ガエル記

散策

諸怪志異(三)『鬼市』諸星大二郎 その3

おお、映画を観続けるターンに入ったか、と思いきや『十二人の怒れる男』のみで脱落しました。戻ります。

いやここ以上に興味を持てる映画がない。

 

 

ネタバレします。

 

 

「小玉」

燕見鬼は五行先生から預かった「推背図」をとある人に届ける役目を仰せつかって江南に訪れた。

が、その人の名は今は言えないという。

まずは鶏鳴村の呂太公を訪ねれば行き先を教えてくれるだろう、というのが五行先生の言葉であった。

見鬼は村人に呂太公の家を尋ねるが不愛想でぴりぴりとした感じがあった。

 

途中で日が暮れ見鬼は野宿することとなる。

すると夜中、「生きた人間ではないもの」が現れた。

「推背図を見せろ」とそれは言った。

「ある人物に見せるまでは誰にも見せられないのだ」と見鬼は答え剣を振りかざした。

それは鳴きながら逃げ去った。

 

見鬼は鶏鳴村の呂太公を訪ねることができた。

呂師囊は五行からの手紙を読んでその「とある人物」とは誰か察しはつくが確かめてから引き合わせたいのでそれまでここに逗留しなさい、という。

そこへ呂太公の娘である小玉が突然入ってきた。

可愛らしいその様子に見鬼もほほを染める。

父親である呂太公は娘の無遠慮さを咎めたが小玉は物おじせず「天子様は趣味に没頭され政治はおろそかになっているとか。これではいずれ大きな乱が起こっても不思議ではありません」と話しさすがに太公もたじろぎ諫めたが小玉はなおも「いっそのこと、北方から遼や金が襲ってきて宋の朝廷を滅ぼしてしまえばいいのに」と言い述べる。

これには見鬼も目を見開くばかりであった。

 

呂太公の屋敷に泊まった夜中、見鬼は寝込みを襲われ「推背図」を奪われてしまう。

跡を追いかけるとそれは以前襲ってきた「生きた人間ではないもの」であった。

が、それは「本を返すから弾丸を抜いてくれ」と頼むのだ。

その弾丸には人間の唾が塗られていて酷く痛むのだという。

憐れに思った見鬼が傷を見ようとした時「傷に触れてはいけません」という声がした。

小玉であった。

「鬼の傷に触れるとその人まで害われます」

小玉は「鬼は陰の気でできています。弾丸は陽の気で鬼の身体に食い込んでおるのでしょう」と説明した。

その弾丸を抜くには同じく陽の気である見鬼の剣で弾丸を吸い取るしかない、というのだ。

見鬼がまず「推背図」を取り戻し、剣を鬼の傷口に近づけると弾丸が吸い寄せられ消えた。

去ろうとする見鬼たちに鬼は未練がましく「推背図」を少しだけでも見せてくれと言う。

「張員外、もうあきらめなさい」

小玉は鬼の正体を知っていたのだ。

張員外は天子の命令で花石綱のために家を壊され資産を失って殺された張員外の変わり果てた姿なのだという。

鬼となった張は「わしをこんな目に会わせた奴らの行く末を知りたいだけなのじゃ」と告げる。

小玉は鬼となった張員外に「もう少し待てばやがて見ることも出来るわ。そんなに長いことではないと思うわ」と伝える。

張員外はその言葉に去っていった。

 

「天后」

鬼となった張員外はいったんは去っていったが再び戻ってきて「ではわたしにでなくわたしのご主人様にみせてくれんか」と言い出す。「おまえだって見たいだろう」

小玉は「見たい、と言ってはダメ。つけこまれます」ととどめた。

 

小玉と共に帰途につくが途中、その張員外の廃屋となった屋敷に人々が集まっているのを見かけてしまう。

小玉をとどめ見鬼はひとりその様子を見に行く。

そこには多くの男女が集まっていた。

さらに中心にいたのは呂太公だったのだ。

怪しげな宗教儀式を取り仕切っていた。

そこへ小玉が入ってきて見鬼は慌てて外へと出る。

小玉と「推背図」について語らううちに見鬼は「そりゃぼくも見たいですよ」と言ってしまう。

たちまち小玉の顔が張員外の顔に変わり「見たい、と言ったな」と叫んで見鬼を異世界へと連れ込んでしまった。

 

そこには則天武后が鬼となって玉座に座っていた。

その手には「推背図」が握られていた。

則天武后はその書を読むことで予言が現実になったことを確認した。

さらに則天武后は見鬼の未来をも読んで聞かせた。

が、その意味はわからない。

そこへ則天武后の息子が復讐を遂げようと現れ見鬼は元の場所に戻った。

小玉が現れる。

見鬼は彼女と帰りながら予言の書に書かれた言葉を考える。

 

「鬼弾」

翌朝、見鬼は呂太公に会うがその様子からは昨晩怪しげな宗教儀式を行っていたようなところはなかった。

 

そして呂太公はいよいよ目的の人物に引き合わせるため青渓県へと見鬼を連れ出した。

だがなぜか漆や楮を売る大勢の人夫たちと同行する。

見鬼が理由を訊くとこのあたりが最近物騒なためだという答えだった。

 

ところが一行が山道を進んでいる途中で役人たちに捕らえられてしまったのだ。

それは皇帝が所望する「花石綱」を川の中から運び出すためだった。

すでに役人の命令で人夫が集められ作業をしていたのだが、どうしたわけか川に入った人夫たちが次々と倒れてしまうのだ。

役人がそれを怪しむと人夫たちは「鬼弾です」と答えた。

川の中に目に見えない悪いものがいて何かを吹き付けてくるというのである。

疑う役人に見鬼は「確かに何かがいます」と答える。

それでも役人は「そんなことはどうでもいい。天子様の石を早く運ぶのだ。おまえらが死のうが知ったことか」と言い出した。

見鬼は「ではお祓いをしましょう」と言って呪いを施し「これで蜮はいなくなりました。夕方までは無事でしょう」と告げた。

人夫たちは急いで引き揚げようととりかかったが、今度はその石が割れてしまった。

役人は見鬼を指さし「おまえのせいだ」と言いたてる。

するとどこからかつぶてのようなモノが飛んできて役人の額を直撃した。

役人は呻いて倒れる。

人影が去るのを見鬼は見た。

が、それよりも

「呂太公、今のうちです」

と、見鬼一行は逃げ出す。

 

人影はあの夜「推背図」を盗みに来た者の姿だった。

「なぜ?」

見鬼は訝しみながら歩き出した。