
この画像ではいったいなんのことかわかりませんね。
ネタバレします。
「顔・他」
顔(一)
諸星作品は「顔」という題材がある。
「顔」は誰でも使うじゃないかとも言えるが諸星氏が使うと特別なものになる。
本著でも段先生の奥さんのような「大きな顔」という不思議な感覚が表現される。
『アダムの肋骨』にも「大きな女性の顔」というモチーフが使われていた。
一般的には「大きな女性の顔」というのはあまり好まれないようにも思えるが諸星氏が使うと特殊な性癖になる。
で、この作品「顔(一)」では「台風の中、溢れそうな股川上水にふたつの女性の顔が浮かんでいる。
それを見た男性が慌てて(果敢にも)飛び込みそのふたりを助けようとするのだがそのふたりには「顔だけしか」なかったのだ。
忘れっぽい幽霊
栞と紙魚子は連れ立ってクラスメイトのマンションを訪れる。
チャイムを押すと友人の美樹が出てきた。
「ごめんなさい。でも幽霊のことで相談できる人なんて知らなくて」という。
美樹は居間にいる父母を紹介した。
さっそく栞が「それで幽霊というのは」と聞き始めると美樹の母が「シッ」というのだ。
美樹の父は「ん?幽霊がどうしたって?」と聞き返したが娘の美樹は答えてくれない。
父親は「幽霊?」と言いながら席を立って行った。
父が出て行くと美樹は「あの・・・今のパパが幽霊なの」と言い出す。
パパは十日前に死んだのだが三日後にふらりとかえって来て今まで通りの生活を始めたというのである。
とその途端血だらけになった父親が「そうだ、ぼくは死んだんだった。思い出したよ」と叫びながら包丁を振りかざしてきたのだ。
「おまえたちを迎えに来たんだ。さあ一緒に行こう」
母と娘そして栞と紙魚子も逃げ惑った。
なんということだ。
父親はその後「スン」と落ち着きまたきっかけによって思い出す。
母と娘はその姿を見て泣くのだった「ああでも忘れてさえいれば前みたいに楽しく暮らせるのに」
それを聞いた栞は言った「あなたたちふたりも死んでるのよ」
実は父親は妻と娘を斧で殺してからマンションの屋上から飛び降りて死んだのだ。
でも美樹はそれを忘れて学校へきたのだ。
そこで栞と紙魚子が代表で美樹に「あなたは死んだのよ」と伝えに来たのであった。
美樹と両親は「そうだった、思い出したわ」と笑い合った。
顔(二)
同じく台風の日に道路が川のようになった。
水の中でよつんばいになり顔までつけて何かをさがしている少女がいたという。
「ない・・・ないわ」
「なにか落としたの?」と心配した別の少女が声をかけると
「あたしの・・・顔知らない?」
身を起こした少女には顔がなかった。
(どういう意味だろう)
立ち読み幽霊
紙魚子の古本屋「宇論堂」でずっと立ち読みしている幽霊がいるという。
紙魚子は何が何でも立ち読みを阻止しようとはたきを振るって追い出しを試みるが立ち読み幽霊はいっこうにやめようとしない。
他の古本屋のオヤジから「生前ミステリーファンだったから読まれるのは推理小説らしいね」という情報をもらう。
紙魚子は決意した。
栞が見守る中、紙魚子は立ち読み幽霊に近づき「それ、母親が犯人よ」とつぶやく。
「う・・ら・・めしい」
立ち読み幽霊は消えたのだった。
顔(三)
『ブラックジャック』で知った「人面瘡」
だけど「人面瘡」というのは古来から言い伝えとしてあるものらしい。
事実そういうものがあるのか、人間が生み出した妄想なのか。
それがやせた野良犬と太った猫にできているというちょっとしたアレンジバージョンストーリー。
「本の魚2」

表紙ではなくて一コマ目。あんまりかわいいんでどうしても載せたくなった。
栞が読んで「こんな魚がほんとうにいるんだ!」と驚く。
たしかに「ヒトニウオ」はいるのではないだろうか。
相変わらず紙魚子の「宇論堂」にたむろしている栞は本の中から魚が泳ぎ出てくるのを見る。
