ガエル記

散策

『栞と紙魚子 殺戮詩集』諸星大二郎『栞と紙魚子』シリーズ3 その2

ネタバレします。

 

引き続き、菱田きとらは段一知先生を手に入れようと考え公園の樹上から段一家の様子を望遠鏡で伺っていた。

ムルムル鍋を食べてはストーカー日記を書く。

編集者がそれを見つけそのまま社に落ち帰った。

 

なんとしてでも思いを遂げたいきとらはまずクトルーを射落とし青空パーティを開く。

 

いったい何が目的なのか、よくわからなくなっていく。

毒薬パーティだったのをすっかり忘れてしまった。

ケリリヒは卵の時が一番狂暴なのである。

 

「ゼノ奥さん」

これはもうすっかり諸星流「アリス・イン・ワンダーランド」である。

(まあすべてそうではあるが)

以前「見えないペット」を押し付けられ散歩する羽目になった栞と紙魚子はまたも品のいい奥さんにあってしまい今度は絶対何も引き受けたりしないと決心するもののクトルーのママを経由して結局ペットを預かってしまう。

今度のペットはベティちゃん。またも見えないし今度は空を飛ぶ。

ベティのリードを握ってしまった栞と紙魚子は空を飛んでまたまた不思議な家に降り立った。

そこはあの品の良い奥さん、「ゼノ奥さん」の家であった。

ゼノ奥さんの家はまったくの異世界でふたりは様々な不思議体験をしたあげく近くにあったバス停から「胃の頭町行き」のバスに乗って帰ることにした。

 

その間、ゼノ奥さんとクトルーちゃんのママはショッピングとお茶を楽しんだ。

ゼノ奥さんが帰宅すると栞たちがバスで帰ったと聞き心配する。

 

ふたりが乗ったバスは「遠回りのバス」だった。

帰りついたのは真夜中近くだったのだ。

乗車料は安かったみたい。

 

 

「頸山城妖姫録」

やはり私が面白いと思うのはこちら「頸山城」である。

 

今回は紙魚子がナレーターである。

栞と紙魚子は首山の「刹笑園」へ行く。もとは「殺笑園」といったそうな。

創建は鎌倉時代まで遡りその後何度も荒廃再建改造を繰り返したという。そのためいろいろ変わった点が見られる。

その中に「首洗い池」というのがあり水が赤く濁っている。

平将門が討伐された時、その首は京都で曝されたが関東めざして飛び返りこの地で一度落ちたという。

それは統治の豪族顎兼頼が将門を裏切って藤原秀郷に通じたからである。

 

兼頼の娘長姫は笑いながら首を掴んで空へ投げ返すと首はまた飛び去り神田まで飛んで落ちたという。

ふたりは「賞血庵」という茶室前で一休みしながら以前酷い目にあった長姫について話し合った。

すると茶室から「そこのおふたり、こちらでお茶でも」という声がする。

ふたりが中に入ると茶を出してくれたのはその長姫であった。

茶は真っ赤だった。

紙魚子が茶椀を投げ返すと「それでは茶菓子代わりに」と人の首が飛んできた。

慌てて逃げ出すと手を洗う桶にも人の首がそして庭の池の周囲は人骨だらけであった。

急いで逃げるふたりの前に石燈籠が歩いてくる。

「いけない。この手にかかったらまずいわ」

栞が叫ぶ。「あれやろう。アブラウンケン」

ふたりが叫びながら塀を乗り越えると出口の門が見えた。

 

帰宅すると紙魚子は長姫の伝説について調べ上げる。

が、翌日学校へ行くと異様な雰囲気が立ち込めておりそれが栞が来てからというのである。

紙魚子が会うと栞は長姫が乗り移っているのだとわかった。

栞の魂は首山城にあった。

薄明りの中にとらわれてしまった栞が彷徨い歩くと不気味な童たちが小石を積み上げている場所に出た。

驚く栞に声をかける者がいた。

りりしい若侍で「脛塚宗十郎」と名乗ったその若者は栞を連れて歩き出す。

宗十郎は姫様を助けるため父に従ってお供していたのだが長姫に出口を塞がれこの地底城に閉じ込められてしまったらしい。

他にも多くの女性が長姫によって牢に閉じ込められていた。

そこへ長姫が現れ宗十郎を嘲笑う。

異形の侍たちも登場して長姫を倒そうとするが長姫によってあっけなく阻止された。

 

宗十郎は栞を連れて主の影姫に目通りする。

影姫の力が及ぶこの場所まで長姫を誘い出せればこの石の中に引きずり込むことも出来るらしいがそれがたやすいことではないらしい。

ここで栞はさきほどの「異形の侍」が頸山神社の鳥居だと気づく。

そして影姫はその先にあった石に封じ込められているのだ。

 

栞は「なんとか紙魚子に連絡ができれば」とつぶやく。

それを聞いた宗十郎はあの鳥居の形となって紙魚子を訪ねたのだ。

段先生に相談していた紙魚子の前に鳥居姿の宗十郎(この説明で理解できる人いるのか)が現れ「栞どのの伝言。今夜子の刻、守護石と滝副石の間までお越し願いたい」と伝える。

がその途端、長姫が現れ宗十郎を破壊した。

しかしそこへ段先生の奥さんが顔を出し長姫にムルムルの佃煮を渡そうとした。

長姫は驚き逃げ去ってしまう。

 

さて子の刻、紙魚子は段先生を連れて殺笑園へ入り込む。

そして言われた通りの守護石と滝副石の間、つまり滝の中へと入りこんだ。

後には鳥居姿の宗十郎がいて「確かにそこでござる」という。

中にはいった段先生はそこが恐山とそっくりの風景だと気づく。

そして地上にある刹笑園もここにそっくりなのだ。

恐山は地獄を模しているという。

ここもそうなのだ、と段先生は説いた。

宗十郎も後に続いてきており栞がその先にいるという。

 

紙魚子は栞を助け出し逃げようというが抜け穴は影姫の石が塞いで出られない、と栞は答える。

が、ここで段先生が「鬼門封じの守護石が羨門だった石でもある」と言いすべて長姫の欺きだったと説いた。

宗十郎はすぐさま影姫にこれを伝え影姫は長姫に向かって飛んできた。

姫に仕える侍たちもまたその後を追う。

 

影姫はどうやら石の中からは出ることができたようだ。浄土までいけたかはわからないが。

栞と紙魚子そして段先生が抜け穴を通ると頸山神社に出た。

あのお化け鳥居がなくなっていた。

そして幾人かとともに行方不明になっていた後藤ゆかりが見つかったのである。(記憶喪失になっていたが)

 

長姫がどうなったのかはわからない。

 

なんだろう、この面白さ。

鳥居になった宗十郎はじめ侍たちはカッコ悪い姿ではあるものの主を思う忠義心が心を打つ。(私だけか?)

長姫は良いキャラすぎるのでこれで終わるわけない、と期待したい。