
まったくの初読みです。楽しみです。
ネタバレします。
第1羽「鳥を売る人」
これは空のない街の物語である。
いったいどういう世界なのか、の説明はない。
遠い未来なのだろうか。
人々は空を見ることのない地下なのか巨大な建造物の中なのか、で生活している。
街と街は通路によって結ばれているらしい。
あちこちが破壊され劣化していってるのが見て取れるがそれを修理したり美化したりする意識はないようだ。
そんな朽ち果てていくしかない、と思しきその街にひとりの行商人がやってくる。
その男は様々な商売物を入れたケースとともに見知らぬ”ナニカ”を入れた籠を持っていた。
少年がそれが何かを問うと男は「鳥」というものだと答える。
(読者には「カラス」に見えるだろう)
やがて幾人もの大人や子供が物珍し気に集まってきて男を冷やかしやがてそれも飽きて去っていったが少年イポーだけはいつまでも男が持つ「鳥」に興味を持ち離れなかった。
ある日、肉屋が鳥に興味を持って話しかけてきた。
さらにレストランのシェフまでも巻き込んで論争となったが「こういうものにゃあ放射性物質が残留していることが多いんだ。おかしなことはしないがいいぜ」となって誰も鳥を殺せなくなった。
という話からこの世界が核戦争後なのだろう、と想像される。(そうじゃないかもしれない)
ほっとしたイポーはショートさんに相談する。
ショートさんは古書研究家であり古い倉庫から大量のCDROMやフロッピーディスクを掘り出してきては調べている変人だった。
ショートさんは話しを聞いて「それ」を見に行くが行商人はシェフの案内で町一番の資産家チモーネさんの家に向かっていた。
チモーネさんは大きな屋敷でたくさんのペットと暮らしていた。
そんな彼女なら「鳥」を買ってくれるだろう、とふんだのだ。
だが、現れた鳥にペットたちが逃げ出す。さらに「ぐわあ」と鳴いたブサイクな鳥にチモーネさんは怒りだし男たちを追いだした。
やむなく行商人は通常の商売をした後で通常通り旅立つことにした。
イポーはしつこく男についていった。
そこで駆け付けてきたのはショートさんだった。
「その鳥のキーワードの一つは”翼”そしてもうひとつは”空”なんだ」
男は「空なんてどこにある?」と訝し気に問う。
イポーは「ぼく、空があるところ知ってるよ」
普通、こういう話って旅人である行商人が知ってそうなものだが「空」を知っていたのはイポーだった。(男はめったに見たことがない、と言ってるので見たことはあるようだ)
諸星氏の少年という存在への願望が見える。
だけど確かに子供の時って狭い通路を通っていって変な場所を知ってたりするものだ。
イポーはやっと通れる通風孔を抜けてふたりを案内する。
たどり着いた先はでっかい縦穴でその下は暗く何も見えないが上には確かに空が見えた。
ショートさんは「鳥を出してみよう」と言い出し男は嫌がった。
争う中で鳥籠が落ち戸が開いて鳥が飛び出した。
「飛んだ」
「飛ぶんだね。鳥って飛ぶんだ」
「あんたの鳥を逃がしちまった」
「いいよ。おれもこれでほっとした」
鳥は空に向かって飛んで行った。
謎めいた悲しみのある作品だった。
諸星氏の作品はいつもとても丁寧に描かれるものだ。
本作では文章での説明はないが女性がマダム・チモーネ以外、まったく登場しない。
諸星氏は女性を描かないタイプの作家ではないからこの世界は女性が(他に)いないか、非常に少ないのではないか。
そのマダム・チモーネもかなりの高齢者のようだ。(さらに女装しているだけ、とも考えられなくもない)
とにかくこの世界が閉じていく世界であることが示されている。
なのに人々はわりとあっけらかんと生きている。
諸星氏の死生観が見えるようでもある。
第2羽「鳥探偵スリーパー」
鳥探偵スリーパーの話。
いつも眠くてたまらないスリーパーは相棒のペットボトルと一緒に事件を解決(?)していく。
なかなかの腕利きなのだが肝心のところで眠気が襲ってきてしまうのだ。
それは都会が乾ききっていて殺伐とした事件ばかりが起こるからだ、と言いつつスリーパーはまた眠くなってしまうのだ。
なぜなら。
第3羽「鵬の墜落」
以前だったらあまり読みたくなかったかもしれないがここ最近すっかり鳥好きになってしまったので鳥さんが可愛くてしかたない。
特に怒った鳥さんは可愛い。
しかもこの話最初は可愛い可愛いだけで読んでいたのが次第に壮大な話となっていく。
たしかにやたらと中国思想が出てきて凄いなとは思っていたが「鵬」が出てきて女媧様まで登場する。
それにしても「燕雀いずくんぞ」が可愛すぎる。
鵬が飛び上がるのに失敗し天の北西の角が裂けてしまう。龐の落下は世界を大混乱にし動物たちは死んでいった。
(パンダがー)
フクロウの爺様は「女媧様に頼むしかないのう」と助言し鳥たちは女媧様にお願いした。
女媧様は人間をお創りになっている途中だったが鳥たちの騒ぎを聞いてすぐに天の裂け目を確認し五色の石を集めさせて天の破れ目を塞ぎ元の状態に回復することに成功した。
ところが女媧様が元の場所に戻ると自身が創った人間たちのほかに粗雑に創られたいい加減な人間が出来上がっていたのだ。
天下を狙う大鷲の少昊の仕業だった。
しかしもうすでに生まれてしまったものは仕方がない、として女媧様は地上に彼らを送り出したのである。
こうして人間はできの良いものと悪いものがあるのだ。
最後の「燕雀たちもけっこう毎日忙しい」でくすっと笑おう。そのとおりだよ。