ガエル記

散策

『蟲師』漆原友紀 その14 十巻読了

ネタバレします。

 

 

「光の緒」

奇妙なものを見るせいでいじめられる話はよくあるが力がありすぎて困るこどもの話。

 

しかしこれほどきれいに丸く収まった話もないようだ。

乱暴なゲンの怒りは母に会えない為だった。

が、その母は天女の姿となっていつもゲンを見守っていた。

母はゲンを産んだ時から”蟲”が見える能力を持った。

その能力で紡ぎ織った着物は他の者には見えなかったがギンコには見えた。

母は赤子のゲンから出ている光の糸を何気なく抜き取るとゲンは生気を失ってしまう。

ギンコは母親の作った着物をゲンに着せることで命を救ったがその日から父親は母親にゲンと会わせることを禁じたのだった。

 

命を救われたゲンは少年となり力が有り余るように強くなってしまい近所の子供をいつもねじ伏せてしまう。

父親はそれをギンコのせいだと恨むがゲンを母に会わせた途端ゲンはすべてを理解する。

いつも自分を見ていた天女は母だったのだと。

 

ギンコはゲンの”蟲”が強すぎるのを案じたが母と会ってから村の子供たちと仲良く遊ぶ姿を見て「それはもう必要ないのか」と去っていく。

 

はっきり言ってすべて父親のせいなんだが、ゆいがそれを許したことで丸く収まってしまったな。

(糸を抜いたのが悪い、というのは無理筋だし)

大人になってしまてからではなく子どものうちに気づけたのが幸いだった。

ギンコがうまく活躍できた。

よかったよかった。

 

なかなかこううまくはいかないものだよ。

 

 

「常の樹(とこしえのき)」

山火事が起こり山村の人々は生きる術を失い困窮し御神木と崇められた巨木を切り倒して生活の糧にした。

腕利きの大工だった幹太は赤い実を食べてから不思議な夢を見るようになった。それは彼も知らない古い過去の出来事だった。

さらに幹太は御神木の切り株に座ってから足が木に変化し歩くこともままならなくなってしまい大工仕事をあきらめるしかなかった。

その病はギンコをしても不明で治療できないものだった。

 

ある日幹太の木になった足に花が咲き始めた。

なにか危険が近づいているのを感じた。

村人を集め非難させた。

その後激しい地震が起き山が崩れ家々が破壊された。

 

神木は幹太の体に宿って山の記憶をよみがえらせたのだ。

 

 

「香る闇」

今はやりのタイムリープもの、といおうか。

花の香りが鍵となっているというのは筒井康隆時をかける少女』由来なのか。(ラベンダーだった)

 

 

「鈴の雫」前編後編

ヒトがヌシになった話。

 

葦朗の妹カヤは生まれた時から草が生える体質で幼児となると山に詳しく怖れることがなかった。

そしてある日突然葦朗は妹カヤを山中で見失いそれ以来ずっと探し続けているのであった。

 

山中でヌシとなった14歳ほどのヒトを見たギンコはその娘はもう戻らないと葦朗に告げる。

 

が葦朗はカヤを見つけ家に連れ帰った。

母も兄弟もカヤが戻ったことを喜び母は用意していた着物を着せた。

 

 

が、カヤは山に呼び戻され家を出た。

ギンコはそのことを兄の葦朗に伝えたが葦朗はどうしてもあきらめがつかなかった。

そしてカヤもまた山の声がわからなくなりひとつになれないと感じていた。

山は新しいヌシを決めようとしていた。

新しいヌシが決まれば古いヌシは山に食べられるのだという。

ギンコは理(ことわり)に話をつけに行く。

ギンコは「もともとヒトをヌシにすべきではなかった」という論理で話をする。

理は「まあ良い」と答え「しかしこの者のしたことは理を歪めた。共にきてもらおう」と告げる。

覚悟をしていたギンコだったがそこにカヤが現れ身代わりにはさせない、と言って理とともに消えてしまう。

 

葦朗は美しい鈴の音を聞きカヤが山に同化したことを知る。

そしてギンコは去って行った。

 

蟲師』十巻、読了しました。

あとがきに「これにて降幕でございます」と書かれています。

後に一巻あるのでそれも読もうと思っています。

 

知ったのはかなり前なのに読み進めるのに時間がかかりました。

読み終えてもまだぼうっとしているようにも感じます。

しかし今回思い切って読み進めてよかった。

これから折に触れ考えていける気がします。