さらに本の中からウツボが飛び出し、紙魚子がやっと手に入れた『直立魚類』(上)を呑み込んで本の中に戻ってしまう。
本の中から魚類が出てくる、という発想はどこから出て来たのか、何か元ネタがあるのか。
戸惑う紙魚子に「海洋堂」の主人から「直立魚類を譲ってほしい」と電話がかかってくる。そして「うちの店においでください」と誘われるのだった。
なんとなく魚っぽい主人がふたりを迎え出た。
ブックフィッシュについていろいろと語り始める。
そして紙魚子の話を聞いて本の中にいるウツボを釣り上げれば取り戻せると教える。
紙魚子は『直立魚類』(上)を取り戻さんと駆けずり回ってウツボがいる本を探し本を開いて釣り糸を垂らすのだった。
が、もう少しのところでウツボを釣り上げられない。
紙魚子は捕まえようと本に飛び込んでしまう。
紙魚子は北海道の「最果堂」にいた。
目的のウツボも本も取り返したらしい。
しかし北海道の店の外は吹雪。
紙魚子は凍えながら帰ってきたがすっかり風邪をひいてしまう。
やっと取り戻した『直立魚類』を開くとジクイウオによってかなり活字が食われていたのだった。
「夜の魚」
さて本著のメインディッシュであるだろう「夜の魚」である。
本の中、といいこの物語といい本来なら魚がいるはずはない世界で魚が泳いでいる。
胃の頭町に異変が起こっていた。
まあ、いつも異変が起こってはいるが。
町のあちこちであったはずの家が突然なくなり空き地になってしまう、ということが連続しているのだ。
そしてそれとともに町内で行方不明事件が増えていた。
クラスメイトのマチ子もまた友人に「魚が来る」という一言を電話で伝え消えてしまったのだ。
栞たちは帰宅途中、きとらさんを探す編集者の海老名さんを見かける。
神隠し事件は続き、学校の屋上から見ると町のあちこちが消しゴムで消したかのように家がなくなっているのがわかった。
そんなある夜、栞は町中を泳いでいる長い魚を見る。(タチノウオというのだろう)
そして魚が突き抜けた家は次の日消えていたのだ。
さらに学校も半分になって休校となった。
しばらくするとなくなっていたはずの家が戻りその家の人もいたが奇妙な感じだった。
クラスメイトのマチ子も戻っていたが「へろへろ」としている。
海老名さんが捜していたきとらも見つかったが以前とは違う。
だが夜になると不気味な怪物になったきとらが屋根の上を走りマチ子は身体が魚になって登場した。
昼間いた「ヘロヘロ」は偽物だったのだ。
段先生の奥さんとクトルーと家も消えたという。
栞たちは先生の家があった場所で推理した。
「大きな魚が夜ごとに現れては町の人を家ごと吞み込んでいく。その跡にはしばらくして黒い草、海草が生える。その海草が家や住人に化けるのだ」
そしてきとらとマチ子だけが奇妙な姿になって戻ってきた。
では他のいなくなった人たちはどうなったのか。
やむなくマチ子ときとらは記憶をたどってみた。
たどり着いたのはゼノ奥さんの家だった。
ゼノ奥さんによるとさらに大きな夜の魚が来るのだという。
奥さんはそれが「夜の海」と呼ばれる場所からきているのだと教えてくれた。そしてふたりの使用人に道案内を命じた。
栞、紙魚子、段先生、きとらとマチ子はそこへと向かった。
ここからもうファンタジー世界の冒険譚が始まる。
何故アニメ映画にしないのか、不思議でならないよ。
まあかなりの不気味アニメになるけれども、そこがよい。
なんといっても段先生の奥さんがかっこいい。
最後はゼノ奥さんによる大きな帆船で助けられて元の世界へ。
こうして胃の頭町はもとに戻った。
いや段先生の奥さんとクトルーちゃんだけが異形のままなのだが、それはそれで・・・。
栞と紙魚子はゴミの山に人の頭と手足を見つけて持ち帰る。
胃の頭町は今日も平和です。