来事は盗賊たちが入るために道士が仕掛けた罠だったのだ。
腰を抜かす弟子の背後にひとりの少年が立っていた。最初にやってきた少年だった。少年はあっという間に盗賊たちを斬りはらってしまう。
が、その間に道士は五行の書庫に入って一冊の本を盗み取った。
それも少年は見逃さず道士の腕を斬り落として本を守ったのだった。
道士は姿を消した。
間もなく五行が帰ってきた。
「阿鬼ではないか」
「先生、それは幼名です。今では燕見鬼で通っているのですよ」
弟子は「ではわたしの兄弟子の」と驚く。
「なんですかその書物は?」と盗まれそうになった本について見鬼が問うと「まあ・・そのうちは無そう」と言って見鬼をみやり「それにしても」と言った。
「なんです?」と聞き返す見鬼に五行先生は「いや長旅で疲れたろう、ゆっくり休め」と誤魔化した。
ううう。ここ。五行先生が何を言おうとしたのかてんでわからない。
「随分強くなったな」ということなのかな。
ということなら阿鬼はもっと小さな時に出て行ったのかなあ?
何故なんだろう?
「石の中の女」
諸星大二郎、といえばなにかとくっついて桃源郷を知る、というので有名だがこの話wもまたその一例なのである。
くっつく相手は石の中の美女である。
陶崋永は花街にもでかけない朴念仁だとウワサされていた。
だが彼には「石の中の美女」を眺め暮らすという楽しみが他の何物にも代えられないのであった。
だがその石の中に浮かび出る美女が陶に話しかけてきたのだ。
美女は「強く念じればこの石の中に入ることができます」と言って陶と石の中で交わったのだ。
かつて経験したことのない陶酔に溺れた陶に美女は話しかける。
「わたしを外へ出してほしいのです。一晩この石をおなかに当てて抱きしめていてください。
おなかが痛くなっても我慢してくだされば私は外へでることができます」
陶は女に言われた通りに腹に石を当てて抱きしめて寝た。
やがて腹が切り裂かれるように痛み出したが堪え続け朦朧としても石を離さなかった。
「ご苦労さん、よく我慢してくれたね」
気づくと石の中の女が外に出てきていた。
だが陶の腹が切り裂かれ女はそこから陶のはらわたを引きずり出し自分の腹にいれていたのだ。
「今までも何人もの男をたぶらかしてきたがみんな途中で石を離してしまった。これであたしもやっと人間の世界に出ることができる。
はらわたを全部取りこんだら残ったあんたを食べてあげるよ」
そこに入ってきたのが燕見鬼だった。
燕は剣でまだ取り込み中のはらわたを斬り捨てた。
そして女の首を斬り落としたのだ。
女はシューシューと音を立てて溶けていった。(これも通常運行)
周囲の人々が「陶さん」と叫ぶが燕見鬼は「この人は手遅れです。はらわたを取られて死んでいる」と告げた。
「この人だけですんでよかった。完全な体で出てきていたら厄介なやつだった」
そう言って燕見鬼は陶崋永の家を後にした。
なんとなくフィギュアオタクの末路を見るような感じでおもしろい。
いやべつにはらわたは抜き取られないだろうけどねえ。